第二十三話:逆襲の爪、その2
大地:ふわぁぁあっ……。
優太:大地!カメラもう回ってるよ!
大地:何だってっ!マジかよ!
優太:ほら、シャキッとしないと!
大地:おうっ、久々の出番だぜ!
優太:では、第二十三話後編。
大地:今回も、それなりに楽しんでくれよな!
優太:あ、やっぱりそれなりなんだ……(汗)
―「発艦準備急げーっ!」
格納庫では整備士達が慌ただしく働いていた。
「敵は衛星軌道上に展開しているが数が多い。そのため、今回は横浜基地の部隊との共同作戦になる。」
艦内ブリーフィングルームで政隆が状況を説明している。
「横浜かぁ……確か、黒岩さんだったかな?」
ぼそっと珠香が呟く。
「ん?何かあるのか?」
「違うよ、前に一緒に訓練した人で、誰が行ったかなって思っただけ。」
「へー、そっか。」
「あ、ヤキモチ?」
ちょっと嬉しそうに聞いてみる。
「ばーか、誰がそんな事するかよ。」
「むっ……。」
カチンと来た珠香は、思いっ切り翔の足を踏んだ。
「いっ!?」
「ふんっ!」
そっぽを向きながら足に回転を加える。
「あがっ!?」
部屋に翔の声が響き渡る。
「……痴話喧嘩をするなら別のところでしろ!」
政隆がげんなりしながら言う。
『……ごめんなさい。』
はっと顔を見合わせて赤面する二人だった。
―巨大な戦艦が艦首を上に向け発進の時を待っている。
「騒音防止装置作動、発進16秒前。」
カウントダウンが進みメインエンジンに火が灯る。
「メインエンジン点火確認。発射5秒前、4、3、2、1……GO!」
「ドラグナーズフォート発進!」
巨大な機械の竜が一直線に大空へと飛びたった。
「……これ使いまわされるんだろうなぁ。」
ぼそっと優太が呟く。
「ヲイヲイ。」
大地が軽く頭を叩く。
補助ロケットブースタを切りh……。
「くどいなぁ……。」
―横浜基地から発進したシャトルと合流するため、ドラグナーズフォートが合流ポイントに向かう。
「隊長!横浜基地部隊より入電!」
「何だ!?」
「敵部隊と交戦中、物量に押され劣勢。援護を求める。以上です。」
「くっ、奴らの方が一足早かったか!総員、第一戦闘体制!パイロット各位は機内待機だ!」
『了解!』
翔達が一斉に格納庫へと走り出した。
―ゴーバトラーが、格納庫からカタパルトに向かって送られる。
「各部異常無し、全システムオールグリーン!」
ドラグナーズフォートの前部ハッチが開き、目の前に漆黒の宇宙が広がる。
「カタパルトオープン!脚部固定確認!発進タイミングをパイロットに移譲!」
管制オペレーターからの合図でゴーバトラーが出撃体勢を取る。
「進路オールグリーン、発進どうぞ!」
奥から出口に向かって、左右の壁に付いたライトが順番に灯る。
「ウイングス1!ゴーバトラー!発進します!」
ゴーバトラーが射出される。
「ぐううっ!!」
急な加速によるGで、パイロットスーツにシートベルトが食い込む。
「まだまだ……っ!」
押し潰そうとするGに耐えながら、翔がブースタを全開にし、さらに加速する。
「うおぉっ!」
ゴーバトラーが宇宙を翔ける流星になった。
―続いて、ローダーフェニクスがカタパルトに入る。
「アルちゃん、そっちの調子はどう?」
オペレーターからの質問に、計器をチェックしながらアルが答える。
「大丈夫です。いつでも行けれます!」
「接続確認、進路オールグリーン、発進タイミング移譲確認……。発進どうぞ!」
「ウイングス2、ローダーフェニクス。発進!」
シグナルがグリーンになり、ローダーフェニクスが勢いよく艦から出撃した。
―更に撃銃夫が……。
「よっしゃ、俺の出番か!」
発進した。
「おいぃぃっ!?」
―ゴーバトラーを先頭にA-01小隊が戦闘地域に侵入する。
「ウイングス1から各機!敵陣に穴を開ける。ウイングス2は俺と合体!3、4は友軍の救助。5、6は俺達と敵陣に突入!時間を稼ぐぞ!」
『了解!』
ウイングス3、4の撃銃夫とバイセイバーが友軍艦の方へ向かう。
「やるぞ、アル。合体だ!」
「了解です、主!」
ローダーフェニクスが変形し、パーツがゴーバトラーの背部と腕部に接続される。
「やっぱり、この場所が一番しっくりきますね。」
アルがゴーバトラーのコックピットの後部に、シートごとやって来る。
『バスタァァッ!ゴーバトラー!』
ゴーバトラーの胸部が開かれ、ビームキャノンの砲口からも光が漏れはじめる。
「ビームキャノン・フォーカスモード!」
機体の前でエネルギーが合わさり、一つの球体になった。
「ターゲット・ロック!主、今です!」
「発射ぁっ!!」
巨大なエネルギー弾がバレントの大群を飲み込んで大穴を開けた。
「よっしゃ、いっきに攻めるぞ!」
ゴーバトラー達が突撃した。
―「くっ!?」
ダイブンの残骸を避けながら黒岩のバイセイバーがバレントを撃ち抜く。
「誰か!生存者がいたら返事をしろ!」
奇襲を受けた横浜基地の部隊は壊滅的な打撃を受けていた。
「くそっ!……っ!?」
目の前に現れたバレントが、触手を伸ばし攻撃してきた。
「邪魔だっ!」
それをビームサーベルで切り払う。
ピピッ!ピピッ!
「今までとは違う機体反応……。ファフニールからの増援か?」
謎の機影が目の前に現れたその次の瞬間、黒岩のバイセイバーは大破した。
―「酷い……。」
珠香と大地の目の前には見覚えのある機体達の残骸が広がっていた。
「FN-62、FN-63……間違いない、あいつらの機体だ……。」
大地がファフニール所属の機体の残骸を発見した。
「コックピットとコアを破壊されてる……。」
脱出した形跡が無いことに二人は落胆する。
「接近する機体の反応!」
「珠香!」
「分かってる!」
バイセイバーがビームスプレーポッドを反応する方向に向ける。
「来るぞ!……っ!?」
レンジに入る寸前、反応がいきなり消失した。
「転移攻撃かっ!!」
二機は戦闘機動で位置を特定されないように動いた。
「現れない……どうして?」
不意にビームポッドが爆散する。
「きゃあぁぁっ!?」
「しまった!?珠香!」
続いて撃銃夫の左足も吹き飛ぶ。
「何だ!何が起こっている!」
「師匠、トラップです!爆弾を直接転移させてきてます!」
「くそっ、ここの残骸はそれにやられたのか。」
「脚を止めるのは危険です!」
大地の目の前に、見たことの無い機体が現れる。
「やばいっ!?」
敵機が鋭い爪で、体勢を崩している撃銃夫に切りかかる。
「大地!」
リボルキャノンが二機の間を通る。
「悪い、助かった。」
「お互い様でしょ?」
正体不明機が二機を見て通信を送る。
「お前たちだけかぁ?あの忌々しい機体は……居ないのかぁ!!」
「通信か、いったいどうやって?それに忌々しい機体だと?」
「知れた事、あの蒼い光を放つ機体だ!あいつをこの手でぶち壊さないと俺の気が済まねぇんだよっ!!」
「何、呑気におしゃべりしてるのよっ!」
バイセイバーが敵機にマシンガンを撃ち込む。
「珠香っ!無茶をするな!」
敵機がバイセイバーに照準を向ける。
「出来損ないがぁ、邪魔をするなぁ!!」
「くっ!?ロックがこっちに向いた!」
バイセイバーが射線から逃れようとする。
「遅いぃぃっ!虫が留まっているように遅いぞぉ!」
バイセイバーがブーストを噴かせる前に、敵機の背部に搭載された大口径ガトリングが火を噴き、珠香の機体ををずたずたにした。
「きゃあぁぁっ!!」
武器を持った腕や追加装甲が次々と吹き飛び、コックピットの計器が異常を発生させて弾け、機内にスパークが走る。
「珠香!くそっ!モードFLUSH、起動!」
大地が助けに行こうとするが、頼みのモードFLUSHが発動しない。
「ど、どういうことだ!?」
「原因は不明。機体システムは正常と判断されています。」
「ちっ、このぉっ!」
モードFLUSHを発動させることが出来ないまま、撃銃夫を敵機に向かわせる。
「行くぞ。ビームピストル、スタンバイ!」
サイドアーマーからビームピストルを取り出し構える。
―ピピッ!
「えっ……。」
敵艦隊戦力と戦闘を繰り広げていた翔達は端末から送られてきた情報に絶句した。
「バイセイバー……ロスト……!?」
「くそっ!」
翔が機体をそちら側に向ける。
「主!何を!?」
「決まってる!珠香を助けに行くんだ!」
「落ち着いてください!今はこちらが先です!向こうには大地さんだっているんですから!」
「だが……っ!」
「心配なのはあなただけじゃ無いんです!」
「そんなことわかって……!」
「お願いです、主。今すべき事を……見失わないで下さい……!」
そこまで来て翔はアルが涙目になっていたことに気がついた。
「アル……ごめん。今、俺がやるべき事は、こいつらをどうにかして追い返す事なんだよな。」
「……はいっ!」
アルが、少しだけ笑顔を見せる。
「アル!一気に決めて、珠香達を助けに行くぞ!」
「了解っ!モードFLASH、起動!」
ゴーバトラーが蒼く輝いた。
『いっけぇっ!』
砲口から大量のビームが放たれた。
「このまま、振り抜くっ!」
機体そのものを巨大なビームサーベルにし、敵を次々と焼き砕いていく。
「ねぇねぇ、これなんて……。」
「優太、ストップ。それ以上はダメよ。」
―「くそっ……。」
傷ついた撃銃夫が相手の攻撃をぎりぎりの所で回避している。
「無駄だ、無駄無駄ぁ!このズダリオスから逃げ切れると思うなぁ!!」
少しずつ撃銃夫の装甲が削られていく。
「くそっ!ここまでなのかよ!?」
ピピッ
「何だぁっ!?」
何がズダリオスをロックオンした。
「あれは……バイセイバー?だが、何かが……?」
珠香のものとは色が違うバイセイバーが、傷付いたその身体からスパークを放ちながらズダリオスに銃口を向けていた。
「うおぉっ!」
珠香の機体が手放したリボルキャノンを回収し、撃銃夫もズダリオスを狙う。
―「艦長!このままでは被害が広がる一方です!」
モニターに一つ、また一つとバレント達が撃破された報告が上がっていく。
「仕方ない、ここは引くぞ!信号弾放て!」
敵艦から、撤退信号が上がる。
「転移していく……。」
ゴーバトラー達を残し、艦隊が転移していく。
「なら、ここに用はない!行くぞ!」
翔達が、機体を珠香達の方に向け、一斉にブーストを噴かせる。
―「ちぃぃっ!チャージが間に合わん!」
二機が交互に放つビームに、ショートジャンプを繰り返して回避していたズダリオスも、少しずつ押され始める。
「そろそろ弾切れか……くそっ。」
二機のリボルキャノンの残弾が無くなりそうになったその時、向こうで信号弾が上がった。
「あれは……。ちぃっ、あいつらめ、しくじったのかぁ!」
ズダリオスがジャンプで距離をとる。
「命拾いしたなぁ!」
そのまま、オーバーブーストで戦域を離脱する。
「助かった……のか?」
ゴーバトラーが飛んで来る。
「大地!」
「翔か……すまない。」
そう言い残して、大地は気絶した。
―「ん……。」
目を開けると白い天井が見える。
「珠香!」
翔が覗き込んで来た。
「翔……私?……あっ!」
勢いよく身体を起こす。
「おごっ!?」
翔は顎に頭突きを食らわされ、ひっくり返る。
「戦闘は!?どうなったの!?」
「痛たた…。あいつらは引いたよ。それより、大丈夫か?痛いところあるか?」
「頭が痛い……。」
「そりゃ、そうだろ。……ってそうじゃなくて!」
翔が顎をさすりながら聞く。
「分かってる。……私、敵にやられて……それに……。」
「ああ、横浜基地の部隊も……。」
「黒岩さん……。」
珠香が一筋涙を流す。
「勝手に殺すな〜。」
「へっ!?」
驚き、隣のベッドを見ると、包帯でミイラになった黒岩がこっちを向いて苦笑していた。
「この人な、大破した自分の機体に周りの残骸からパーツを引ったくって即席の機体で戦闘してたんだ。」
翔が呆れたように言う。
「えっと……凄いのかどうかよく分からないんだけど……。」
「いいじゃないか。おかげで俺も、君も助かったんだ。」
基本フレームがほぼ共通だったから成せた技とも言える。
「翔……私達を撃破した機体だけど。」
「どうした?」
「何だか、翔を狙ってるようだったの。」
「そうか……。」
「気をつけてね、もうあんな思いは嫌だよ。」
「怪我人は自分の心配をしろ。」
泣きそうな珠香に翔は笑顔でデコピンをした。
「痛っ!?」
「心配したのはこっちだっつーの。」
「ごめん……。」
「安心しろ、ちゃんと仇は討ってやるさ!」
「……うん!」
二人の空間が生まれそうになり、動こうにも動けない黒岩は一人苦笑した。
―「体勢を整えたら、再び仕掛けるぞ!」
敵艦内では大急ぎで作業が行われていた。
「待っていろよぉ、お前は俺が絶対に潰す。」
男が投げたナイフが自室のモニターに移るゴーバトラーに刺さった。
ぼんっ!とモニターがスパークして弾ける。
「……しまった。」
男は、冷や汗を流し途方に暮れた。
珠香:……。
時羽:orz
ミル:orz
時羽:また出番が……。
ミル:ありませんでしたね(汗)
珠香:あってもこれは酷いわ。
時羽:てか前回の予告の光って何の事だったのかしら。
ミル:次回に持ち越しだそうです。
珠香:気分を変えて次回予告よ!
時羽:そ、そうですわね!
三人:コホンッ!
ミル:敵の猛攻に、しだいに押されていく翔君達。
時羽:物量に劣る私たちに勝機はあるのか!?
珠香:次回、天翔の逢翼。宇宙を翔ける不死鳥!
作者:梅雨ごろには掲載したいなぁ……。
三人:……気長にお待ちいただけると幸いです!(滝汗)
四月二十五日、某所にて……。
時羽:……さて、お仕置きタイムですわね。
ミル:か、覚悟してくださいね(苦笑)
珠香:腕が鳴るわぁ。(笑)
作者:お助けー!?(逃亡)