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第140話 これにて一時解散


「そう、ね。お昼にはまだ早いけれどとりあえず一度解散しましょう。それでラズハルトくんは昼食をとったら今度は警察署に来てもらえるかしら?」

「警察署、ですか?」

「ええ、上に報告をして、書類を色々とね、書かなきゃいけなくなるわ」


 キラはいよいよかと思った。最初から警察署に行かなくてはならなくなるだろうとは思っていたのだが、いざ行くとなるとやはり強ばる。キラは自分がこれから行くことになるセーラン地区所轄の警察署の場所は何となく知っている程度だったので、後でマップを確認しなくてはいけない。


「ほい、診断書じゃ」


 いつの間にか診察室の方に消えていたフェルトが戻ってきてアメルデに茶封筒を差し出した。その封筒には使う頻度が少なそうな割にフェルト歯科医院の印刷が入っている。

 アメルデはそれをどうもと言って受け取ると、封のされていない封筒から三つ折りにされた紙を引き出して開き、素早く目を走らせる。アメルデは左から右へ上から下へ視線を動かし、内容を確認するとひとつ頷いて紙を封筒に戻しながらフェルトに向いた。


「確かに。それではフェルト先生、本日は急なお願いにも関わらずありがとうございました」

「ああ、出来ればもう来るなよ」

「あはは、善処します」


 フェルトはこのとき初めてニコニコしていた口元をへの字にした。ずっとニコニコ笑顔の人が急に呆れたような怒ったような顔になるととても怖く感じるが、アメルデは慣れた様子で否定はしないが肯定もしない、むしろ来る気しかないであろう善処しますを朗らかに返した。

 アメルデの後ろで荷物を片付けてすぐ出られるようにしていたタシアがはあ、とため息をついているのがキラの耳にも届いたが、同じくそれが届いているはずのアメルデは素知らぬふりをしてニコニコとしていた。この人こんなにいい笑顔できたんだなと思いながら、キラはパンツのポケットに通信機と財布が入っているのを布越しに確認した。


「それでは一時解散としましょう。フェルトさん、今回も内密にお願いしますね」


 アメルデはそう言うともう一度フェルトにありがとうございましたと行って出口に向かった。タシアもフェルトにキッチリ四十五度頭を下げるとアメルデに続いて出口に向かってしまった。

 キラも自分がキラ・ラズハルトであることを証明してくれたフェルトにお礼を言おうとし振り返ったのだが、フェルトの顔を見て驚いて止まってしまった。フェルトはニコニコの笑顔でも、口をへの字にしているわけでもなく真顔だったのだ。


「坊や、気をつけるんだよ」

「え……? は、はあ…………」


 キラは何のことを言われているのか分からなかったが、気をつけるように言われる心当たりというものはあった。キラは自分の境遇を慮ってくれているのかと思ってすぐに持ち直すと姿勢をただした。


「今日はありがとうございました、失礼します」

「ああ」


 キラはぺこりと頭を下げると先に行ってしまったアメルデとタシアを追いかけた。



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