第二十五話:ゴールデンフィーバ!、その2
大地:前回は不意をつかれたが今回はそうはいかないぜ。
優太:天翔の逢翼はz…
ローム:させん!
どっかーん!
二人:GYAAAAAAAAAAAAAAA!?
ローム:天翔の逢翼、スタートだ。
大地:機体持ちだすなんてずりぃぃぃ…。
―翔達の前にそびえ立つ室内アスレチック。
「でけぇ……。」
大地が上を見上げてポカンとしている。
「圧巻だね。」
優太も同じくポカンとしている。
「なーに二人してアホ面を晒してるのよ。」
そんな二人を後ろから優香が小突く。
『痛っ!?』
「私、ワクワクしてきました。」
「燃えてるわねぇ。」
ジャージ姿の一同が軽く身体を動かし準備している所に。
「皆さんお揃いですね。」
ぷしゅっとドアが開き、時羽と小九郎が入って来た。
「小九郎、こんな時までその服なのか?」
執事服を見て、翔が半ば呆れ気味に言う。
「当然!これが私の運動着だからな。」
キュッとタイを締め直す。
「はいはい。しかし、何か様になってるな。」
「ふふん♪褒めても何も出ないぞ。」
「さて、ゴールは……。」
「ここだっ!」
時羽の声を遮り、勇一郎がゴール地点から声を張り上げた。
「……何処?」
大地が目を凝らしながら彼方を見る。
「あれか?」
遥か遠くの(様に見える)位置にぽつんと勇一郎が立っている。
「遠いなぁ。」
「入口は沢山ある。かぶらない様に入ってくれ。」
「ようし、負けたら皆にジュースな!」
翔達が一斉に入口に飛び込んだ。
―「これはまた……。」
翔の第一関門は丸太に抱き着いてゴロゴロ回るあれだった。
「なんか長くないか?」
先の見えない程のあまりの長さに、少しビビりながらも意を決して飛び込む。
「おっ!?おぉっ!?ノォォォォォッ!?」
翔の叫び声がこだましながら遠ざかっていった。
―珠香は下を向いて絶句している。
「落ちたら、死ぬ。これは絶対死ぬって!」
吊橋の下は何も無く何も見えない、暗闇が口を開けて待ち構えているようだった。
『オォォォォォ!?』
下の方から翔の叫び声が響き渡る。
「もう始めてるのね……。」
ここで立ち止まってたら、翔に馬鹿にされるような気がして、珠香は悔しくなった。
「やっ、やってやろうじゃないの!」
不安定な吊橋を珠香はゆっくりと進み出した。
―「うわぁ。」
大地の前にそそり立つ壁紙5m!
「これを駆け上がれと?」
作者の悪意を感じつつ悪態をつく。
「ォォォォォォッ!?」
「これは、翔か?あいつ楽しそうだな。」
本人が聞いたら、断じて違う!と言いそうだが、そんなことはお構い無し。
「さぁて、覚悟を決めて行きますか!」
大地が壁に向かって走り出した。
―「よっ!ほっ!」
アルがぴょんっぴょんっと丸太の上を跳びはねながら渡っていく。
「先回りをして、主を驚かせてみせちゃいます!」
何となくMのワッペン付きの赤い帽子を冠せたい光景である。
「ォォォォォォッ!?」
しかし、突然の翔の叫び声に驚き、一瞬バランスを崩す。
「わわわわっ!?落ちる〜!?……ふぅ。」
何とか踏み止まるも冷や汗が一筋流れる。
「今のは、主?」
苦笑しながらアルは再び先に進み出した。
―「…………。」
絶句、時羽は目の前の光景に半ば絶望していた。
「これを……どうしろと?」
目の前にあるのは天井から伸びた縄一本、道は対面側に見える。
「ター○ンでもしろと!?」
諦めて引き返そうとする。
「なっ……!?」
入口が閉まっている。
「……。」
「ォォォォォォッ!?」
「翔様!?」
翔の悲痛な叫び声が聞こえる。
「急いで合流しないと!」
反射的に縄に飛び付く。
「っ……きゃぁぁっ!?」
恐怖と戦いながら向こう側へ向かう。
―「よい……しょ……っ!」
その頃、ミルファーナは地道に壁をよじ登っていた。
「……ふう。」
大きい出っ張りの上でふぅ、っと一息つく。
「ォォォォォォッ!?」
「翔君も楽しんでるなぁ。」
再び上ろうと出っ張りに手を伸ばしたその時!
「はわっ!?」
足を滑らせ、腕だけで身体を支えるような体勢になってしまう。
「ううっ、後ちょっとで上りきれるのに……。」
ミルファーナには下の安全マットがこっちに来いと手招きしているように感じた。
「そんな誘惑に……負けたくないっ!私はっ、守られるだけのお姫様でいたくない!」
必死にでどこかに足をかけようと足掻く。
「ふぁいとぉぉ!いっぱぁぁっつ!」
どこかのCMの様な掛け声で何とか足を出っ張りにかけ、ミルファーナは再び上りはじめた。
―他にもいた気がするが、割愛……。
「しないでよ!」
……仕方ない。小九郎は……。
「いやいや、僕が先だと思うよ!?」
……優太だが、彼は長い長い一本道を腕だけで進むいわゆる雲悌をしていたのだが、哀れ手を滑らせ真っ逆さまに下に落ちていた。
「うわぁぁぁぁっ!?」
しかし、無限に続いているようにも見えた暗闇は意外とあっさり終了し、優太は驚くほど柔らかいマットの上にべちょっと落ちた。
「痛たた……。」
落ちた先は明るく、上を向くと自分が滑らした場所が見えていた。
「フェイクだったのか。」
さらに見回すと進行方向と思われる矢印もある。
「この方向って、まさかやり直せってこと?」
優太はげっそりしながら矢印の指し示す入口へと歩きだした。
―「んしょっと!よいしょっと!」
優香は両端の壁を使い、蜘蛛のように上を目指していた。
「オォォォォォッ!?」
ふと真下を翔が横切る。
「へっ?今のって……。」
気にしたら負けと思い、再び上へ進み出す。
「この高さだとさすがに怖いわね。」
高さが上がるに連れ、少しずつ進む速さが落ちてきているのが自分でも分かる。
「後っ……少し!」
優香は自分を奮い立たせゴールへと進んだ。
―「ふっ!んっ!」
小九郎は一心不乱にロープをよじ登っていた。
「さ、流石に……疲れてきた……。お嬢様は大丈夫だろうか?」
自分ですらこんなにきついのだ、時羽はもっと厳しいのではと心配する。
「こうなれば、俺が先に行ってお嬢様を助けなければ。」
疲れた気分を吹き飛ばして、さらにペースを上げる。
「うおぉぉぉぉ!」
「オォォォォッ!?」
翔の叫び声と絶妙にハモる。
「翔も頑張っているのか、なおさら負けられないな!」
小九郎は素早く力強く縄をぐんぐんと上っていった。
―ここである一つの事実に注目したい。
皆が別々のアスレチックを進んでいるが一つ他と違っているものがある。
……そう、翔のアスレチックだけが下に向かっているのだ。
ここからは彼の運命を追ってみよう。
―「そろそろ……限界……だ。」
速さこそそんなに出ていないが、長時間の回転運動に、翔は目を回し、軽い嘔吐感を感じていた。
「ゴール……まだなのか?」
ちらりと見える先には何も無く、暗闇がぽっかりと口を開けていた。
「ん?……何も……無い?」
そう、何も無いのだ、丸太を転がす道さえも。
「あっ……。」
次の瞬間には翔の身体は丸太ごと宙に浮いていた。
「ぎぇぇぇっ!?」
ぽーんっとレールから飛び出した丸太と翔は、放物線の最高点あたりで対岸のネットにぼすっと包まれた。
「し……死ぬかと思った。」
側面の矢印は上を指し示している。
「これを上るのかよ。」
ため息とともにネットを上ろうとして異変に気がつく。
「あ、あれ?抜けない。」
足とネットが絡まり、丸太がうまい具合にそれを助長している。
「嘘だろぉ!?」
必死に抜け出そうと足を引っ張る。(実際に足を引っ張っているのは丸太だが)
「ボケてないで助けろよ!」
空突っ込みを入れる辺りまだ余裕はあるみたいだ。
「畜生っ!」
仕方が無いので、丸太ごとネットをよじ登り始める。(おいおい……)
―「よっしゃっ!ゴール!」
翔がゴール地点にたどり着く。
「遅かったわねー。」
珠香がスポーツドリンクを飲みながら手を振る。
「あれ?もしかして……。」
「そのまさかだ。最下位。」
聞き覚えのある声が聞こえて来る。翔は嫌な予感しかしなかった。
「あれ?……隊……長?」
「まさか王女にも負けるとはな。この休暇中は再訓練だな。」
「ばーかーなー!?」
―「それだけは勘弁してください!」
がばっと布団から飛び起きる。
「はぁはぁはぁ……夢?」
時計は五月三日の午前六時を指し示している。
「よかった、夢か。」
窓から朝日が差し込んで来る。予報通り天気は良さそうだ。
「……よしっ!」
顔を洗って、朝食とお弁当の支度をしに翔はベッドから下りた。
アル:……えーっと。
時羽:夢落ち……だと……。
珠香:2ヵ月待たせた落ちがそれかぁぁぁっ!?
ミル:ほ……ほら!一応年内掲載出来ましたし(汗)
時羽:それでも限度と言うものが!
作者:じゃあ時羽は遊園地に行かないと(メモメモ)
時羽:へ?
作者:せっかく晴れにしたのになぁ。雨を無かったことにして皆で遊びに行けるのに。
時羽:お、お待ちなさい‼そんなことしたら……。
作者:君たちの未来は私が書いてるんだよ。
時羽:ぐッ……。
作者:っと冗談はここまでにして次回予告しないとね。
珠香:あっ、すっかり忘れてた。
ミル:こほんっ……遊園地に来た私たちは一時の休暇を楽しみます。
アル:でも、主は何だか気になる事があるみたいで。
時羽:次回、天翔の逢翼。
珠香:思いの在り処
五人:お楽しみにー。
十二月末日某所にて
アル:これでヒロインが出そろいましたねー。
珠香:え?あなたってヒロインだったの?
アル:そうですよ?(しれっと)
時羽:てっきりマスコット当たりかと思ってましたわ。
ミル:あ、私も……。
アル:酷いです!?
ミル:あ、ちなみに超番外編はありません。
時羽:流石にあの話数でもう一度はないわねぇ(苦笑)
珠香:仕方ないでしょ。
アル:今年も一年ありがとうございました。(ぺこり)
四人:来年もよろしくお願いします(一同深々と)