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第133話 ひし形のアザ


 キラは食事に集中していたし、時々ニジノタビビトと交わされる会話にも意識を向けられていたが、先ほど見た夢のことが、ひし形のようなダイヤのような形のアザのことが忘れられないでいた。ここまで気になっているのに、あの夢を見るまですっかり忘れていたことを不思議に思いながらも、ニジノタビビトにアザのことを聞くタイミングを見計らっていた。

 結局食事の最中は聞くタイミングを逃してしまい、アザについて聞けないまま片付けまで終えてしまった。身体にあるものということもあり、若干の聞きづらさを覚えながらも、しかしこの変にモヤモヤしたものを抱えたまま眠るのも嫌だったので、ニジノタビビトが風呂場に向かおうとしたのをなんとか引き止めた。


「レイン、あのさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」

「ん? なあに?」


 ニジノタビビトは先ほどきらが見ていたという夢のことだろうとあたりをつけた。キラはできる限り表に出さないようにしていたようだが、明らかに眠りから目覚めた後の様子が変だったし、料理をしているときはIHコンロだとはいえ火も使うのでさすがに集中していたようだったが、食事のときもいつもとなんとなく違った。そしてチラチラとニジノタビビトの方を見てきたから自分に関係する何かがあるのはなんとなく察していたのだ。


「その、さっきラゴウさんの虹の夢を見たって言っただろ? それで、夢を見るまですっかり忘れてたんだけど、虹をかけた宇宙船が着陸する時に風が巻き起こって、それでレインの首の後ろの、髪の生え際あたりにアザみたいなものがあるのが見えたんだ。それって何かなって、気になって……」

「アザ?」


 ニジノタビビトは左手を首の後ろに持っていって撫でながら思案した。そのまま指先でアザがあるというあたりをなぞってみたが言われてみれば確かに何か指に引っかかるものがある。


「アザ……うーん、特に心当たりはないんだけどなあ……。少なくとも私が記憶喪失なったことを自覚して以降にできたものではないと思うんだけど……」


 そうだ、とキラはハッとした。ニジノタビビトに生まれつきアザがあった可能性もあるのではないかと思ったが、そもそもニジノタビビトは記憶喪失で、その記憶を取り戻すためにも虹をつくって旅をしているのだ。つまり、記憶を失う以前のことについては現状誰も分からない。キラの背中側の腰にあるひし形のようなダイヤのような形のアザの手がかりはニジノタビビトから得るのは難しいことになる。

 キラは残念だったような、逆に何もわからずにホッとしたようなぬるい気持ちになったが、少なくとも聞く前にあったモヤモヤは無くなった。


「そっか、ごめん。いや、俺にも似た形のアザがあったからびっくりしちゃって」

「そうなの? ふうん……」


 ニジノタビビトもキラに似た形のアザがあると聞いて少し引っかかるものがあったが、まあそんなこともあるかと多少無理やり納得することにした。


「ごめん、引き止めちゃって。風呂、入っておいでよ」

「あ、うん。じゃあお先に」



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