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第112話 沈むソラリククラゲの胞子


 いつもとは違うはずの、いつもと同じ朝だった。宇宙船に乗って宇宙を移動していた時と同じように目覚めたキラだったが、朝日が眩しいことに気がついて、そうか惑星メカニカに着いたのだと思い出した。

 念願叶ったはずなのに、どうしてか感動というものが薄い気がする。もちろん生まれ故郷に帰ってこれたことは嬉しい。嬉しいが、この四ヶ月という長くも短い期間が抱く気持ちを嬉しいだけではなくしていた。

 そんなことを思ったところで、それよりも優先して行わなければいけないものがまだ数多くある。考えを振り切るように頭を振って、キラはさっさと着替えようと寝巻きにしていたTシャツを脱いだ。


 昨日は結局カプラの家からゆらゆらと、ソラリククラゲの胞子が漂うように夜道を少しのんびり歩きながら帰ってきたが、宇宙船についた途端安心してなんだかすっかり体重くなってしまった。さっきまで重力の軽い惑星にいたのに急に違う星に降り立ってしまったようだった。

 さっきまでふわふわ歩いていたのが急に重さを伴った緩慢な動きになったキラに、先に風呂を進めてくるニジノタビビトをなんとか風呂場に押し込んだものの、ニジノタビビトの姿が見えなくなった途端ソファに沈み込んでしまった。もう瞼がほとんど落ちてきているが、この姿をニジノタビビトに見られるのも恥ずかしいので、なんとか音でニジノタビビトが風呂から上がったのを察して体制を変えなくてはいけない。大きなあくびをひとつして眉間を揉むと、勢いをつけて立ち上がって大きく深呼吸をし始めた。ハイスクールの生物の授業の時に、酸素を取り込むと眠気が抑えられる、つまり深呼吸をすればいいと先生が言っていたのを思い出したのだ。

 結局深呼吸をしてもあまり変わらなかったので、仕方なしに腕をブンブン回したり、腿上げをしたりしながらなんとか体の重さと眠気に耐えた。はたから見ればソファで寝落ちしてしまうよりもよっぽど変な光景だったが、今のキラにはすっかり考えられる余裕もなかった。

 かくしてなんとかニジノタビビトが風呂から上がってくるまで起きていることに成功した。入れ替わりで風呂に入って、上がった後の記憶があやふやではあるが、なんとか寝支度を整えて寝るまでは漕ぎ着けられたらしい。



 何にしても、まず本日やらなくてはいけないのは、ラゴウとケイトにメッセージを送ることであった。昨日は結局キラの家に行っただけで終わってしまったので、今日は先にメッセージの送信をすることにしたのだ。

 ニジノタビビトもこの星で虹をつくらなくてはもう燃料がないため、長期滞在を予定している。それあって今回は二人が返事を送ってくれるのを待とうと話し合っていた。そして、送るならばさっさと送ってしまった方がいい。

 ラゴウとケイトにメッセージを送ってもらうにはこちらも座標が必要になってくるが、宇宙船という可動性のものの座標を連絡するのはアレなので、候補として上がるのは必然的にキラの家となる。しかし、あの場所は今キラの部屋であってないような中途半端な場所になっているので、何にしてもまずはカプラに許可を取らなくてはいけなかった。


「しまった、昨日聞いてくるのを忘れてた……」


 昨日カプラと話をして一緒に夕食までとった上に、メッセージのことは覚えていたのに、座標のことだけすっかり頭から抜け落ちてたいた。

 流石に無断でキラの家の座標を知らせるわけには行かない。今日まず行わなければいけないリストのトップが「ラゴウとケイトにメッセージを送る」から「カプラへの許可取り」に変わった瞬間であった。



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