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第12話 次の目的地


「次の目的地はすでに決まっていたから変えられないんだけど、その次は途中途中いくつかの星を挟みながら君の故郷に向かっていこうか」


 ニジノタビビトはモニターに向かって次の座標を打ち込みながら言った。さっきの部屋と同様、キラには何が何だか分からなかったが、それでもサブモニターも合わせて横幅がおよそ二メートルほどもあるモニターの中心に大きく表示されているものが現在地と目的地までの宇宙地図であると言うことくらいはわかった。


「次の目的地はね、ここだよ」


 そう言ってニジノタビビトは勢いよくエンターキーを押した。するとモニターの中の現在地である準惑星アイルニムが自転軸を軸にくるりと一回転して、今いる地点から一本の線がすうっと引かれ始め、また別の恒星の周り回っている一つの星に着地した。この線が着地した星が、次の目的地ということらしい。


「次の目的地は、第六二四系の第七惑星クルニだよ。ここからだと一週間くらいかかるかな」


 次が六二四系ということは、惑星メカニカがある七五六系まで距離が結構あるということ気がつき、キラは少しだけ肩を落とした。

 恒星に振られた番号は、別に順番通りに整理整頓されて振られているわけではないが、番号が近ければ近いほど恒星と恒星の距離も近くなる。番号を降り始めた当時、あまり数字が近いと識別という面から不都合が色々あったらしく、使われていない番号の方が多かったりする。

 しかし、普段から番号で恒星を呼ぶ人はあまりおらず、位置を識別するときに機械に打ち込むために使うのがもっぱらであった。そのため、番号とは別に付けられた愛称の方が浸透しているということが珍しくなかったのである。


「とりあえず、この星に来た目的である食料調達は達成したから、さっさと出発しようか。キラはもう出発しても構わないかい?」


 キラは少しだけ思案してみたりしたものの、着の身着のまま飛ばされて、ポケットの中に入れていたものもどこかに落としたということはなかったので、すぐに頷いた。

 ニジノタビビトはそれを見て笑って頷くと、またモニターに向かってキーボードを打ち込み始めた。最後にキーボードの右側についているレバーを親指でボタンを押し込みながら手前に勢いよく引くと、少しの横揺れの後に宇宙船が動き始めた。


「さ、これで一週間後には惑星クルニに到着予定だよ。進路に小惑星とか、スペースデブリとかがなかったらもう少し早くつけると思う」

「宇宙船って乗るのはもちろん、間近で見るのすら初めてなんですけど、こんなに静かに動くものなんですね」


 最初この宇宙船の外をぐるぐる回っていた時には見当たらなかった窓があり、外の景色が動いて、綺麗な青色一色になっていた。この宇宙船の窓は着陸時に万が一損傷してしまうことを避けるために、その時だけは窓が隠れるようになっていた。そして二重構造になっていることで、丸フラスコが傾いても中に入った水が地面と水平であり続けるように、宇宙船が傾いても外側部分だけが傾き、内側部分は常に水平が保たれるようになっていた。


「うん、私もこの宇宙船以外に乗ったことないんだけど、どうやらすごく性能がいいらしいんだ。これの製造に関わったような気もしてるんだけど、覚えてないから分からないままなんだ」


 キラはそれを聞いて、開いた口が塞がらなかった。目の前のこの人が製造に関わっていたという話がもし本当であるのなら、色々な星、特に宇宙進出に力を入れている星々から引く手数多に違いなかった。

 見たことも乗ったこともなく、今後もそうそうないだろうと思っていたし、それほど興味もなかったから決して詳しいわけではないが、宇宙船が離陸時に大きく揺れるのだということも、内部でも耳を塞ぎたくなる音がするのだということくらいは知っていたし、そもそも自分はモニター前の椅子に座ったニジノタビビトの後ろに何事もなく“立っていた”のだからそれだけでもこの宇宙船に性能の高さが窺い知れる。


 思えば、たまたまちょっと失敗して着陸時にあんなに大きな地響きのような音を立てていたのにそのボディが何事もなかったように無傷であったのも考えてみたら相当凄いことのような気がしてきて、キラは今更ながらに少し震えてしまった。


 そんなキラに気づくことなく、ニジノタビビトは軽く伸びをすると椅子から立ち上がってキラの方を振り返り、お茶にしよっかと言って食卓を通り過ぎ、キッチンの方に歩いて行った。


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