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天翔の逢翼  作者: Nacht
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番外編第一話:占いとお嬢様 (前編)

第一話の後書きに書いた通り、翔と時羽の出会いの話にいろいろと色を付けました。

―「好きになるなら強い漢を好きになれぃ。」


それが御祖父様の口癖であり遺言だった。だから私は強い“男”を捜していた。しかし私の心を熱くさせる殿方は見つからなかった。



―俺は真壁翔。この前晴れて高校に入学した。そして新しい生活に期待を抱いていた…。


「今年もこの季節になったか。」


と、ぼやいているのは大場カイト。中学の三年間も常に俺と同じクラスだった。日本人の母とフランス人の父のハーフで金髪だ、昔はそれで苦労してたらしい。顔もなかなかでモデルもしたことがあるとか。多少キザな所もあるが、キャラが軽いからだろうか、男とも女とも仲が良い。


「何がだ?」


「まあ見てみろ。あ、また撃沈か。可哀相に大泣きしてるぜ。」


言われるがまま窓の外を見てみると、見知った顔が男という男に声をかけられていた。しかも、後ろには長蛇の列が出来ている。声をかけられているのは、大空珠香。俺の幼なじみで、まあ俗に言う腐れ縁って奴だ。成績は優秀だったはずなのに、何故かもっと上の高校を受けずにここを受けたいわゆる変わり種だ。だが、あれの状況は異常だろう。


「なっ、なんたありゃ!」


思わず声を上げてしまった。


「珠香さんに一目惚れした主に先輩やこの違う中学にいた奴らが交際を申し込みにいったのさ。肩を落としたり、泣いている奴らはみんな撃沈したわけ。」


「主に?」


「そう、俺たちの同級達の大半はもう去年の内に玉砕している。…もちろん、俺もな。」


そういって涙を流すカイトをよそに、俺は珠香を見ていた。俺の中でのあいつ……強気で横暴、元気が有り余っているまさに台風とか暴風みたいな奴だ。


「……そんなにかわいいか?」


ポロっと疑問をこぼしてしまう。


「ばっ、ばかな!お前は今現在652人いる“珠香さんファンクラブ”を全員敵に回したぞ。ちなみに創設者であり会員No.001はこの俺だ!。いいかよく聞け!珠香さんは素敵だ。くりっとした眼もかわいい。スタイルも抜群!顔立ちも整っていてセミロングの髪にリボンのアクセントもよく似合っていてサイコー!さらにはよく気が回る。誰にでも優しい。つ・ま・りだ、モテるのは仕方がない、いや必然である。」


口ってこんなにも回るものなんだと思いつつ俺はある事に気がついた。


「652人って。前の中学の男子よりも多いぞ……いくら先輩を含めても……はっ‼……なあ、もしかして毎年の卒業式がものすごい暗かったのはこういうわけだったのか?」


「ああ、そうだぜ。皆コクって玉砕さ。……って今更かよ!」


「ほぉ……恐るべき奴だな。」


「はあ……おまえぐらいなもんだぜ、あの学校の彼女無しで珠香さんに告白していない変わり種なんてな。」


「へぇ……そうなのか?というか、失礼な奴だな、否定はしないが」


「ふぅ…、そうなの。」


「ひ…まあいいか。まあ松ちゃんも来たことだしそろそろ珠香も帰ってくる頃だろう。」


「あー……疲れた。」


噂をしたらなんとやらなのか。珠香が教室に入ってきた。


「お疲れ様でした、珠香さん。」


「ホントに疲れたわ。はあ、どうにかならないのかしら。そうだ。翔、今日空いてる?」


「別に空いてるが、またなのか?」


「そう!出来れば今日もよろしく。」


「実際嫌だって言っても無駄だろ?」


「うん!」


「うわ、はっきりと言ったよ、この人。」


「いいじゃん。こんな美人とデートできるなんて幸せでしょ~。」


珠香がしれっと言いながら授業の準備をする。


「じゃあ、カイトの奴でも誘ってやればいいじゃん。あいつなら喜んで荷物持ちでもするだろう。って、あれ?なぁ、カイト。何泣きながら倒れてるんだ?」


「神様は不公平だ何でこんな奴が。うう。お前なんか耳元で囁き殺されてしまえばいいんだ。」


「翔じゃなきゃ意味がないもん。」


珠香が小さくつぶやいた。


「へ?」


「べっ、別になんでも無い!とりあえず付いて来なさいよ、分かったわね。」


俺は観念して答えた。


「はいはい。」


そんな話をしていたら松平がHRの始まりを告げた。


「おーし、お前らHRを始めるぞー。」



―入学したばかりなので授業もまだ始まってなく、部活も入部してない。HRが終われば今日はもう解散だった。


「あーようやく終わった。」


「さあ、行くわよ、翔。」


「はいはい。じゃあな。カイト、また明日。」


「けっ、お前とはもう会いたくないよ。」


「まぁ、死なないようにはするから無理だな。」


「うるせー馬ー鹿!」


今日は原宿で買い物らしい。が何でも異種格闘技の大会があるらしく、場所に微妙に似合わない男達も何人か見かけた。ベンチで一休みしているとアイスをせがまれたので仕方なく買いに行く。


「はあ。」


「お兄さん。あなた、面白い相を出してますね。」


突然女の子が話しかけてきた。


「よかったら今後の運勢を占いましょうか?なんてったって私は…。」


「いや、いい。」


明らかに怪しい。そう思い俺は退散しようとした。


「何でですか!ただですよ。」


「俺、占いとか信じないから。」


「エーン。あなたも友達みたいな事言うんですね。」


いきなり泣き出す少女に、俺はどうしようもなくなってしまった。


「わ、分かったから。聞くから泣き止んで!」


「はい、では。……桜舞う中あなたにドキドキな出会いが、でもそれは大いなる争いと不幸の始まり、バッドスポットは学校……です。」


「あの……それだけ?良いことは無し?」


「はい!それだけです。さよーならー。」


「えー!ちょっと。待ってくれー。」


「次の不幸な人が待っているので待てませーん。」


「ちょ!?」


不吉な一言を残し少女は去っていく。


「うーん……とりあえずアイス買うか。」


しかし俺はこの漠然とした不安感を拭い去れなかった。



―「遅い!」


ごすっ!!


「ぐはっ!」


「もう、あまりに遅いから心配したのよ。」


「そ、それが人の鳩尾に鉄拳を叩き込んだ奴が言う事か?」


「まさか、変な女にちょっかいとか掛けてたんじゃないでしょうね?」


惜しい!ニアピンですよ。珠香さん。


「うーん、でも翔の事だからどっちかと言うと絡まれたのかしら?」


おっとまさかの一転がりでホール・イン・ワン!でも言ったところ信じてもらえないだろうな……。まぁ仕方ない。


「まあそんなところかな。」


「ふーん。じゃあ次のところに行きましょ。」


「次は?」


「今、巷で有名な占い師の所よ。」


「げっ!」


さっきの予感的中かな?


「何?」


「いや……なんでも。」


「変なの。」



―二人は裏路地の寂れた占い屋の前についた。


「……有名な割に寂れてるな。」


「……ふ、雰囲気が出てるのよ……多分……。」


「……人もいないし。」


「……空いてて、ラッキーということで……。」


ギイィィィ。


「いらっしゃいませ。」


中にいたのは20前半ぐらいの綺麗な若い女の人だった。


「あの、占ってほしいのですが。」


「分かりました。ではお嬢さんこちらへ。何を占いましょうか?」


「れ、恋愛運でお願いします。」


「ふふふ。彼との?」


「……はい///」


※小声で話しているため翔には聞こえてません。


結果は聞こえなかったが、珠香の顔を見るとそんなに良い結果とは言えなかったらしい。少し難しい顔をしている。


「そこの貴方はどうするの?」


「俺もお願いします。今後の運について教えてください。」


「はい。では、この水晶を見てください。」


翔が水晶を見ると突然黒い渦が現れた。


「これは!」


ピシピシピシッ、パリン


「へっ?」


「貴方、近いうち、ひどい目に会うわよ。何とか見れたところは、よく考えて行動しないと、自分だけでなく、他人の一生を左右するってことだけ。」


「……マジですか?」


「ええ。……あまりに可哀相だからお代はいいわ。貴方少し前にもひどい結果を聞いたでしょ?」


「分かりますか?」


砕けた水晶を見つめながら彼女は言った。


「この子が教えてくれたから。……またいらっしゃい。占い以外でも相談にのってあげるから。」


「ありがとうございます。」


こうして俺達は店を後にした。


「……ショック。あそこの占い、こと悪い結果は100%当たるらしいのよね。」


「マジ?」


「うん。あれ?なんか向こうが騒がしいような。」


「何だろうな。」


「翔!行こう!」


「はいはい。りょーかい。」



―さっきの格闘大会が終わったらしく騒いでいるのはその優勝者だった。


「話しが違うじゃねえか!優勝したら北条のお嬢様と会えるんだろ!?」


「しかし、お嬢様が会いたくないと。」


「何故だ!」


筋肉ダルマ(勝手に命名)が執事のような男に殴り掛かった時、凛とした声が響いた。


「あなたが付き合うに値しない男だからですわ。」



「ぬぅあんだとぅおぉぉ!」


まあそんな事いったら相手も怒るだろう。その声の主に手を挙げようと拳を振り上げた。俺は咄嗟に前に出ていた。


「危ない!」


「ちっ。」


かろうじて男のバンチを受け流す。


「女の子に暴力を振るうのはさすがにアウトだろ。」


「うるせー!」


男が再び殴り掛かった。


「このっ、いい加減にしろ!」


鼻っ面に上手い具合にカウンターが入ってしまったらしく、男はダウンしてしまった。いわゆるKO勝ちである。


「ふぅ……大丈夫か?」


「え、ええ。ありがとうございます。」


相手は気が強そうだが相当な美人だった。


「もうああいった相手にあんな事言わないほうがいいぜ。」


「分かりましたわ。あの、お名前は?」


「俺ですか?俺の名前は真壁しょぉあぁぁ!」


「なぁにデレデレしてるのよ翔!」


「痛い痛い!耳を引っ張らないでくれ。」


「いいからさっさと行く。」


「わ、分かったって。じゃあさようなら。お元気で~。」



-去ってゆく翔の背中を見て彼女、北条時羽は言った。


「じい。あの方の素性を調べてください。」


「かしこまりました、お嬢様。」


辺りには桜が舞い降りていた。



―「おーい、翔、昨日のデートはどうだった。」


「デートじゃねー。……散々だった。荷物は重いし、占いはひどい結果で悪い予言を聞かされるわ、成り行きで格闘のアマのチャンピオンと闘うわ、荷物は増えるわで大変だったさ。」


「……お前か、昨日ネットを騒がせた謎の格闘家は。」


「言ったろ?成り行きだって。おっ、先生が来た。」


「お前等、授業を始めるぞ。」



―「ようやく放課後か。珠香は家の手伝いで居ないし。さっさと帰って休もう。……なんか校門のほうが騒がしいな。」


俺もカイトと校門に行ってみる。そこには黒塗りの外車があった。


「すげえあれって北条のエンブレムだよな?」


誰かが話しているのが聞こえた。


「一体ここに何の用何だろうな?」


カイトも興奮気味である。


「北条?どこかで聞いたような?」


どこかで聞いたことはあるんだが、思い出せない。だからカイトに聞いてみる事にした。


「やっぱりお前は馬鹿なのか?北条つったら世界トップの家電メーカーであり軍需産業の最大手だろうが。自衛隊のダイブンを開発した所だよ!日本勝利の立役者、世界を代表する企業だぜ。」


「ああそういえば授業でも言ってたな。まぁ何の用だろうが、俺達には関係ないだろう。帰ろうぜ。」


「お待ちください。」


「は?」


黒塗りのベンツから降りて来た黒服の男が俺を呼び止めた。


「真壁……翔様ですね?お嬢様が御呼びです。ご同行願います。」


言い終わるとすぐに他の黒服の男達が翔の両端に立って翔を車に載せた。


後には呆然と立ち尽くすカイトと何人かの男女だけが残された。


「なんだったんだいったい?」

「大変だ!人さらいだ!」

「面白くなってきたぞ。」

「またあいつか!」


一方、車の中では


「あんた達は何者で、俺をどうしたいんだ!」


「見ての通り我々は北条家のものです。あなたにはお嬢様の北条時羽様にお会いしていただく。」


「なぜ?」


「詳しくはお嬢様にお聞きください。なにしろ我々も詳しくは教えられておりませんので。」


「はぁ?マジですか。」


「本気も本気。冗談は申しておりません。」


「うう。どうして俺ばっかり。一体俺が何をした……?」


そんな俺のぼやきを無視して車は何処かへと向かっていった。


後編に続く。

まずは読んでくださって誠にありがとうございます。カイト君は本編にあまり出れないのですが、個人的には、とても気に入っています。後編もすぐに出すつもりなんでしばしお待ちください。


追記:形式変更に伴い文章の一部を変えちゃいました。

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