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第104話 段ボール箱開封


 キラの部屋だったところになってしまった部屋は、家具と電化製品が残ったままなので入居前というよりかは退去前と言った感じだった。カプラの言っていた通り空っぽの棚やタンス、それからコードの抜かれた電化製品たち。本棚の中に収めていたはずの書籍類も今はその姿はなく、本棚の奥の壁を晒していた。カーテンは部屋の劣化を防ぐためかかけられたままになっている。

 カプラはそれぞれをできるだけカテゴリーごとにまとめて段ボール箱にまとめたと言っていた。ガムテープを貼って封はしていないとも言っていたので、とりあえず片っ端から開けてみるほかないだろう。

 部屋が広くなったなと思いながら、キラはまず換気のために窓を開けようとして一瞬躊躇した。自分が星に帰還できたことが露呈すると面倒なことになるのだからと変装してきたのだから、一応ここも警戒しておくべきかと思ったのだ。この部屋に大家であるカプラ以外が入っている場面については、ほんの少しの間だったし、平日の昼下がりだからおそらく誰も見ていなかったと信じることにした。物音をたてることに関しては元々この部屋には隣人がおらず、この四ヶ月の間も誰も入居していないとのことだったので問題はない。キラは表の道路に面している窓を開けるのをやめてキッチンのところと、お風呂場の窓を少しだけ開けた。


「ここがキラの部屋か……」


 キラがカーテンを少しだけ避けて外を見ていると、ニジノタビビトがそう呟いた。キョロキョロと辺りを見られているのが、自分のものはもうほとんどないとはいえ少しだけ恥ずかしいような気持ちなった。しかし、キラも初めて宇宙船に入れてもらった時に自分も同じようなことをした覚えがあるものだから、自分だけ咎めるわけにもいかなかった。

 家具と段ボール箱しか表に出ていないような状況でこれをキラの部屋と言えるかが微妙ではあったが、ここ以外にキラの部屋と言える場所はなかった。


「まあ、俺の部屋って言ってもほとんどの物は仕舞われてるんだけどな」


 カプラはキラの荷物を段ボール箱に詰めて備え付けのクローゼットの中だとか、部屋の隅にまとめておいたりしてくれていた。とにかく中身をあらためていくしかないので、キラはシャツの袖のボタンを外して腕捲りをするとクローゼットを開き、中に入っていた段ボール箱三つをずるずると引き出した。


「おっ、中身書いてあんじゃん」


 段ボールの蓋の端っこのところに新聞の小見出しくらいの大きさの文字で「衣服」と書かれている段ボールが二つ、もう一つには「そのほか衣類など」と書かれていた。それじゃあ結局全部衣類じゃんか、と思いはしたが、おそらく着るものが「衣服」で「そのほか衣類など」には帽子やマフラー、それとリュックなどの鞄も入っているのだろう。

 スッとニジノタビビトがあぐらをかいて座り込んだキラの段ボール箱を挟んで向かい側にしゃがみ込んだ。箱に書かれた文字を読んで、キラは本当はどういう服が趣味だったのだろうかと気になったのだ。

 キラはまじまじと段ボール箱を見つめるニジノタビビトをそのままにとりあえず蓋を開けてみることにした。これで一番上に下着でも乗っていたら恥ずかしいなと思ったが、そこにあったのはシンプルなTシャツだった。

 今回の目的は荷解きではなく、何が残っているのかを確かめることのなので、とりあえず箱の隅の方に手を突っ込んで服を箱から出さないようにしてめくって奥を探った。一通り見ると次の箱をさっさと開けて確かめる。「そのほか衣類など」にはやはり帽子や鞄なんかが詰められていた。

 三つ全てを見終わったが、下着は未開封のものがパッケージのまま二枚残っているのみだったので、他は捨ててしまったらしい。服などはリユースで売りに出せるが、下着はそうもいかないので捨ててしまったのだろう。これに関してはコンビニに行けば買えるから大した問題じゃない。


「キラ、見てもいい?」

「んあ? ああ、いいよ。見てて面白いか分かんないけど……。俺キッチンの方の箱見てくるわ」

「うん、分かった」


 一通り見たかぎり見られて恥ずかしいものもなかったので、あまり箱の外に出さないようにだけお願いをしてキラはキッチンの方にある段ボールを見に行った。



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