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天翔の逢翼  作者: Nacht
32/42

第二十一話:繋がる記憶

番外編?そんな物は無かった事にしてください(苦笑)

―翔が帰ってきた翌日


「っ……!?翔様!」


台所に入ったテスラが、敗北感に打ちひしがれ、膝をつく。


「ん?あっ……おはよう、テスラさん。」


翔が何食わぬ顔でポテトサラダを作っている。


「翔様……私達の仕事を取らないでください。」


「と言われても、訓練の習慣で早起きになっちゃったからなぁ……。」


翔が苦笑しながら答える。


「にしても早過ぎです!今何時だと思いますか?」


「んっと……6時半?」


しかし、翔が見た時計は針が動いていなかった。


「あれ?」


「今は6時です。」


テスラが溜め息をつく。


「あれ〜?なら、これ終わったら電池変えないと。」


そう言いながら次の料理の準備に取り掛かる。


「あっ!後は私がやりますから、翔様は……。」


不意にテスラが翔の腕を掴んで外に引っ張り出す。


「えっ、ちょっ!?テスラさ〜ん?」


「いいですから、授業に備えてお休み下さい!」


「ぶー。」


翔は渋々自室に行った。




「えーん、えーん。」


何処かで聞いたことのある声……。


「だれかいないのー?」


それもそうか、泣いているのは私なのだから。

私のご機嫌をとり、お父様に取り入ろうとする大人達が嫌でパーティー会場から飛び出した。そして迷子になったなんて、今の私からでは考えられない……はず。


「どうしたの?」


そう、あの時は彼にこんな風に声をかけられた。


「えーっと、その、何でもありません。」


そう、あの時は迷子になった理由よりも、泣いていたことが恥ずかしくなって慌てて取り繕った。


「あのさ、よかったら……一緒に遊ばない?」


その男の子は今まで会って来た他の大人とは違う、純粋な心で私に手を差し伸ばしてくれた。


「えっ……えぇ!」


私はそれが嬉しかった。


「さぁ、行こっ!」


男の子が私の手を引っ張って走り出す。


「あ……あのっ!」


「どうしたの?」


「その……何でもありません。」


名前を聞く勇気がなかった……あの1日だけしか会えなかった彼。それでも、私は彼の事を忘れられない。


「そっかぁ。あっ、もうすぐ僕の秘密基地だよ!」


その眩しい笑顔が、今でも脳裏に残っている。


「はっ!?」


そして、私は飛び起きた。


「今の夢は……?」


今でも彼の事が忘れられない。翔様に心惹かれている今も……。


「はぁ……。」


あの人達……大空珠香や、王女に比べて私が積極的に成り切れてないのは……。


「あの子は……今どこにいるのかしら……。」


多分、彼に対する思いが残っているから……。



―『いただきます!』


食卓に着き、皆が声を揃えて言う。


「翔が遅刻しない生活っていいわねー。」


珠香がお味噌汁を飲みながら言う。


「うるさいな……もう、昔の話だろ。」


翔が卵焼きを摘みながら答える。


「いっただきー。」


そして、それを大地が横から掠め取っていく。


「行儀が悪いぞ……。」


「気にしない、気にしない。」


ミルファーナがふと疑問を口にする。


「翔君って昔は寝ぼ助さんだったのですか?」


「寝ぼ助って……まぁ、そうだったけど。」


「へぇ〜。想像できな……あっ、ごめんなさい。結構簡単に想像できてしまいました。」


「酷いっ!?」


『あははっ。』


「まぁ…昔も今も芯の部分はしっかりしてるけどね。」


ぼそっと珠香が呟く。


「ん?何か言った?」


「いいえ、ご馳走様ー。」


そう言って、珠香は食器を持って台所に消えて行った。



―「よっ!時羽、おはよう。」


いつもの様に翔達は通学路で時羽達と合流した。が、この日は、いつもと少し変わっていた。


「……。」


「あ、あれ?」


「おはよう、翔。何だか今日は、朝からお嬢様の様子が少し違うんだ……。翔は何か知らないか?」


小九郎が珍しくきょどっているのが見て取れる。


「う〜ん……皆目検討もつかないな。」


「なら、本人に聞けばいいじゃない。」


珠香が翔を突き飛ばす


「わわっ!?」


「あっ……!」


そのまま時羽に抱き着く。


「きゃっ!?あっ……翔様、おはようご……。」


「おはよう、時羽。どうしたんだ?」


「ごめんなさい!」


時羽は翔を突き飛ばす形で離れ、そのまま走って逃げた。


「おい、待てって!」


「お嬢様!?」


しかし、時羽は狭い路地に入り込み、姿をくらましてしまった。小九郎もその後を追って、何処かへ行った。


「何が何だかわからないな……。」


残された翔達は肩を竦めた。



―「……はぁ。」


何と言う失態だろうか。翔様にあんな態度をとるなんて。


「……嫌われてしまったかしら。……はぁ。」


どうしよう……もう、どうでもいいかな。


溜め息と葛藤を繰り返し時羽は街をさ迷う。


「……煩いですわ。」


……はい、すいません。


「全く……。」


再び、深い溜め息をつく時羽だった。



―「お嬢様!!」


小九郎が発信機を頼りにたどり着いた所は、池だった。


「此処は……まさか入水を!?いけない!」


慌てて池に飛び込む。


「良い子も悪い子も真似したら駄目だぞ〜。」


そのまま素潜りで捜索しはじめる。


「もごこご〜!(※お嬢様〜!)」


一方、池の底には発信機着きの携帯電話が静かに信号を発信していた。



―一方、時羽はさ迷っている内に、路地裏にたどり着いていた。


「あら?……あらら?」


辺りを見渡しても、見覚えが無い。


「携帯は……あっ、さっき池に……。」


冷静に見ると、絶望的な状況である。


「兄貴!?見てください!」


「何だよ……あぁぁぁっ!?あいつは!」


こういう時に限って悪いことが重なるものらしい。


「……?」


「北条のお嬢様じゃないか!」


「ん……どなたかしら?」


「覚えてねぇ……だと!」


「あなたのような頭の悪そうな男は存じませんが?」


「俺はな、お前の道楽に付き合わされて大恥をかいたんだよっ!」


「道楽?」


「これまで忘れたとは言わせねぇ、あの格闘大会だ。」


「……ああ、翔様にやられたあの男ですか。」


※知らない人、忘れた人は番外編を見てねっ!


「いい機会だ、お前を使ってあいつを呼び出してやる。」


「どうするつもりですの?」


「病院送りぐらいにしておくか?」


男が下品に笑う。


「お嬢様!?」


ようやくSPが時羽を見つける。


「ちょうどいい所に来たな。翔だったか、奴に伝えろ。港の倉庫に一人で来い、とな。」


そういい捨てると男は時羽を抱えて走り去った。


「きゃあぁぁっ!!」


残されたSPは仕方なく翔達に連絡をとることにした。



―「……はぁ。」


話を聞いた翔は、大きな溜め息をついた。


「翔、どうするのよ?」


珠香が問う。


「俺が一人で行くしか無いだろう。」


「危ないよ!絶対罠だって。」


予想通りの答えに珠香は反論する。


「でも、俺は時羽を放ってはおけない。」


そう言って、翔は部屋から飛び出した。



―一方


「嫌っ!今すぐ私を離しなさい!」


裏路地を男達は走っていた。


「兄貴!皆集まって来るみたいですぜ!」


子分が携帯を閉じながら言った。


「これで、あいつにやり返せるぜ。」


男は再び下品に笑った。


-「ここの辺だよな。」


翔は港のすぐ近くまでやって来た。


「倉庫って言ってたよな。」


取り敢えず使われていそうに無い倉庫を探してみる。


「あれか……?」


目星を付け、翔は再び走り出した。



―「はぁ……はぁ……。」


ようやく、翔は指定された倉庫にたどり着く。


「遅かったじゃねぇか。」


倉庫の中には50人ほどの武器を持った男達と……


「時羽!」


手足を布で縛られた時羽がいた。


「翔様っ!私に構わず、逃げて下さい!」


「そんなこと出来るかよ!」


構わず突入する。


「今日はロボが出ないから俺が頑張らないといけないんだよ!」


『!?』


「翔様!それは言っては駄目だったのですが……。」



……そんなこんなで後編につづ……。



「はぁぁっ!」


「ぐへっ!?」


翔のパンチで子分の一人が気絶した。


「おい!?後編まで待てよ!」


「問答無用!」


騙し討ちとは言え、翔の的確な攻撃は、チンピラ達の数を確実に減らしていった。


『逝けよやぁぁぁっ!!』


多方向からの攻撃と言ってもチンピラ程度の動きだと、政隆の暇潰しに近かった特訓を経た翔にとっては赤子の詳しいお遊戯に等しかった。


「なにぃ!?片手で捌いているだと!!」


気が付けば、翔は半分以上のチンピラを気絶させていた。


「な、何なんだよあいつは……。」


時羽を監視していた男が、一瞬だけ隙を見せた。


「そこだ!」


翔はその男の顔面に空中回転回し蹴りを食らわせた。


「ぐはっ!?竜巻せ……ガクッ。」


「時羽、逃げるぞ。」


「は、はいっ!」


そのまま翔は時羽の膝と背中を抱えて走り出した。


「あっ!待て!!」


「これ以上付き合ってられるか!」


お姫様だっこをしたまま翔達は逃亡した。



―「待てぇ!!」


追い掛けて来るチンピラ。時羽を抱えている翔は圧倒的に不利だった。


「時羽、ごめん。」


曲がり角で一瞬止まった時、時羽が翔から降ろした。


「さぁ、行こう!」


今度は時羽の手をとって半ば強引に引っ張る感じで走り出した。


「あっ……。」


時羽はこの光景に見覚えがあった。


「次はこっち!」


そして、次の曲がり角を曲がった時。


「いねぇ……何処に隠れやがった?」


翔と時羽は姿を消した。



―『はぁ……はぁ……。』


翔は小さな公園に来ていた。


「こ……此処なら、あいつらも……来ないだろう……。」


息絶え絶えの翔は言った。


「あいつらに……連絡するか。……あれ?圏外だ。時羽、どうする?」


「……。」


公園に着いてから時羽はずっと黙っていた。


「時羽?」


「此処は……いえ……そんな……まさか……。」


「時羽!!」


「はいっ!?……翔様……此処は?」


「此処は……俺の秘密基地だ。……昔のなっ!昔の。」


秘密基地という単語を使うのが子供臭くて翔は照れていた。


「秘密基地……。」


頭の中であの夢の光景が駆け巡る。


「俺が記憶を無くしても覚えていた場所なんだ。きっと何か大切な事があったんじゃないかな……。」


「……翔様。」




「きっと何か大切な事があったんじゃないかな……。」


まさか……翔様があの時の子?


「……翔様。」


「どうした?」


私はふとした疑問を口にした。


「此処は何処?」


「公園。」


いやいや、それは見たらわかりますって。……あっ!?


「そうだ。」


「?」


「翔様……少し手伝って下さい。」


ここがあの公園なら……。



―翔と時羽は一際大きな木の根本を掘っていた。


「あっ……。」


時羽が何かを見つけた。


「あった……。」


土の中から錆びた缶を取り出す。


「何それ?と言うか、ここを知ってたのか?」


「大切な……思い出です。この場所も含めて……。」


愛おしむように缶を抱く。


「翔様、そろそろ帰りましょう。」


「あ、あぁ。そうだな。」




今日は散々だったが、それ以上の収穫もあった。


「そう、あの時……。」


私は缶の蓋を開けた。


「私達は……。」


中に入っていたのは二枚の紙切れだった。


「お互いの似顔絵を描いた……。」


上の方にある紙は見覚えがある。それもそうか。


「こっちは私が描いたものね。」


私はもう一枚の紙を見た。


「確か裏に名前を。」


裏に書いていた名前は。


「あっ……。」


まかべしょう。


「翔……様……やっぱり。」


私の初恋、もう会えないと思っていた。繋がっていた、私とあの子……翔様は。

そう思うと無性にうれしくて仕方が無かった。


「……よしっ!」


お父様……ごめんなさい。



―二日後


「あー……お前等に新しいクラスメイトの紹介だ。」


面倒臭そうに浩昭が言った。


「失礼します。」


『……何ぃーっ!?』


そこには、時羽が共学部の制服を着て立っていた。


「あー。まぁ、お前等も知っていると思うが。北条時羽だ、皆仲良くしてやれよ。」


「皆さん、よろしくお願いしますね。」



―休憩時間


「大空珠香。」


「何よ。」


「私、負ける気はございませんので。」


「言ったわね。」


「えぇ。」


ふふふふふとお互い怖いぐらい笑い続けた。


続く。

時羽「……。」

珠香「……。」


時羽「何故私たちが?」


珠香「さぁ?」


時羽「あの作者は?」


珠香「これ……。」


時羽「なになに、一身上の理由で……後書きを……ボイコットですってぇぇぇぇっ!?」


珠香「私たちに任せた!って言って、さっき何処かに逃げた。」


時羽「こんな作者で大丈夫なのかしら。」


珠香「取り敢えず、次回予告に行こうよ。」


時羽「では……翔様と私達は束の間の平和を過ごしていました。」


珠香「でも平和な日々はそんなに長続きせず……。」


二人「次回、天翔の逢翼。"新たなる戦いへ!"」


珠香「掲載予定は7月上旬予定です。」


時羽「次回もまた見てくださいね。」


二人「よろしく~。」


六月某日。某所にて収録。

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