第八話:真壁凜、危機一髪!
―アヤガン王国と国交を結んでから三ヶ月。その当時こそ話題になっていたが、今の所は政府間での関わりしかなく、人々はなんら変わらない生活を送っていた。
―今は大日本統合歴三年、一月。真壁凜も受験モードに突入していた。
「絶対にお兄ちゃんと同じ学校に通うんだから!」
この受験に合格すれば、晴れて翔と一緒に暮らすことが出来る。そのため、かなり気合いが入っていることはもはや言うまでもない。
「凜ちゃん、頑張るのは善いことだけど、あまりこんを詰めすぎちゃ駄目よ。」
「大丈夫だよ、お義姉ちゃん。自分の調子ぐらい自分でわかるよ。」
「だといいんだけど…。」
その時、呼び鈴が鳴った。
「お迎えが来たわ。はいはーい。…あらっ、翔ちゃん。いらっしゃ〜い。」
「ええっ!」
凜は、部屋を飛び出し、玄関に向かった。そして、
「お兄ちゃん!…っわーあ!」
自分の足に躓きそのままの勢いで前方の人物にダイビングした。
「…私は、君のお兄さんではないのだが。」
ダイビングした先にいた人物は政隆だった。
「!!ごっ…ごめんなさい!」
「凜、お兄ちゃんは悲しいぞ、こんなオッサンと間違えられるなんて。」
「翔、誰がオッサンだ?」
政隆が翔にアイアンクローを掛けた。
「い…痛いです、隊長。お兄さんの間違いでした。」
「あ…あはは…。ところでどうしてお兄ちゃんがここにいるの?」
「このオッ…兄さんが義姉さんの使い走りとあっしー…じゃなくて護衛と運転手をすると聞いたから。かわいい妹に会うために同乗して来たのさ。」
「本当!?」
「当然じゃないか。」
ぱぁーっと、なぜか周囲が明るくなった。
「…翔、本題を忘れてないか?」
「翔ちゃん、お待たせ〜。」
「義姉さん、外で抱き着かないで。流石に恥ずかしいよ。」
「あらあら、オマセさんね〜。」
「な…撫でないで。」
「お義姉ちゃんだけずるい!私も!」
「止めて〜。」
「…私は完全に場違いなようだ。」
―暫くお待ちください―
「翔、そろそろ時間もなくなるのだが。」
「義姉さん、そろそろ時間です!」
「もう、仕方ないわね。じゃあね、凜ちゃん。行ってきますっ!」
「お兄ちゃん、お義姉ちゃん。いってらっしゃい。気をつけてね。」
「ああ、またな。凜も頑張れよ!」
「うん!」
これを機に凜は必勝はちまきを絞めて頑張った。
―そして二月、今日は本番である。
「ねぇ、翔。今日が凜ちゃん自己推薦の本番なのよね?」
「なに言ってんだ珠香。だから俺達休みなんだろ。」
「そうなんだけど、気にならないの?」
「ま、あいつのことだし心配はいらないって。昨日電話したときも元気いっぱいだったし。」
「…凜ちゃんには優しいのね。」
「どうしたんだ?膨れっ面して。」
「何でもない!」
乙女心がわからない奴である。
―宇宙の深淵部
「先遣隊が全滅したか。所詮無人機、その程度だな。して次の手は用意しておるのか?」
「はっ!新型機の性能調査を兼ねて、ウォーグが急襲作戦を。」
「新型…。確か、単機で長距離移動が出来るらしいな。」
「はい。まだ試験段階故に名前は与えられておりませんが。」
「よかろう。必ずやOTZマシーンを我が手に。」
「御意。」
―太陽系、木星宙域、アステロイドベルト
「ウォーグ、船で近づけれるのはここまでだ。」
「了解した。これより、最終試験及び、劣等種の掃討を開始する。」
「フォローは出来ない。気をつけろよ。」
「俺を誰だと思っている。劣等種ごときに遅れをとるものか。」
「それもそうだな、済まなかった。」
「出撃する。」
機体の周りが歪み、ウォーグは地球へと跳んだ。
―凜は学科試験を受けていた。元々優秀な部類に入る子に加え、あの翔が(ぎりぎり)入れた学校である。凜は難無く問題を解いていった。
「時間です。全員教室から退室して待機してください。」
ぞろぞろと受験生が教室から退出していった。
「う〜ん。肩が凝った。」
ふと窓の外から空を見ると、遥か向こうの空が歪んで見えた。
「…疲れたのかな?」
―結論から言うと、ウォーグは地球に到着した。が長距離転移は機体の骨格を歪ませてしまっていた。
「転移エネルギー充填まで暫くかかるな。動きは鈍いが仕方ない。」
少し動きがぎこちなくなった機体で、ウォーグは破壊活動を始めた。
―「何でこんな日に襲撃してくるんだ!」
「どうするの、翔!?」
「待て、静かに。今、隊長に連絡してるから。」
―北条家指令室。司令も勤めている勇一郎が慌ただしく指示を送っていた。
「サテライトは何をしていたんだ!?」
「サテライトに反応はありませんでした。敵は余程強力なECMか長距離移動技術を持っているのかも知れません。」
「なら仕方ない、出撃可能な機体は何機だ?」
「パイロットを含め、出撃できるのは、轟部隊長の刀撃神のみですが、距離がありすぎです。」
「万事休すか…。」
「轟部隊長から通信です。」
「わかった。繋いでくれ。」
―「翔、どうしたんだ?」
「隊長!今どこにいますか?」
「格納庫で自分の機体を整備していたところだ。」
「すぐにこちらに来て下さい、敵襲です。」
「何ぃ!わかった、すぐに出撃する。司令の許可をとるから少し待て。」
政隆は相互通信を開いた。
「司令!今すぐ出撃許可を。」
「わかった、許可しよう。ところで君はどうやって知ったのかね?」
「真壁翔が通信を送ってきました。」
「彼は敵の近くにいるのか?」
「どうやらそのようです。」
「しめたぞ。君、ゴーバトラーを廃棄されたマスドライバーに乗せて射出しろ。」
実は、この基地は計画途中で無期延期になった、宇宙港を買い取り改造したものだった。
「しかし、マスドライバーは未完成ですよ。」
アルも答えた。
「私も主がいないと十分な戦闘行動が取れません。」
「あれをカタパルトにして送り出す。人が乗っていたらどんな影響があるかわからないからな。」
「…了解。」
「よし、ゴーバトラーを射出しろ。その後、刀撃神も出撃だ!」
―ゴーバトラーがカタパルトに固定された。
「なるべく、敵に直撃させるつもりで射出するから、UGフィールドの出力に気をつけてくれ。」
UGドライヴは、一定の方向に斥力場を発生させることが出来る。それを使い、ゴーバトラーを巨大な弾丸に見立てて打ち出そうと言うのだ。
「ゴーバトラー、射出!」
想像を超えるスピードで、ゴーバトラーは飛んで行った。
「人が乗ってなくってよかったな…。」
―「隊長はまだか!」
街は、至る所が破壊されていた。幸いなのは目立った重傷者がいない事だろう。しかし、
「やべぇ、あいつ、学校に目を付けやがった!」
敵が、まさに校舎に攻撃を仕掛けようとした時、高速で飛行して来た物体が激突した。
「敵はものすごい勢いで吹き飛び、海にポチャッと小気味よい音(実際はもっと激しかったが)を立てて飛び込んだ。」
「全く…、もっと静かに来れないのか?」
「助かったのだから文句いわないでください。…本当に当たるとは思いませんでした。」
―これは一重に勇一郎の無茶振りを真摯に答え、カタパルトを調整し、照準補正まで行った小九郎のおかげであることを知る者はほとんどいない。
「少し悲しいが、それが執事の定め。後は任せるぞ、翔。」
「何ボサッとしてる、早くこいつを人間が使えるように改造するぞ!」
「わかりました、おやっさん!今行きます。」
―「主、敵があの程度で落とせたとは限りません。早く搭乗してください。」
「分かった、ハッチを開けてくれ。」
「翔、気をつけてね。」
「大丈夫だって、任せろ。」
翔がゴーバトラーに乗り、海に近付いた頃、敵が海中から姿を表した。
その瞬間だった。
「一刀!両断!」
真上から刀撃神が敵を真っ二つとまでは行かなかったが、右半身を切り落とした。
「あっ………。」
「…すっかり…忘れてましたね……。」
「くそっ、野蛮な劣等種め。よくもこの私の機体を。だが、…この状況はまずいな。撤退する。」
ウォーグは再度転位した。
「逃げたか。翔、我々も帰還するぞ。」
「………」
「どうした?」
「さっきの機体、動きがなんか人間くさくなかったですか?もしかして、俺達が相手にしないといけないのは…」
「そこまでだ翔。この件に関しては箝口令を出す。いいか、誰にも話すなよ。」
「…了解しました。」
釈然としないまま翔は基地に帰った。
―ウォーグが帰艦した。機体は二回の転移と刀撃神の一撃で、完全に破壊されていた。
「おのれ、この屈辱、忘れんぞ。」
※このあとはエンドレスに恨み言が続くので、割愛します。
「うそ〜ん!」
―ちなみに凜は自己推薦に合格した。しかし、最初の襲撃と今回の事件を受けて、大量の辞退者が現れたため、残った人は全員合格した事は、学校側だけの秘密である。
次回予告
珠香です。
今度は私と翔がデート。そして、私はある決断をするの。
次回、約束。
私の思い、彼に届け!
今回も読んでいただきありがとうございます。
では。まず、すいません。またまた遅れてしまいました。
さて今回の話ですが、タイトルの割にあまり危機一髪ではありません。はい。書いてるときに気づきました。でも、まあ受験のときに敵襲って結構危機だなと思ったので、このまま行きました…。
次回は今月中旬の辺りに上げれたらと思います。(また遅れるかもしれませんが、気長に待っていていただけるとありがたいです。)
最後に、またタイトルが変わってます。友達になんかダサいといわれました…これがたぶん最終版です。