第一話:起動!神秘のマシーン
プロローグを読んだ上で読んでくださる方、ありがとうございます。プロローグを読んでいない方、もしよろしければそちらもどうぞよろしくお願いします。
―大日本統合歴2年―
―盟主国日本中央州首都某所―
―「急げ!遅刻しちまうぞ。このままじゃ遅刻回数が2桁になっちまう。」
高校2年生になっても真壁翔は変わらなかった。そして、
「あなたのせいでしょ!」
大空珠香も変わっていなかった。
やはり何人もの生徒を追い抜いて校門に入った。
「夫婦揃って今日もぎりぎりだな」
校門に入ったところで不意に二人は後ろから声をかけられた。
「翔が寝坊するからです、松平先生。」
声の主は松平浩昭。技術の教師で二人のクラス担任だ。今日は挨拶当番らしい。
翔は呆れながら言った。
「いや、珠香、突っ込むとこは別にあるだろ。」
しかし珠香は
「何のこと?……あっ、わかった!先生!まだぎりぎりじゃないですよね?5分もありますし。」
「お前って馬鹿だと思っていたけど違ったみたいだな……お前は超絶馬鹿だ!たく、俺達いつから夫婦になった!」
「ああ、そういえば。ってそこまで言う?普通。それに別にいいじゃない。」
珠香が翔に近づく。
「それとも私じゃ嫌だとでもいうの?」
そういいながら珠香は笑顔で接近してきた。怖いほど笑顔だった。
実際、その時登校して来た男子は皆、珠香を見つめていた。
対象的に翔はその笑顔に戦慄しながら。
(こっ殺される……。)
と思っていた。救いを求めて松平を見る。しかし、
(わっ笑ってる~。)
松平は傍観を決め込んでいた。
「あ……ああ……。」
翔に死の恐怖を通り越し死の覚悟までが去来した。
だが、救いの手はふいに別の方向から差し延べられた。
「おはようございます。翔様。」
北条時羽。世に名高い北条財閥のお嬢様だ。ちなみにこの国の軍需品の大半はここが生産元である。
「ちょっと邪魔よ。」
「あら。いましたのね、大空珠香。」
……言うまでもなく二人の仲は最悪だ。理由はやはり
「またあなたは翔様に迷惑をかけて、このゴリラ女が。」
「なんですって〜!」
「キャー翔様助けて。」
「あっこら!翔にくっつくな。翔もにやけてないで離れろっ!」
「なっ!ベ、別ににやけてなんかない!」
と、珠香も時羽もお互いがライバルであることを認識している、だがウマが合わない。だから喧嘩をするのだが、翔はそのことに気付いていない。ちなみに何故、時羽は翔のことが好きなのか。それはまた別のお話。
「なんと!私と翔様との馴れ初め話は無しなのですか!」
「……何に話し掛けてるの?」
その時、
“キーンコーンカーンコーン”
「HRの時間だ。三人とも遅刻だな。北条は早く女子学部にもどれよ~。」
松平がいった。
そして三人は声を合わせた。
『先生のせいでしょ〜!』
いや、違うだろう。
-終わらないものなど何も無い。それは日常でも言えることである。決まってそれらは失われてからその大切さに気付く。翔もいつまでもこんな日が続くと思っている者の一人だった。しかし彼等の日常は突如崩壊した。
「ん?」
翔は気がついた。空からこっちに降ってくる謎の物体を。
「なんだありゃ。」
翔が気づいた次の瞬間、謎の物体は校庭に向かってなにかを伸ばして来た。
「なっ!危ない。」
松平は三人を突き飛ばした。触手のようなものは地面に突き刺ささり、大きな地割れを起こした。そして、その中に
「うわー!」
松平は落ちていった。
「先生っ!!」
その声に反応したのか、謎の生物は三人に触手を伸ばした。
「!!」
反射的に翔は二人の前に出た。
翔は死を覚悟して、目をつぶった。しかし、いつまでたっても衝撃は来ない。
「翔!」
「翔様!」
二人の声が聞こえる。
目を開けると巨大な手が触手を掴んでいた。
その地割れの中から出ていたのは巨大な鉄の塊…ロボットの手だった。
「こんなのが軍にはあったのか。」
驚く翔の目の前でそのロボットはその姿を表した。
「いえ、こんな物、私の所では生産されておりませんわ。」
時羽もしらないのだから二人はさらにわからない。そしてそのロボットは翔の目の前でひざまづき胸部にあるコクピットを解放した。何故か翔はそのロボットが妙に懐かしく思った。その時、突然翔は頭の中に声のようなものが聞こえて来た。
“早く!我が主よ。”
……と。このままだと二人も危ない。そう思い、翔は機体に乗り込んだ。
「着座確認、シートベルトロック。Combat System……Stand by……。」
設定を続けているその間も、謎の生物は攻撃を続けていた。
「おいおい、早く動けよ。」
翔がレバーを操作する。
「Complete……。」
ロボットが動き出し、触手を掴む。
「何故だ?俺は……こいつの動かし方を知ってる!」
翔はコンソールの端の文字に気がついた。
「ゴーバトラー……それがこいつの名か!」
そういった時、コクピット内から声が聞こえた。
「その通りでございます。真壁翔様。」
「だ、誰だ。」
翔は狼狽した。すると声の主は自己紹介をしてきた。
「失礼しました。私はこの機体に搭載されているAI(人工知能)、アルコートと申します。アルとお呼びください。」
「……分かった。アルさん、武器はありますか。」
「真壁様、我が主。敬称は私には不必要です。武器は……これなどいかがでしょうか。」
アルはウエポンセレクターの内の一つを点灯させた。
「腕部ビームガンか、ありがとう。それにしよう。……アル、こんな感じでいいのかな?」
「はい、上出来です、主。」
「じゃあこっちからのお願い。いや、主なら命令か……?そんなかしこまった話し方はしないでくれ、こっちの肩が凝るからな。じゃあ、いくぞ。」
そう言って翔は軽く動かしたつもりだった。しかしゴーバトラーは物凄い勢いで謎の生物を上に投げ上げた。謎の生物は遥か上空へと飛んでいった。翔は反射的にその敵に向かってビームガンを連射した。弾は敵に命中し目標を跡形も無く消滅させた。
翔はその力と威力に驚愕していた。
「なんて威力だよ……。」
日常が終わりを告げたことを翔は、そして珠香たちも感じていた。
続く
読んでいただきありがとうございました。本文に書いた通り、時羽と翔の出会いの話は、番外編でも書いたときに出したいと思うので、そちらも読んでいただけると有り難いです。なお、番外編は学園ラブコメチックにしたいと思っています。多分無理ですけどね~(苦笑)