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幕間 犠牲
扉は開いたが巨大なブロックのせいで小鈴が押しつぶされてしまう。
老師のキョンシーならワンチャン耐えられたかもしれないが、小鈴はスピードタイプのキョンシーだ。冷静に考えると小鈴が助かる訳がない。分かってはいるが簡単に見捨てる事が出来ない。
私は小鈴の所に駆け寄ろうとするが、美雨に服の袖を掴まれてしまう。
小鈴と違って力がないのですぐに振り払えるかと思ったが、想像以上に強い力で引っ張られていた。
「彼女の犠牲を無駄にするつもり?」
美雨の犠牲と言う言葉を聞いて頭がカッとなる。
「まだ駄目だと決まったわけじゃない!」
頭では無理だとわかっていても感情がそれを否定する。
「アンタ道士だろ?
キョンシーが使えるか使えないかぐらいすぐにわかるでしょ?
ねぇ、ちょっと冷静になってよ。」
素人のくせに道士について意見するとか!さらに頭に血が昇る。
「ほら、行くよ。
扉が閉まったら小鈴が犬死になってしまう。」
冷たい言葉だが、美雨は懸命に私の背中を押してくれていた。
私は一度小鈴の事を見ると血が出るほど唇を噛み締め、扉に進むのであった。




