第二話:襲来!アヤガン軍
久しぶりの投稿です。こんな自分の小説と言うにも厚かましい作品を読んでくださる方、感謝感激の嵐です。楽しんでいただけたら幸いです。
―その日、学校は臨時休校になり、翔達はその場で様々な質問をされた。
校長は校庭に残った地割れの後を見ながら、
「この中に松平君が落ちていったのかね?」
と聞いてきた。
唯一の目撃者である三人は無言で頷いた。
校長は俯き消沈した声で言った。
「惜しい人を亡くした。その身を犠牲にして生徒を守るとは…。」
その横から、調査に来ていた軍人が話しかけてきた。
「あの機体は軍が接収する。それと同時にパイロットの君の身柄も確保させてもらう。」
軍人が翔の左右に現れる。
「そんな!俺はただ二人が危険だったから乗ったんだ!軍のやつが乗ればいいじゃないか。俺は関係ないだろ。」
「君の言うことがもっともだ。しかし、あの中のAIが君でないと動かせないと言っている。」
「だったら俺が軍に行ったらどうなるんだ。」
「機体の方は…解析して、動かす方法を捜し出す。そこで君にはあの機体を動かしたときの状況を証言してもらいたいのだ。」
それなら、と翔が納得しかけた時、突如アルが反論した。
「私は反対します。この機体は解析させません。」
「アル、どうしても駄目なのか?」
「はい。例え主の命令でも…。」
「じゃあ教えてくれ。何故俺はこの機体を動かせる?」
「それは…わかりません。しかし、主しか動かせないのは事実です。」
「その話が真実なら我々は君を拘束しなければならない。」
軍人達が翔を拘束しようとする。
「なっ、ちょっと待てよ!なんでだよ!?」
「あの力を民間人に持たせるには危険すぎる。」
軍人は翔を車輌に乗せる為に動き出す。
「ちょっと。翔を連れていかないでよ。」
そこに、珠香がたちはばかった。時羽は携帯で誰かに連絡している。
「翔は行かせない。どうしても連れていくつもりなら私を…。」
珠香の言葉を掻き消すように上空からヘリのローダー音と強い突風が吹いた。
『きゃあっ!』
慌ててスカートを押さえる珠香と時羽。そして
「はーっはっはっは!」
オッサンの高笑いする声が聞こえてきた。
グラウンドに着陸したヘリの中からナイスミドルなオッサンが降りてきた。それを見た兵士が固まっている。オッサンは開口一番に。
「時羽!大丈夫だったかい!」
そのオッサンの声は、今までの険悪な雰囲気を何処かへ吹き飛ばしていった。
「お父様!もっと静かに来れないの。それに今さっき連絡したのにどうしてこんなに早く来れるのですか!」
そう!このオッサンこそ北条家現当主、北条勇一郎である。
「それは、ずっと上で見守っていたからさ。いやあビームが飛んで来た時は本当に死ぬかと思ったよ。」
大型軍用ヘリを改造したような機体の中は社長室のようなオフィスになっていた。死角になっていたが、机の正面には大型のモニターが置いてある。会議等にも使われるが、大体は時羽を、軍の最新鋭機に使われるような物よりもさらに高性能なカメラでのぞk…見守ることに使われている。要するにただの親バカである。
「その機体は我が社であずかろう。この度日本各地で同じことが起きた。我が社はそれらを研究運用するように政府に依頼された。これが、証明書だ。」
軍人達はその証明書を見た後、処理を勇一郎に一任し、被災者達の救援に回った。取り残された翔に向かって、勇一郎は笑顔で頼んできた。
「単刀直入に言おう、翔君、これに参加してくれないか?」
―その頃、地球の衛星軌道上にアヤガン軍の戦艦アーカス・ナカランが転移して来た。強力なECSを使用しているのか地球のレーダー網ではそれを探知できなかった。
「艦長!目標地点に到着しました。」
「よし。私が挨拶がてら偵察に行こう。私の機体の準備を!」
「はぁ、またですか…了解。バスクード・カスタム発進準備!」
「では行ってくる。」
ローム・マイゼンリッチは颯爽と格納庫へ向かった。
「システム起動確認。目標地点は?」
「ここの真下に反応があります。どうやら学校のようですので…。」
「わかっている。現住人にはなるべく被害を出さないようにするのだろ?」
「はい、抵抗するものにも。って言っても、簡単に渡されても我々では扱い切れませんが。」
「ハハハ。戦うことになっても、骨のあるやつと当たりたいな。」
真紅の機体、ロームのバスクード・カスタムが発進した。
―地上でもそれに気付き。ヘリの横から二機の機体がECSの不可視モードを解除して現れた。自衛隊の正式採用機のダイブンの北条家仕様である。これらは社長や時羽のSPとして活動している。
「皆さん、お下がりくだs…」
バスクード・カスタムが優雅に降り立ち、銃を向けて警告して来た。
「その機体をこちらに引き渡してもらおう。従わない場合は実力行使に移らせてもらう。」
「拒否します。」
アルが答えた。
「そうか…。」
ロームは笑みを漏らした。そしてバスクード・カスタムはダイブンに発砲した。
ダイブンはシールドを掲げ、その一撃を防御するが、シールドごと左手を吹き飛ばされ、大きくバランスを崩し転倒する。
もう一機のダイブンが庇う様に目の前に現れ、刀を振りかざしバスクード・カスタムに切り掛かる。
バスクード・カスタムは腕部から短刀を取り出すと、相手の攻撃を鮮やかに受け流し、お返しとばかりに頭部にカウンターを食らわした。攻撃を受けたダイブンは、首から上が吹き飛び、やがて沈黙した。
その間、翔はアルに拒否した訳を聞いていた。
「何で拒否をした。」
「何故かは私にもわかりません。ただ、基本プログラムに機体を奪われてはいけない的な指令が下されています。これは、第一級優先命令ですので、主にも変更は出来ません。」
「的なって、えらいアバウトだな。」
「話はそこまでにして私の相手をしてくれないかな?」
バスクード・カスタムがもう一機のダイブンを片付けて聞いて来た。
「はぁ…、やっぱりやらなきゃいけないのか…。」
翔はゴーバトラーに乗り込みそれに対峙した。
「では、参る!」
バスクード・カスタムが短刀をしまい、腰のブレードを抜いて接近して来た。
「アッ、アル!こっちにも何かないのか?」
「では、こちらをどうぞ。」
ウエポンセレクターが点灯し高周波ブレードを示すと、同時にビームガンの下の方から剣の持ち手が出て来た。
それを抜くと、明らかに腕の全長よりも長い剣が出てくる。
「これってどういう仕組みなんだ?」
「それはおいおい説明されるでしょう。それより今は。」
「えっ。」
気がつくと、バスクード・カスタムがかなり接近していた。
振り下ろされるブレードを翔は高周波ブレードの腹で受けた。迫り来る連続攻撃に技量差がある翔は、かろうじて防御するのが精一杯だった。
「くっ、くそぅ!」
「それで本気か?素人ならこんな物かもしれないが、君からは何か剣士特有のにおいを感じる。なにか本気を出せない訳でもあるのか?」
「お前には関係のないことだ!」
「ふむ、本気を出さないのなら死んでもらおう。…と言いたいところなのだが、せっかく機体がいいものなのだ、このまま壊さずに鹵獲したい。諦めてその機体を渡してくれないか?」
「拒否します。」
「高々戦闘用AIの分際で!何ができると言うのだ。」
しかし、突然頭部を失ったダイブンが動きだし、発砲してきた。弾がバスクード・カスタムの足元に着弾する。
「なんだと!」
ダイブンを再起動させた小九郎が叫んだ。
「翔!今だ!」
「サンキュー!…そこだ!」
発砲によって一瞬バスクード・カスタムの動きが止まっていた。その隙に、翔は高周波ブレードを相手にたたき付けた。バスクード・カスタムのブレードか切り裂かれそのまま左腕と頭部を破壊する。
「ちいっ。何と言うパワーだ!」
翔がとどめを刺そうとする。しかし人間と思われる相手を殺すことを躊躇った。その時、空から弾丸の雨が降りそそぐ。
「うおっ。危ない!」
かろうじてみんなは守ったが校庭が穴だらけなった。その間に発砲をしてきたアヤガン軍の船がバスクード・カスタムを回収した。
「次こそ、その機体をいただくぞ!」
そう言いながら、船は宇宙に上がっていった。
―「時羽の親父さん、俺、例の件、参加します。相手がこっちを狙っているなら、ここにいるのは皆を危険にさらしてしまうだけです。」
「そうか、分かった。そろそろトレーラーが来る頃だろう。機体だけ持って行くつもりだったが、それに一緒に乗っていってくれ。…ああ、そうだ。それと一つ…。」
勇一郎は声を潜めた。
「あれは浮かれているから、君に言っておくが、くれぐれも節度は守ってくれよ。」
「?…は、はい…?」
どこまでも鈍い翔だった…。
「なら、私もついていくわ!」
珠香が言った。
「…いいだろう。彼と一緒に来てくれ。」
意味深な笑顔で、なぜか了承する。しかし、そのことに疑問を持ったのは、アルだけだった。珠香も時羽も舞い上がっていたからである。そして、
「???」
やはり翔は鈍かった…このことで、これから起こるであろう災悪にも気がつかないくらいに。
―衛星軌道では、
「派手にやられましたね。」
「ふふふ、これぐらい出来なければ、奴らには太刀打ちは出来ないさ。」
ロームがさも当たり前の事のように…しかし、とても嬉しそうに答えた。
続く
多分おられないと思いますが、前の話を読んで続きが気になっていた方、本当にすいません。不定期な執筆なので、明確に次はいつとは言えませんが、早いうちに次の話を仕上げたいと思っているので、見捨てないでまた読んでください。