第七話:ファーストコンタクト、その1
この話を読んでくれる全ての方に、感謝感激極まりないです。
―銀河連邦会議室、ここに、各惑星の代表者が集められ、先日の戦闘の一部始終が、公開された。
「…この映像は真実なのか?」
「はい、信じがたいかも知れませんが。」
一人の男が声を張り上げた。
「勝てる!この戦、勝てるぞ!」
「まあ待て、ウェルター卿。この力は危険過ぎるかもしれないのだぞ。」
「しかし、議長。」
「なにかね?フォンブライト卿?」
「我々は戦争をしているのです。種族の生存をかけて。ならばそのような事は些細な問題に過ぎません。」
「ほう、ならば決を取ろう。地球をこの銀河連邦に加盟させても宜しいか?」
「異義無し。」
「賛成多数。宜しいか、ガーホン卿?」
「わかりました。では、フォンブライト卿。貴方の国の方でその旨を伝えてください。」
「国交を結べと?」
「そうです。貴方が、一番賛成していたのですから。」
「…そういった意見は議長国の私のほうを通していただきたいが。まあ決をとりましょう。異義のある国はありますか?」
「…」
「では、使者はアヤガン王国にお願いする。」
「わかりました。」
「これにて、今回の会議は終了する。」
―地球、北条家リフレッシュルーム
「あっ!」
パリン!!
「どうしたんだ、翔?」
「なんでもない。カップの取っ手が折れただけだ。」
「…何でもないって。不吉な。」
「じゃあな、大。片付いたし、ちょっと外の空気でも吸ってくる。」
「あ…ああ、気をつけてな。」
「敷地内だし、大丈夫だって。」
外に出た翔の前を黒猫がワルツを踊りながら過ぎて行った。
「ワルツ?…やっぱ、黒猫はタンゴだろ。」
―アヤガン王国王宮内。
「絶対に私が行きます!」
「落ち着きなさい、ミルファーナ。」
「も、申し訳ありません、お父様。でも…」
「わかった…。おまえを全件大使にしよう。補佐に軍のローム・マイゼンリッチを任命する。…あと、この星にいる地球人は何人だ?」
「三十二人でございます。」
「彼等も連れていけ。」
「はっ!」
「ミルファーナ。出発は明日だ。くれぐれも失敗しないように。お前は国の代表なのだ。」
「分かっております。」
―王宮、ミルファーナの部屋
「また、地球に行ける。…彼に会えるかな?」
アヤガン王国の王女、ミルファーナ・ヴァン・フォンブライトは一人自室で興奮していた。
「運命的な再開から告白…。きゃっ、何言ってるのかな私。」
―始まりは突然だった。
その日、地球圏全体に、アヤガン王国からの放送が届いた。その内容は簡潔だった。
「我がアヤガン王国と国交を結び、銀河連邦に加盟してほしい。」
―地球圏統一国家中央会議場。
「相手は異星人ですよ。しかも我々を攻撃して来た。」
「しかし、送られて来たデータは信憑性が高いものだ。」
「議長!虎穴に入らずんば虎児を得ずです。このまま後手に入ったままではいけません。さあ!決を!」
「他に意見のある方は。」
「…」
「では決を採ります。本件に賛成の方はお手元のスイッチを押してください。」
賛成票が反対票を僅かに上回った。
「賛成多数。よって本件は採択されました。」
―アーカス・ナカラン格納庫内
シャトルの中から大使団が現れた。
「長旅お疲れ様でした、姫。私は、この度姫の補佐を勤めさせていただく、ローム・マイゼンリッチです。」
ロームはミルファーナに挨拶をした。
「お出迎えありがとう。…もう地球に通信は送ったのですか?」
「はい。…まだ返答は来ておりませんが。」
「そうですか、突然攻撃を仕掛けられたのですから警戒していても不思議ではありませんね。」
「姫、お疲れでしょう。部屋を用意しております。軍艦ですので、あまり良いとは言えませんが。出来る限りの用意はしております。」
「ありがとう。その気持ちだけでも、嬉しいわ。」
「では、こちらです。」
―北条家政隆の部屋
「絶対に罠ですって!」
「俺もそう思います。」
翔と大地は口を揃えて浩昭に言った。
「まあ、落ち着け。隊長が俺達を呼んだのも何か考えがあるからだろう。」
プシュー
「済まない。待たせた。」
「いえ…。」
「今回の任務だが、この度行われる。アヤガン王国と国交を結ぶ会議の護衛だ。」
「隊長は罠だと思いますか?」
「罠にしては手が込んでいると思うな。で、ポジションだが。俺と武松が中で首脳陣の護衛。真壁と松平さんは機体内で待機。外敵の侵入に備えてもらう。」
「了解!」
ぶるっと翔が震えた。
「?どうした、翔。」
「さっきから悪寒がするんですよ。なんか良くないことが起きそうで…。」
「そうか、気をつけろよ。」
「はい。」
しかし、一抹の不安が拭い去れない翔だった。
―翌日、地球圏全体と、アーカス・ナカランに向けて、放送があった。
「我々、地球圏統一国家は、アヤガン王国と国交を結ぶことをここに宣言します。」
その2に続く