第144話 リマインダー
ピコン!
「んっ、……返事きた?」
キラも行儀が悪いことなど百も承知なのだが、今日は時間がないし一人だからと食事を一時中断してスプーンを置き、もぐもぐと口の中のピラフを飲み込んでから通信機を手に取った。
そこにはタシアからのメッセージが届いており、明確な時間は分からないので言えないが、遅くとも昨日の終わりの時間までには切り上げてそれまでに書類作成や事情聴取などが終わらないようであればまた明日以降に回すとのことだった。
「これなら夕食用意できるか……」
煮込む必要のあるカメルカは時間をかけた方が美味しいので下準備だけ今日終わらせて明日の夕食にまわすことにして、今日は鮭のムニエルかホイル焼きにしよう。
キラは通信機の画面を下にしてそばに置くと食事を再開した。今キラが食べているのはエビとコーン、細かく刻んだインゲンマメと赤パプリカ、ベーコンが入っているピラフだった。基本的にきらが食事を作る係として約四ヶ月間活躍してきたのだが、元々キラと出会う以前にニジノタビビトが購入していた冷凍食品や、惑星クルニで虹をつくることに集中してご飯を作る時間や余力がない場合、それから一応キラが体調をを崩してしまった時だとか、真夜中にどうしてもお腹が空いてしまった時に備えて電子レンジで温めればすぐに食べられる冷凍食品をいくつかストックしてあったのだ。
あまり時間がないのでキラはさっさと完食してしまうと、お皿一枚とスプーン、飲み物を入れていたコップだけなので食洗機は使わずにそのまま手で食器を洗ってしまった。
それからキラは宇宙船のメインコンピューターの前にある椅子に緊張した面持ちでゆっくりを腰を下ろした。
「えっと、まずスリープ解除……」
キラは変なところを押してしまわないように気をつけながら今朝ニジノタビビトに教えてもらった通りにロック画面からリマインダーを開き、新規のタブをクリックした。
カタ、カタ。カタ、カタ、……カタ。
いつもはタッチタイピングで行える打ち込みも、初めてタイピングをするようなゆっくりとしたスピードで文字を打ち込んでいく。
「『今日は昨日と同じ頃には帰ります。晩ご飯も作れます。鮭のムニエルとホイル焼きどちらがいいですか。もし晩ご飯必要ないようだったら帰るまでにリマインダーにお願いします。』……こんな感じか」
キラは次にリマインダーの通知が行くように設定すると、立ち上がり椅子を元の位置に戻した。
あとは身支度を整えて警察署に向かうのみだが、キラは椅子の背もたれに手をかけたままモニターをじっと見つめた。すぐに通知がいくようにリマインダーを設定したので無事に来るのか確かめたかった。
ティロン!
「よし……!」
画面にリマインダーの通知が出たことを確認するとキラは帽子をかぶって洗面所の鏡でちょいちょいと前髪を整えるとポケットの中身を確認して宇宙船を出た。