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天翔の逢翼  作者: Nacht
30/42

第十九話:木星の決戦

ようやく提供できました。第十九話です。

初見の人は出来れば最初から読んでいただけると嬉しいです。

―「…ここは…?」


翔は光の中で再び目覚めた。


「ん~…やっぱり、死んだ後って暇なんだな。」


と言っても時間が流れているのかも定かではない。


「あいつら…無茶してなきゃいいけどな。」


お前には言われたくないと言われそうだなと思い、翔は苦笑した。


「まぁ…死んじまった以上、俺にはどうしようもないか…。」


翔は、また光に身を委ねた。



―北条家宇宙ステーション


「艤装、各機体の搬入を含め、全作業完了しました。」


「わかった、部隊に召集をかけろ。」



―数分後、ブリーフィングルーム


「諸君、遂に敵の位置が判明した。」


ファフニールのパイロット達が一斉に息をのむ。


「遂に…来たか…。」


「諸君等には我社が建造した最新鋭艦ドラグナーズフォートに搭乗し、木星圏へ向かってもらう。」


「木星だって!?」


「そうだ、アヤガン軍が提供してくれた、ストリーム・ドライブの技術と、ゲートの解析で得られたデータを元に開発したワープを使う。」


「噂の長距離ワープか…。」


「正確性は保証する。しかしエネルギーチャージに時間がかかる。一度行ったらしばらくは戻れないだろう。」


勇一郎がそこまで言ったところで、政隆が口を開いた。


「本作戦は事が事だけに、自由参加とする。参加する意志が有る者のみここに残れ。」


誰も立ち上がらない。


「本作戦において大切なのは生き残ろうとする意志だ、何があっても最後まで諦めるなよ。」


『了解!』



―「大空。」


政隆が珠香を引き留める。


「はっ、何でしょうか?」


「死に急ぐなよ。」


すべてを見透かしたような一言だった。


「大丈夫ですよ。」


はっ、とした表情もつかの間、珠香は静かに微笑んだ。


「翔が助けてくれた命、無駄にはしません。」


「…そうか。」


「はい。」


「引き止めて済まなかった、準備に戻ってくれ。」


「了解。」


走ってブリーフィングルームを去る珠香を見ながら政隆は呟いた。


「ふっ…。翔、私もお前に負い目が有るのかもしれないな。」



―「ゲート起動確認、システム同調開始。」


「次に帰って来れるのは何ヶ月後かな…。」


「松ちゃんがごまかしてくれてるとは言え、いいのか?」


「何が?」


「親に何も言ってないんだろ?」


「大丈夫、余計な心配かけたくないから。」


「ふーん、そうか。」


「そろそろ、ワープするみたい。」


異空間に飛び込むドラグナーズフォート。


「武運を祈る。」


アーカス・ナカランからロームが敬礼した。


「こちらの守りは任せてくれよ。」


浩昭も学校の屋上から宇宙を見上げている。


「ドライブ・イン。」


オペレーターが告げると同時にドラグナーズフォートの反応が地球圏から無くなった。



―「増援が来たか…。」


木星圏にデバステーター軍の一個師団が現れた。


「ふむ、これだけあれば十分だろう。」


「補給が済み次第、地球へ飛ぶぞ。」


「指令!」


観測員が驚きの声をあげる。


「何だ、騒々しい。」


「エネルギー反応増大。この数値は…恐らく長距離ワープかと…。」


「そうか、奴らめ我々に気付いたか。」


「どうされますか?」


「全艦移動開始。愚かな劣等種など叩き潰せ。」


「はっ!」


デバステーター軍の艦隊が移動を開始した。



―月ゲート基地


「ローム指令!」


「何だ?」


「先程月面巡回部隊が帰還したのですが…。」


「何かあったのか?」


「こちらに来て下さい。」


ロームは言われるがままに付いて行った。



―月ゲート基地格納庫


「これは…まさか…そんな馬鹿な…。」


格納庫に鎮座していたのは、紛れも無くゴーバトラーの残骸だった。しかし…。


「上半身は?」


「ありません。見つかったのはこれで全てです。」


クレーンで吊された腕、固定用アームで保持された腰部および左足、激突の衝撃でジョイントが壊れたのか別の位置から見つかった右足。しかし上半身だけがごっそり無くなっていた。


「脱出装置もOTZユニットも見つからなかったのか?」


「残念ながら…。」


「そうか。」


そう言ってロームは再び残骸に目を向けた。



―ドラグナーズフォート


「間もなくドライブ・アウトします。パイロット各員は非常時に備えて機体内で待機してください。」


ブリッジオペレーターが全員に指示を出す。


「いよいよね…。」


パイロットスーツに着替えた珠香がバイセイバーの格納庫へ向かう。


「絶対に生き残ってみせる!」



―格納庫


「システム起動確認。航宙管制、火気管制、項目017から188までALL Green…。」


手早く起動を始め、機体のチェックをしていく。


「各員、調子はどうだ?」


政隆の質問に終わった者から答える。


「ウイングス1、撃銃夫、問題ありません。」


「ウイングス4、バイセイバー…行けます。」


「ウイングス2、フェアリス、大丈夫です。優太、まだなの?」


「出来てるよ。ウイングス3、ボスタヌフ、いつでもどうぞ。」


「A-1小隊準備完了です。」


大地、珠香、優香、優太の四人はASSAULT(突撃)小隊の先陣を務める。


「そろそろだな…。」


オペレーターが艦内に放送する。


「ドライブ・アウトまで…3…2…1…。」


空間が歪み、そこからドラグナーズフォートが現れた。


「通常空間に出ました。」


「索敵班。」


「お待ち下さい…。…うそ…でしょ…。」


「どうした、報告は?」


「レーダーに反応…。推定機数…10万…予想を大きく越えてます!」


「何だと!」


「総員第一種戦闘体制!繰り返す、総員第一種戦闘体制!」



―「やっぱりこうなるわよね…。」


珠香が操縦席で溜息をついて余計な力を抜き、顔を叩いて気合いを入れ直した。


「まぁ、長距離ジャンプで接近したらこうなりますよね。」


この部隊では、各機体につき一人のオペレーターが配備されている。


「アルちゃん、気合いは十分?」


「勿論です!」


本来は戦闘毎にパイロットとオペレーターの組み合わせは変わるので、お互いが誰だか分からないようになっている。…はずだったのだが。


「いつもありがとう。私を助けてくれて。」


始まりは確かに偶然だった。パイロットとオペレーターを結ぶ感応装置。これにより、シームレスに情報を共有する。お互いが知り合いであると、余計な情報まで行き来してしまうことを除けば、このシステムはかなり有用だった。


「いえ、あなたが無事でいることは、主の望みでありますから。」


「アルちゃん…。」


初めて繋がった相手との共通点、『翔』の存在がお互いを認知させていた。


-私たちのために身体を張ってまで守ってくれた彼に報いたい-


珠香は翔の代わりに戦う事で、アルはその珠香をサポートし、生き残らせる事でそれを成し遂げようとしていた。

そのためにアルは自分の能力をフルに活用し、感応装置を常に珠香とリンク出来るように細工をした。


「そろそろ、私たちの番ね。」


「"いき"ましょう。」


バイセイバーが、漆黒の宇宙へ電磁カタパルトで射出された。



―「主砲…撃てぇ!」


ドラグナーズフォートから放たれた極太ビームがバレントの塊を焼滅させていく。


その火線の隙間をくぐったバレントの部隊がミサイルを放つ。


「対空防御!」


各所に配置された対空機銃がミサイルを迎撃していく。


「ミサイル発射菅2番から8番まで、撃てぇ!」


スプレッドミサイルが討ち漏らしたバレントを次々と火の玉に変えていく。



―「うひゃー凄いな。」


バレントからアサルトナイフを引き抜きながら、大地が感嘆した。


「センサーに感…。…っ!?気をつけて!新手よ!


空間を捩曲げて、無数のストラーグが現れた。


「あの人型がこんなにも…。」


A-1小隊は機体をストラーグに向かわせた。


「ウイングス1、突撃する!援護は任せた。」


撃銃夫がアサルトナイフを構え、加速する。


「ウイングス4、了解!」


バイセイバーがリボルキャノンを取り出し、狙撃体勢に移行する。


「転移攻撃に気をつけろ。」


ボスタヌフが(スタッフ)を構える。


「はいはい、大丈夫だって。」


フェアリスも剣を引き抜く。


「行くぞ!」


『了解!』



―バキンッ!という音をたてて、アサルトナイフが折れる。


「ナイフ、ロスト。」


掌撃王がアラートを告げる。


「ウエポンセレクト、機兵用82式斬撃刀っと。」


「了解。」


追加兵装の背部ウエポンラックが稼動し、刀が肩口まで移動する。


「右から来ます。」


「よしっ!…そこかぁ!」


刀を抜きながら接近してきたストラーグを横一文字に真っ二つにする。


「しかし、こう数が多いとなっ!…こっちがじり貧だせ。」


「120ミリもそろそろ残弾がっ!」


「こちらも後1マガジンだ。」


「リボルキャノンも砲身が限界!…っきゃあっ!?」


バイセイバーが砲撃型バレントの攻撃でバランスを崩す。


「珠香っ!?」


撃銃夫がフォローにまわろうとするが。


「警告!転移反応!」


「しまっ…。」


後ろから現れたストラーグに背中を切り裂かれる。


「ぐああぁっ!」


「警告…被害甚大…、脱しゅ…つを推…奨し…ます…。」


「仕方ないか…くそっ!ハッチが開かない!」


コックピットハッチも歪んで開かなくなっていた。


「大地!」


撃銃夫を沈黙させたストラーグがバイセイバーに向けて爪を振り上げ接近する。


「きゃあぁっ!?」



―「…ん?ここは?」


翔は今までとは違う感じに気が付き、目を覚ました。


「何処だよここ…。」


「ここは狭間の世界…。」


「っ!?」


どこかで聞いたような声がした。


「こっちだよ、こっち。」


声のする方に向くと、少女が立っていた。


「ア……ル…?」


アルに似た少女は無言で微笑んだ。



―オペレータールーム


「アルちゃん!?」


「だっ…大丈夫です。」


不意に頭を抑えアルが苦しむ。


「あ…ぅ…。」


力無くアルは意識を失った。



―「機は熟したよ。」


「何…?」


「見て。」


翔の前に戦場がAー1小隊の窮地が映し出される。


「大地!皆!」


「あの機体にはあなたの大切な人が乗っています。」


少女はバイセイバーを指し示す。


「まさか…!?」


翔はこの世界に来た直後の出来事を思い出す。


《ねぇ、翔…。私、決心したよ。》


「くそっ!そういうことかよ。」


「…あなたに強い意志があるなら…。」


「何だよ。」


「世界を変えたいと望む思いがあるなら。」


少女の後ろに影が現れ、それが形を成してロボットになる。


「剣は…この子は、きっとそれに応える。」


「…ゴー…バトラー…。」


少しずつゴーバトラーに近づく。


「行くの?行ったらまた戦いの日々だよ?それでもいいの?」


「愚問だな!」


翔は少女の横をすり抜けてゴーバトラーへと走った。


「ふふっ…そうだよね。後は頼むね…。」


少女は微笑みながら翔を見送った。


「あ…そうだ。これも付けちゃう。今のあなたなら使いこなせるはずだよ。」


少女は光に包まれ、そこに新たな機体が現れた。


「なっ…!?」


ゴーバトラーはまるで意志を持ったかのようにその機体の上に乗った。


「使えってことだよな…。よし、待ってろよ皆!」



―「きゃあっ!?」


《翔…助けて!》


パニックに陥り、今はいない翔に助けを求める珠香に向かって突撃するストラーグ。


「珠香!」


ぴぴぴぴっ!


「これは…転移反応?…早いっ!?」


「優太!気をつけて!そいつこのままだと珠香にぶつかる!」


「二人で止めるぞ!」


「わかったわ!」


転移直後から戦場を駆け巡る遥か彼方からでも見える蒼い光。


「蒼い…まさかね…。優太。」


「わかっている、識別信号確認。…えっ?馬鹿な…。」


「どうしたのよ?えっ…嘘…ありえない。」


『ゴーバトラー!?』


驚く二人を抜き去りゴーバトラーがバイセイバーに向かってさらに加速する。


「見えた。」


ゴーバトラーがビームキャノンを構える。


「ターゲット・インサイト!…発射!」


ビームがほとばしり、今まさにバイセイバーに爪を突き立てようとするストラーグを正確に撃ち抜く。


「な、何?一体…。」


「大丈夫か?珠香。」


スピーカーから聞こえる声。聞き間違えるはずがない。


「翔!」


バイセイバーを庇うように、蒼い光を放つ機体はストラーグの前で停止した。



続く



―次回予行


翔です。

ついに俺、復活!

このまま勝利を掴んで見せる!


次回、天翔の逢翼

帰還。


このまま最後まで突っ走るぜ!



おはようございます、こんにちは、こんばんは。お久しぶりです(滝汗)なはとです。

またまた中旬まで伸ばしてしまい、すいませんでした。

さて、ようやく翔君復活です。長いこと彼の事を書いてない気がするからか、キャラを軽く忘却気味です。

それはさておき、次回予告からで分かるかどうか微妙なので(もう少し文章力があれば…orz)ここでも告知。次の話は第二部(だったのかよ!)の最終話にあたる話になります。

もしかしたらこれの続きに加えて新しい作品に手をつけるかもしれませんが、良かったらそちらも読んでいただけると嬉しいです。


では、次回の更新予定日ですが三月下旬…すいませんほら吹きました。四月上旬、最悪でも四月中にはアップできるようにしたいと思います。

では、次回も天翔の逢翼をよろしくお願いします。(O^O)ノシ

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