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遭遇

 ふと気がつけば大森林だった。

 何ということもない。右も左も木、木、木。前はもちろん振り返っても木しかない。ちなみに見上げると木々の隙間から空が見えた。

 

「ダンジョン崩壊の強制転移か?……いや、でも通知が表示されなかったような……」


 直前の記憶を思い出そうとしつつ、状況を把握しようと周囲を確認していると、突如として頭が痛みが走る。

 立っていられないほどではない。しかし、同時に頭の中に得体の知れないものが流れ込んでくるような感覚に支配される。

 

 数秒後、痛みが治まると共に頭に無数のイメージが浮かぶ。

 それは恐らくはこの場所についての情報――――先程までは知らなかった情報(・・・・・・・・)だ。

 

「ノーランド……大森林……?」


 ノーランド大森林。世界で最も大きい森林地帯。多数の魔物が生息。

 

 『シン・ミストルテイン』ではエリアの鑑定を行った場合に表示されるような情報だ。主に新しい場所に訪れた時やダンジョンに入った時に真っ先に行う。公式のダンジョンなどでは推奨レベルが表示されるため、攻略難易度の目安にもなる。

 

 だが――――それはウィンドウ表示だ。あくまでプレイヤーに対して視覚的に提供される情報であり、間違っても脳に干渉して情報を認識させるようなものではない――――そもそも没入体験型ゲームでは、プレイヤーに脳に直接干渉することは禁止されている。こんな機能を実装したことが発覚すれば、即座に営業停止。それと合わせて運営には重い刑罰が課せられる。


 いや、今はその憂慮は意味がない。それをもう知っている(・・・・・)のだ。

 先程流れ込んできた情報によって、強制的に理解させられたと言った方がいいだろう。


「ここは――――異世界だ」




 ノーランド大森林の某所。

 少しだけ開けた場所で二人の冒険者が火を囲んでいた。

 

「アカシャ。後は任せた」

「魔物除けの香ね……ほいっ」

 

 起こした火に魔物を遠ざける香りを放つ、特別な香を無造作に投げ込む。

 それは冒険者にとってありふれた光景であった。


「ララが炎の魔法を使えるおかげで、火おこしが楽でほんと助かるわね」


 火おこし道具を持ち歩かなくていいし。と軽口を叩きながら、仕留めた魔物を解体していく。今回の依頼は角だけだが、他の売れる部位も解体していく。


「私の魔力にも限界がある。本来は道具を持ち歩くべき」

「魔力の回復が早くなるスキルがあるじゃなかったっけ?」


 ララは受け取った角を傷がつかないように気をつけて鞄に入れる。

 

「うん。普通の魔法使いより倍早い」

「倍早い……さすがは"炎炎(えんえん)のララリア"ね。ま、ララリアが魔力切れでも、いざとなったらあたしのスキルで火をつけられるし、道具なんてやっぱり必要ないわね」

「スキルの無駄遣い…………アカシャ、何か来る」


 即座に自らの得物である大剣を手に取って、ララリアを庇える位置に即座に移動する。大剣使いと魔法使いのみで構成されるこのパーティで斥候を担うのは、魔物が放つ魔力を探知することができるララリアの方だ。


「どんなやつかわかる?」

「大型じゃない……でも――――不気味なくらい魔力が大きい。やばいそうなのが来る」


 それを聞いて、アカシャは「暴れられそうだ」と内心で喜ぶ。そんな楽しげな彼女を見て、ララリアは静かに微笑み、支援の準備をする。

 

 アカシャとララリア。最上位のAランクである冒険者パーティとして有名な二人は、炎使いの優秀な冒険者として知られている。

 危険な魔物が多いノーランド大森林は、Aランクでも一部の冒険者にしか入ることが許されていない。それは多くの冒険者が無事に帰還することができなかったからだ。ゆえにたった二人でノーランド大森林を探索できる実力を若くして身につけた彼女らは、優れた判断力と共に運に味方された冒険者と言えるだろう。


 しかし誰に予想できただろうか。

 偶然、そこに運悪く(・・・)最強生物が飛び出してくるなんて。

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