トロッコ
トロッコに乗っていた。
始点も終点もわからない。分かれ道すら無いレールの上を暗闇の中、ただ進んでいた。
ついさっきこの動く箱に乗り込んだ気もするし、あるいは途方もないような時間乗っていたような気もする。
いつからだろうかレールの両脇に低木が並んでいる。
しかしそれもまた曖昧であった。瞬きをしたらそこにあるのはお遊戯会で使われるようなハリボテになっていた。
その異様な光景を目の当たりにしても私は違和感を全く覚えず、ただ足に伝わる乱雑な振動を感じていた。
しばらくたった後、今度はレールが水没しているようだった。だんだんと減速したトロッコはやがて完全にスピードを失い止まってしまった。
トロッコを降りると今まで私が乗っていた「何か」は消えてなくなり、代わりに水に浮かぶ小さな石が道を作るように表れた。
体の思うままにその石を渡りさらに進んでいく。
体の思うままにその石を渡りさらに進んでいく。
体の思うままにその石を渡りさらに進んでいく。
体の思うままにその石を渡りさらに進んでいく。
体の思うままにその石を渡りさらに進んでいく。
体の思うままにその石を渡りさらに進んでいく。
はるか先に小さな、本当に小さな光が見えた。
途端私の足は言うことを聞かなくなり、その場に座り込んでしまった。
足、膝、腹とだんだんと冷たい「それ」に飲み込まれていき、最後には私だけがその場に残った。