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灯りのあるこの街で (短編集)

いなくなれ

作者: 新垣 電燈

玄関を出て、数歩歩くといつもあいつを思い出す。同じクラスの小川。俺はあいつが嫌いで仕方がない。

俺が学校に着いた途端、席が離れているのに俺に絡んでくる。クラス全体で見てもうるさいやつなのに、俺の方に話しかけらたら、余計にうるさい。

あいつはいつも「俺ら友達だよな」と言いそうな顔で話しかけてくるが、俺はこいつと友達と約束した覚えはない。新学期の名簿の席順のときに隣だっただけで、それ以降はだいたい席は離れている。それだけなのに、席が離れた今でも話しかけてくる。

ペア決めはあいつから来て俺に拒否権はなく、テストが返ってきたときは、見たくもないのにあいつの点数を見せられる。

何度も追い払ったり無視したりしたが、あいつは一向に怯むことなく、俺に絡んできた。

あいつは中学でも同じように振る舞っていたらしい。

それで今まで友達はいなく、唯一話が合いそうな俺に話しかけてくるようだ。俺はこいつと話が合いそうなんて一度も思ったことがないが。

それに小川は顔も頭も運動もよくない。自分も大声で自慢できるほどでもないが、俺は彼女がいるのでそれなりにあると思う。それで小川は「ナイスキャッチ!」とか言ってくる。自分できないくせに。

それと小川はカンバッチを集めるのが趣味らしい。直接聞いたことはないが。一人で根暗に集めてるんだろうな、気持ち悪い。

小川は割り勘を10円単位で請求したりするんだろうな、気持ち悪い。

「ねぇ、ちょっと」

彼女の結衣ちゃんに呼ばれて、人気のないところまで呼ばれた。こんなところに呼ばれるなんて久しぶりだ。

「ごめん、小川がしつこくてさ……それで、どうしたの?」

「別れよう」

結衣ちゃんの口から予想だにしなかった言葉が出た。

「…え…は…なんで…」

「最近ずっと小川君と遊んでて、私のこと全然構ってくれないじゃない」

「はぁ!?俺はあいつと遊んだことなんてないぞ!ただあいつから絡んでくるから…」

「私を構わなかったのは確かでしょう?休み時間ずっと小川君といて」

「いや…でも…」

「やっと構ってもらえたと思ったら、いつも小川君の話ばかりで…」

「お前がいなくなったら俺どうするんだよ!ずっと小川の相手してなきゃならないのか!」

「ほら、そうやって小川君のことしか考えてないんでしょ?私のことなんか何とも思ってないんでしょ?もういいよ。ずっと小川君と遊んでいればいいのよ」

涙を浮かべながら結衣ちゃんは遠くに走っていった。

俺は何もできなかった。何をしたらいいか分からなかった。

俺が小川のことを好きでいるような言い方だった。小川のせいで俺の貴重な時間どころか、彼女まで失ってしまった。

こんなことにした小川が許せない。

いつか仕返ししてやる。

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