第十三話:最強の相棒
お待たせしました。(誰も待ってないって?)
第十三話です。
―「後方、敵二機。」
「ビームガン、スタンバイ!」
「どうぞ。」
「サンキュー!」
ゴーバトラーが、ビームを放つ
「敵機撃破。お見事です。」
「残りは?」
「一時方向に敵影十。撃銃夫と、ダイガイオーが向かっています。」
「そりゃ、出る幕は無いかな?」
「交戦開始。」
「決まりだ、もう間に合わない。」
―数分後。
「戦闘終了。敵影ゼロ。お疲れ様でした。」
「おぅ。お疲れ!」
「かなり、腕を上げましたね。」
「そうかぁ?なら、お前もかなり饒舌になってきたな。」
「そうでしょうか?」
「ああ、初めてこれに乗った頃は、淡々と言っていたのに。」
「きっと、あなたの影響です。」
「ふっ、冗談も上手くなったな。」
「ありがとうございます。」
「おっ、隊長達だ。」
刀撃神と撃銃夫が、こちらに手を振っているのが見えた。
「間もなく、合流ポイントです。」
「わかった。」
―輸送機の中
「これで、またお別れですか…。」
「どうした?」
「週末まで主とお別れなのが寂しいです。」
「寂しいって…。」
「はい。」
「お前、本当に変わったな。」
「えっ!?」
「AIが、別れを惜しむなんて聞いた事無いぜ。」
「やはり、私はおかしいのでしょうか?」
「ほら。昔なら"私たち以外のAIは会話できません"的な突っ込みを入れてくるはずなのに。」
翔がにぱっ!と笑った。
「まあ、俺は今のままの方が良いけどな。」
「あ…ありがとうございます。」
ガクンッ
「着いたみたいだな。」
「はい…。」
「またな…。」
―その日の深夜
「後は格納庫を見れば終わりだな。…ん?」
小九郎は格納庫から光が漏れているのに気が付いた。
「誰だ、こんな時間に?」
小九郎が見た時、既に光は消え、そこには何も無かった。
「あれ…?」
不意に小九郎の首筋に激痛が走った。
「ぐっ!」
薄れ行く意識の中、小九郎が見た犯人の姿は。
「女の…子…?」
小九郎の意識はそこで途切れた。
「行かないと…。」
そう言って、女の子は、光に包まれて消えた。
―翌朝、翔は。
「重い…。」
腕にずっしりと重みを感じて目が覚めた。
「すー、すー。」
「んっ?」
自分の腕に少女が抱き着いて寝ている。中学三年ぐらいだろうか。
「何だ…女の子か…。はいぃぃっ…!?」
そして、ふと、翔は少女の異変に気がついた。
「あれ、服は?」
少女は服だけでなく、履いてなかった。
「………。」
翔はようやくそこで現実に戻った。
「うっ、うわぁーっ!」
ばたぁん!
「五月蝿いぞ、翔!」
大地が、翔の部屋に入る。
「はっ…?」
ベッドの上で寝ている全裸の少女を見て大地も絶句した。
「翔…お前…マジかよ…。」
「大!誤解だ!俺は何も知らない!」
「ううん…。」
少女が目を覚ました。
「君!大丈夫か?そこの獣に何かされたのか?」
「ふぁい…。おひゃようございましゅ〜。」
「…えっと…その…。…はぁ…何か調子が狂うな…。翔、後は任せた。ちゃんと責任はとってやれよ。」
「だから俺は知らないだってば〜!」
「主、酷いですぅ〜。」
「酷くない!君は一体誰だ?どうやってここに入って来た?」
「そこからです。」
少女は窓を指差した。鍵が開いている。
「それに主、私がわからないんですか?」
「知らない。見たこともない。」
少女に上着を羽織らせ、翔は言った。
「昨日も一緒にいたのにですか?」
「少なくとも、俺を主…。」
翔の頭に答えが過ぎった。
「えっ…、お前…まさか…アルなのか?」
「やっとわかってくれましたね。そうです、私はアルコートです。」
「はあぁっっ!?」
かちゃっ!
「翔さん、朝から騒がしいですよ!…えっ。」
優太が部屋に入り、アルを見て絶句した。
「だ…誰ですか?…その可愛い子!」
「誰って…アルだよ。」
「へぇ〜、アルちゃんか。僕は光優太。よろしくね。」
「…主。彼、戦闘中とキャラが違いませんか?」
「うーん…。こっちが素だな。」
「あれ?僕の事知ってるの?」
「はい。ボスタヌフのパイロットですよね?」
「当たりだぁ。何で知ってるの?」
「優太、こいつはゴーバトラーのAIだって。」
「ははっ。翔さん、冗談が下手ですよ。」
「本当だと思うが…。そうだ、小九郎に見てもらおうか?」
そういって翔は携帯を取り出した。
「主、小九郎さんは出れないと思いますよ。」
「何故?」
「昨日、私が出たときに気絶させたので…。」
「へっ?何で?」
「騒ぎになると大変だからです。」
「なら、取り敢えず、時羽に聞いてみる。」
翔は時羽に連絡した。
「あれ?翔さん、いつの間に交換してたんですか?」
「ん〜、この前頼まれた。」
数回のコールの後、時羽が出た。
「翔様!今、そちらにも連絡しようと思っていたところです!」
「何があった?」
「小九郎が、小九郎が格納庫で気絶させられました。」
「それで…?」
「ゴーバトラーのAIが、何者かに奪われました!」
「ああ、そうか…。」
「あの、反応が薄いですね…?」
「ちょっとな。今、厄介事に巻き込まちゃって。落ち着いたらまた連絡する。」
「えっ…はぁ、わかりました。」
携帯を閉じて、翔はアルの方を見た。
「ふう…後は、こいつの事をどう説明しようか。」
―「翔ちゃん…。」
「お兄ちゃん…。」
「翔様…。」
「…翔…君……。」
翔は有りのままを話した。が、到底信じられる物ではなかった。
「と、言っても、俺も本当かどうかはわからない。」
冷たい視線に堪えつつ翔は言った。
「う〜ん。その娘の証言だけだとねぇ…。」
「やはり、証拠ですか?」
「そうね、アルちゃん。」
アルは現在、凜の服を借りて着ている。
「わかりました。手っ取り早くいきます。」
「へっ?」
「皆さん、驚かしてしまうと思います、ごめんなさい。」
どしんっ!と、何かが庭に降りて来た。
「ご、ゴーバトラー!?」
庭にゴーバトラーが降り立っていた。
「マジ?」
翔は急いで駆け上がり、コクピットの中を見た。
「本物だ、俺が置いた、家族写真の位置も変わってない。お菓子のかすも…。本当にゴーバトラー、そのものだ…。」
「主、違いますよ。よく見てください。」
ふと、翔はコクピットの後ろに空間があることに気付いた。
「なんだこれ?」
「私用のシートです。」
翔の後ろからアルが言った。
「これからは、ここであなたと共に戦います。」
「そうか…。…はい?」
「大丈夫です。これまでと変わらないはずです。」
ピロロロロッ、ピッロ〜ロロロ♪
翔の携帯電話が再び鳴った。
「時羽か…。…はい。」
「翔様!!大変です!」
「ゴーバトラーが消えた。だろ?」
「そうなんです!いきなりぱっと消えちゃって…。あれ?何で知ってるんです?」
「落ち着いて聞けよ。今、俺の家の庭にあるんだな、それが。」
「何ですって!」
「アルも一緒にいる。」
「私はさっきからいますよ。」
「取り敢えず、今からそっちに向かうから、待ってろ。」
「は、はい!お待ちしています。」
翔がゴーバトラーに乗り込んだ。
「珠香、先生に理由伝えといてくれ!」
「えっ!ええぇ!!」
「アル!早く乗れ、置いていくぞ。」
「はっ、はい!お待ちください!」
アルが、サブシートに飛び乗った。
「ゴーバトラー、出るぞ!」
ゴーバトラーが飛び立った。
「…取り敢えず…学校行くか…。」
「…はい…そうですね…。」
―北条家に向かっている途中、翔達は不信な反応をキャッチした。
「このエネルギー量は、転移ですね。」
「また、あいつらか。アル!いけるな?」
「はい!」
―「接触まで三十秒。タイプはソルジャー級、数は十。」
「雑魚だな。ショットガン、スタンバイ。」
「レディ!…どうぞ。」
「やるぞ。」
発砲と同時にデバステーターが加速した。
「早い!今までとは違うみたいだな。」
「そのようですね。ホーミング・ミサイル、セット。」
「あっ!俺の台詞。」
「ロック、…どうぞ。」
「何か釈然としないが…。まあいいか、いっけぇー!」
ゴーバトラーが、ホーミング・ミサイルを発射した。五機に命中し三機が誘爆に巻き込まれた。
「残り二機です。ビームガン、レディ。」
「おりゃあ!」
ビームガンが一機を、撃ち抜いた。
「アル!」
「はい!高周波ブレード、レディ!」
腕から出て来た柄をゴーバトラーは一気に引き抜いた。
「パワー全開!…主、いけます!!」
「ああ、これで!」
「終わりだ!」
「終わりです!」
最後の一機が両断された。
―「やっぱり、お前、アルなんだなぁ。」
「やはり、まだ疑ってましたね。」
「う〜…。まぁ、直ぐに信じれるはずが無いだろ。」
「まぁ、そうですけど…。」
「だが、あの絶妙なタイミングはアルだ、間違いない。」
「あ…ありがとうございます…。」
「さぁ、行こうぜ。」
「はいっ!」
北条家に向けて再び発進した。
―「検査の結果では、普通の女の子と変わりませんでした。」
北条家に着いて、アルは検査を受けた。
「しかし、この子は実際にゴーバトラーを操作した。遠隔から、確実に。」
「加えて真壁君の証言。信じがたいが、やはり…。」
「どうやら、彼女は本当にアルコートなのだろう…。」
―「い〜や〜です!」
「なに暴れてるの?」
「私は主と一緒にいたいです!」
「何事なの?」
「こちらに部屋を用意すると言ったら。」
「あなたといたいと、騒ぎだしまして…。」
「はぁ。駄目なんですか?」
「駄目と言いますか…その、そちらには、VIPが…。」
「ミルファーナの事?」
「はい。」
「聞けばいいじゃん。」
翔は携帯を開いた。
「義姉さん?アルが、そっちに住みたいって。でも、ミルファーナがいるから、一応確認を。」
「アルちゃんが?う〜ん…。」
「ミルファーナが嫌がるとは思わないんだけどね。」
「そうよねぇ…。」
「で、どうなの?」
「そうねぇ…。翔ちゃんが面倒を見るなら。」
「へっ…?」
「だから、翔ちゃんが、ちゃんと養ってあげれるならね。」
「いや、姉さん…。捨て犬や捨て猫じゃないんだから…。」
「主〜。」
アルが涙を流しながら翔に縋った。
「な、泣くな!わかった、わかったから!…義姉さん、わかったからよろしく頼む!」
「はいは〜い。」
「許可は下りました。アルはうちで引き取ります。」
「わ〜い!ありがとう、主。」
「承知いたしました。では、本日はお帰りください。」
「はい。…アル、帰ろうか。」
「わかりました。」
―「ふーん。それで翔ん家で引き取る事になったんだ。」
「そ。」
かちゃっ♪
「主!一緒にお風呂に入りましょう♪」
「はっ!?」
「さあ、さあ。お背中を流してあげますから。」
「いや、俺は…。」
「…翔…?」
底冷えするような珠香の声。
「は、はい…。」
「…変態…。」
珠香が、間髪入れずに筆箱からコンパスを取り出し。寸分の狂い無く、眉間に投げ付けた。その間僅かに、三秒。
「主!危ない!」
アルが衝撃波を放ち、コンパスを弾き飛ばした。
「危ないところでしたね。」
「あ、ああ…。」
「これからは、主の安全は私が守りますから!!」
「はぁ…。」
その後、翔は風呂場に引きずられている所を由紀子に発見され、事無きを得た。
「義姉さんは、悲しいです。年端もいかない女の子にあんな事をさせようとするなんて。」
「義姉さん!誤解だ〜!」
「そうですよ。私が望んで言ったんです。」
「翔ちゃん!お義姉ちゃんはそんな子に育てた覚えはありません!」
「不幸だ〜!」
世界は今日も平和だった…。
続く
―次回予告
アルで〜す。
次回は、皆でお花見に行きます。
でも、誰が持ち込んだのかお酒を飲んで大パニック!
次回、天翔の逢翼
花よりどの娘?
お楽しみに!!
…やっぱり、私が一番ですよね…?
え〜。今回も天翔の逢翼を読んでいただきありがとうございます。
祖父の葬式やなんやかんやで、慌ただしかったですが、何とか皆様にお届けできてホッとしています。
さて次回ですが、困ったことに引っ越しが控えています。身の回りの整備にどれほど時間がかかるかわかりませんが、四月の中旬から下旬には上げたいと思うので、またよろしくお願いします。