第六話:試練と帰還者、その1
ある読者から、一度に読むには長すぎるという指摘を受けたので、ためしに二つに分けてみました。何か要望があれば何でも言ってみて下さい。できる限り改善していきたいと思います。
―「ねぇ、翔君。」
「何?みーちゃん。」
「何で私の事をいつも気にしてくれるの?」
…ああ、まただ。何で最近こんな頻繁に思い出すんだ。
「んーとね、内緒かな!」
…その時は勇気が無かったんだ、好きだからって言えないでいたんだ。でも、その時に思いを伝えていたなら…あんな思いはしなかったかもしれないのに。
−いきなり始まった合宿も最終日となった。
「訓練も今日で終わりか。」
「何だ翔、寂しいのか?」
「いや、違…そうかも。せっかく再開したのにな、それに、あいつとも仲良くなったし。」
「定期的に集合はかかるんだ、すぐに会えるさ、さあ、エースがそんな顔をするな。」
「大、誰がエースだって?」
「お前以外に誰がいる?一応この部隊じゃNo.2だろ。照れるなって。」
「No.2…悔しいが隊長には勝てなかったな。」
「そろそろ飯だろ、行こうぜ。」
「ああ。」
−その頃、アーカス・ナカラン内は騒然としていた。
「デバステーター接近!かつてない数です。予想を超えていて迎撃が間に合いません。艦長!」
「くそっ。奴らの目的地は間違いなくあそこだ。少しでも数を減らせ!いくら最終試験でもこれでは厳し過ぎる。」
「前方に転移反応!敵の増援です!」
「両舷主砲発射!両翼を叩け!」
「了解!両舷主砲発射します。」
−そして地上でも迎撃準備が出来ていた。
「飯食ってすぐこれとはな。」
「ぼやくな大、すごい数らしい。どうやらあいつら本腰入れて来たみたいだな。」
「翔、大地。」
「何です。隊長?」
「お前達の機体に取り付けた、UGドライヴの調子はどうだ。」
「問題ありません。」
「こっちもです。」
「飛行できる機体は少ない、頼むぞ。」
「了解!」
UGドライヴ、それは新型の重力制御装置である。これによりある程度の重量の機体が空を飛べるようになる、北条重工の自信作である。が、試作型なので数が少なく持ち上げる限界もまだ高くないないのが難点である。
「来たぜ。」
「各機、攻撃開始!」
「行くぞ、アル。ゴーバトラー・タイプF発進!」
「撃銃夫可翔型、出るぞ。」
二人の機体が大空に飛び立った。
−発進した翔達の前にいたのは、ロボットではなく、明らかに生物だった。
「なっ、おいアル。こいつらって。」
「はい、そうです。あの時の奴らの仲間と見て間違いないでしょう。」
「何なんだこの数は!」
「比我戦力差はゆうに1対130ですね。」
「こうなったらとことんやってやる!ショットガン、スタンバイ!散弾の方だ!」
「了解。」
「掌撃王!ビームピストルだ!」
「御意!」
「飛行組は当たるなよ!第二の太刀、鎌鼬!」
「ギガファイヤー!」
「静寂なる闇!」
ミサイルやビームもデバステーターに殺到していった。が、それでも倒した量は全体の中の僅かだった。
「一体いくらいるんだ!」
「嘆くな。心が折れたらそこで終わりだ!」
「まだまだ、ミサイル発射!」
「この、ビームカノンならどうだ!」
「撃て撃て!撃ちまくれ!」
−空中でも、
「左斜め下から触手!避けてください!」
「くそ、食らえ!」
「次は後ろ。更に、真上から!」
「次から次とうっとうしいんだよ!」
「翔!上だ!」
「なっ!うわぁ。」
ゴーバトラーが攻撃を受けて落下した。
「このくそ野郎!」
ゴーバトラーの胸部が展開し、エネルギーの奔流が走った。
―宇宙のアヤガン軍
「一体どれだけの数が下に降りた?」
「襲来した数の五分の二程です。」
「あっ、ああぁー!」
レーダー員が悲鳴を上げた。
「増援…きます。」
−再び地上では、
「優香、あれやるよ。」
「分かったわ。みんな上手く避けてね。荒れ狂う水流!」
「ギガファイヤー!」
辺りに水蒸気が発生し、そして。
「ライトニングボルト!」
大爆発が起きた。
―再び宇宙
「被害報告!」
「本艦の被害は、右舷カタパルト大破。主砲、一番、三番沈黙。ミサイル発射菅は後部を残して破壊。エンジン出力も三十%低下。」
「僚艦はどうなってる?」
「出撃した内の四十五%は帰艦しましたが、ほとんどが中破、大破しており、再出撃はほとんど不可能です。」
「機動兵器群は?」
「バスクード部隊は第二、第四、第九、第十二、第十五大隊を残し、全滅。それらの隊も、弾薬、推進剤、エネルギーの残存量がもうありません。」
「万事休すか…。」
「艦長!」
「何だ!?」
「前方に転移反応!数は…一機です!デバステーターを攻撃し始めました!」
「何だと!?」
「…デバステーターほとんど沈黙…。未確認機体は再び転移しました。」
「一体…何が起きたというのだ?」
その二に続く
引き続きその2も読んでいただけるとうれしいです。ちゃんとした後書きはそちらで。