番外編第三話:ロームレポート
今回は、設定解説が主です。
面白くないかもしれませんがご了承を。
―「今回は君達が扱っている機体について、ある程度分かったから報告したい。」
春休みになってすぐ、政隆に召集をかけられた翔達第一小隊を待っていたのは、ロームだった。
「隊長。質問です。何で俺達だけなんですか?」
「まあ説明を聞けばわかる。」
今回ここに居るのは、ローム、政隆、翔、大地、優香、優太だけだ。
「早速始めようか。ところで、翔。私が初めて君と会った時、君の機体を何と言ったか覚えているか?」
「確か…その機体をこちらに引き渡してもらおう…でしたっけ?」
「…あれ?OTZマシーンって言わなかったっけ?」
「初耳です。」
「…まあいいか。Object Transform Zone(物質変換領域)発生システム、それを搭載した機体がOTZマシーンだ。星間戦争以前の技術だが、我々でも完璧な解析は出来ていない。」
「どんな力があるんだ?」
「物質の構成元素を無視して新たな物体生み出すことが出来る。例えば、空気中の窒素を変換凝縮して鋼鉄を創るとかだな。」
「なるほど、翔は武器を持っていたのではなく、創っていたのか。」
「全然気がつかなかった…。」
「オリジナルのOTZマシーンを搭載した機体は専用のAIを搭載している。発動にはパイロットの意志が必要だが、後はAIがある程度は操ることが出来る。」
「何でそんな面倒な事を?」
「パイロットの負担を軽減させるためだと考えられている。そうだな…翔、君の機体が胸部ビーム砲を放った時、違和感を感じなかったか?」
「うーん。その戦闘後に頭がぼーっとしますね。いつもより疲れるというか。」
「オリジナルの性能は模造品の数段上の出力をほこる。模造品では機体の動力に使うのが精一杯だろう。だが、オリジナルは違う。」
「どう違うのですか?」
「四機しかないオリジナルには、リミッターが付いている。それを解放したら星を創ることも出来るらしい。」
「星…ですか?」
「そうだ、その際は使用者の肉体に多大な負荷を掛ける。まあ、即死するのは保証しよう。」
「そんな保証されても……。」
「では、僕たちがそのオリジナルの機体を?」
「君達の中でそれを所有しているのは二人だ。一人は翔、もう一人は武松大地。そう、君だ。」
「俺…ですか?」
「そうだ、君の機体がAIを搭載しているのもそのためだ。」
「ではどうして僕たち全員を集めたのですか?」
「それがな…。」
政隆は少し置いて言った。
「済まないが、君達は来月からこっちで生活してもらいたい。」
『………………ええぇーーー!』
絶叫する四人
「一体何故ですか?」
「それについては私から説明しよう。」
「何でロームさんが?」
「実は、文化交流の始まりとして、地球とアヤガン王国とで、互いに交換留学生を受け入れる事になったのだが…。」
「はあ。」
「我が国からは本人の強い希望で、その…姫様が…。」
「………………………………。」
一年よりも長く感じた沈黙だった。
『はぁぁぁぁ!?』
「身辺護衛には私が任命されたが、奴らが来た時は一人ではどうしても力不足だ。あの謎の人型の件もある。」
「あいつですか…。あれから何か分かったんですか?」
「デバステーターの新兵器ではないのか?としか今の所言いようが無いな。」
大地が口を開いた。
「あの敵は何者なんですか?」
「実のところ我々もよく分かってはいないのだ。残骸を調べたが、人が乗っていた形跡も無い。しかし今回のやつは別だ、あれの残骸にはコントロール装置らしき物が付いていたらしい。敵が知的生命体である可能性はかなり高いな。」
「そうですか。」
「話はこれで終わりだ。…おっともう一つ言い忘れていた。」
「今度はなんですか?」
「オリジナルのOTZシステムは互いに引き合うらしい。我が国にも一機あるのだが、この出会いも運命だったのかもしれないな。」
「…………」
気まずい沈黙。
「と…取り敢えず、来月から姫様共々よろしく。」
「よろしくって、まさか…」
「察しの通り、君のいる翔天学院に編入予定だ。」
「…まじっすか!」
「大地達の編入準備も出来ている。直、これは国家の総意なので、拒否件は無いそうだ。」
「横暴だな……。」
「まあ、私達は卒業試験合格したし。」
「問題無いと言ったら問題無いよね。」
「決まりだな。」
「ちなみに、通うとしたらここの部屋を借りるのですか?」
「そうなっているが、希望が有るなら連絡が取れるという条件付きで許可する。」
「じゃあ俺、翔の家に下宿したいでーす。」
「なっ!大。おまえ何言ってんだよ!?」
「そっちの方が面白そうじゃん。」
「だったら僕も!」
「確か…翔の家って貸しアパートだっけ?皆行くなら私も行こうかな。」
「まあ、翔の家ならいいだろう。正直纏まってくれていた方が連絡しやすい。」
「俺の意見は無視っすか!?」
「一人辺り、通常の家賃の三倍でどうだ?」
「まあ、それなら………じゃなくて!」
「何だよ、翔。俺達と住むのが嫌なのかよ?」
「そういう訳じゃないけど。人と言うか、大家を置いて話を進め無いでほしいって事。」
「で、答えは?」
「ちゃんと家賃を払ってくれるなら客は客だからな。国が払ってくれるし、滞納も無いだろ。」
「決定!よろしくね、翔さん。」
「私、一番いい部屋にしてね。」
「昔の記憶が正しければ、どれも一緒だったと思うが?」
「じゃあ和室ある?」
「一階が和室、二階が洋室だ。」
「部屋割は今度決めよう。」
「おー!」
こうして翔の愉快で奇怪で痛快な日常が始まりを告げた。
終わ…
「ちょぉっと待ったぁ!」
「!!」
「私との模擬戦は?」
「………そんな約束しましたっけ?」
「いいから!」
「あーれー。」
「あはは…は……。」
絶句する大地達。
「ひーとーさーらーいー!」
その間に翔を連れてロームが部屋を退出した。
「…………いいのですか?」
「私が許可した。」
「そのことを翔には?」
「………伝えていない。」
「あーあ…。」
―「………何でこんな事になったんだろう…?」
翔はゴーバトラーの操縦席でぼやいた。
「一応隊長から許可は下りてますが?」
アルが答えた。
「………」
「どうしました?」
「そんな話、俺は聞いてないぞー!!」
「一度君と本気で戦ってみたかった。」
「人の話を聞けー!……もう自棄だ。こうなったらとことんやってやる!」
格納庫から深紅のバスクード・カスタムが出て来た。模擬戦用のマーカーソードとペイントガンを持っていた。
「攻撃用の武器を創るなよ。」
「了解。…試してみるか。」
アルがゴーバトラーの異変を察知した。
「主、背部の質量が増大しています。」
ゴーバトラーの背後に高機動ユニットが現れた。
「本気で行くぜ!蓬莱斬!」
高機動型ゴーバトラーが加速した。通常の2.9倍のスピードを出している。
「なんの!」
剣と剣がぶつかり合い大量のペンキが飛び散った。
「隙有り!」
ゴーバトラーが、ペイントガンを乱射した。
「狙いが甘い!」
バスクード・カスタムは難無く避け、カウンターに剣を横なぎに振るった。
―「あれ…誰が片付けるんだろう?」
そんなこと考えなくても、どうせ自分が片付けないといけないのだろうと思った小九郎は一人寂しく自分のダイブンと専用掃除道具を取りに向かった。
―模擬戦は翔が有利に運んでいた。と言っても双方手足の至る所にペンキがこびりついていた。
「止めだ。奥義!翔空天凰斬!」
「!!」
バスクード・カスタムの胴体に無数のペンキが付いた。
「よっしゃあ!俺の勝ち!」
勝ち誇る翔。
「私が…負けた。」
その時、小九郎のダイブンが後ろからゴーバトラーを突いた
「翔、勝ったなら汚れは少ないよな。手伝ってくれ。」
「へ!?」
「さあ!行こう。」
「ひーとーさーらーいー。」
「…………ふっ」
一人取り残され、ただ笑うしかないロームだった。
今度こそ終わり
こんな話も最後まで読んでくれたあなたにまずお礼を申し上げます。
次回から新章になります。今月末には上げる予定なので宜しくお願いします。(予定が伸びることは有っても縮まることはありませんので、あしからず。)
ちなみに新章になっても場所はここなので(言わなくても分かると思いますが…)安心してください。(何にだ?)