天国と地獄
誰かが言った
天国は空の彼方にあるけど誰も辿り着けないって
死んで肉体から抜け出した魂は
天国に向かって飛んでいくけど
雲にぶつかると
雨になって堕ちてくる
だから誰も辿り着けないって
誰かが言った
地獄は海の底にあって誰も辿り着けないって
雨になって堕ちてきた魂は
地獄に向かって沈もうとするんだけど
魂はとても軽いから
すぐに浮かび上がってくる
だから誰も辿り着けないって
俺もいつか死ぬ
そう強く思った
当たり前だけど
今までは気付かないフリをしてきた
神も悪魔も信じない俺だけど
いつか変わるかもな
棺桶に片足が入るくらい老いぼれたら
最近よく思う
此処以上に心地いい世界なんてないんじゃないか
此処以上におぞましい世界なんてないんじゃないか
天国と地獄はきっと同じだ
空があって
大地があって
俺がいて
お前がいて
つまり此処はすべて
此処に境界線なんてない
あるとしたら
俺達の魂の中だ
まぁ
魂ってやつが在るとしたら
生きてても
死んでても
この体に埋まってるわけだから
天国も地獄も
そいつ次第って事だ
生きてても
死んでても
いや
肉体から抜け出した魂は命の残骸か
首から十字架をぶら下げて
深緑の跳ね馬に乗り込んだ
海へ向かう
ガラクタが漂う海へ
魂の行き着く先は此処なのか
波に揺られるこの青の中に
お前らはいるのか?
アダムとイブも
だから言っただろ?
天国も地獄も此処なんだ
死ねば藻屑
あの娘の前で消えていくだけ
何も遺さずに消えていくだけ
揺られて漂うだけ
行き着く先の無い永遠のブルー
つまり此処がすべて