②
ゾンビ出てきません。
日常の様子と人物紹介な感じですね……。
次回までそんな感じですm(_ _)m
(ダリィ〜)
只今、始業式の真っ最中である。
そうして大抵の学校の例に漏れず、この学校の校長も話が長かった。
あ、校長じゃなくて学園長、か。
なんと現在俺は、私立の金持ち校の中等部なるものに通っている。
さらに言えば、ここの高等部が漫画の世界の舞台だ。
ちなみに幼稚園から大学まである。
で、漫画の中では当然孤児の俺がこんなハイソな学校に通ってるわけが無い。
そもそも本来行ってた公立の中学だって半分は登校拒否でほぼ通ってなかったけどな。
そんな俺がなんでこんな所に来る羽目になったかというと、当然、天翔のワガママのせいである。
爺ちゃんに引き取られた後、本来、天翔は小学からこの学園に通うはずだった。
それが、俺と離れるのはイヤだと暴れ、そのまま近所の公立の小学校に通い続けた。
(爺ちゃん引っ越したの、半分はこのせいだったんじゃ無いか?)
家の都合でどうしても中学からは私立の学園に入らなきゃいけないとなった時、天翔は、俺と離れないために、必死の説得を始めた。
勿論、お断りだ。
何が楽しくてお堅い私立の学校なんかに高い金払ってまで通わにゃならんのか。
学費は爺ちゃんが〜〜とか言い出した天翔の頭は、俺が全力で叩きのめした。
爺ちゃんの金は爺ちゃんが稼いだもので、俺と爺ちゃんは赤の他人。
タダでさえゾンビ対策に巻き込んで(本人ノリノリとはいえ)資金提供までしてもらい心苦しいのに、余計なものまで出させる気は無い。
爺ちゃんがその主張を聞いて若干寂しそうだったけど、最低限のケジメって大事だと思う。
それでも、天翔は諦め悪く様々な情報を持ってきては俺の説得を続けた。
学園に通うことで得られる利点の数々。
正直、よく調べたもんだと感心したもんだ。
その情熱をもっと別にむけろよ。
天翔の探し出してきた数多の「利点」の中には確かに俺の琴線に触れるものも存在して、結局、俺が折れた。
別に、夜討ち朝駆けで突撃しては、泣いて騒いで懇願する天翔の相手が面倒くさかったわけでは………ちょっとある、けど。
とりあえず。
学費は、成績と家庭環境によって全額免除、かかる学用品は支給、課外授業の費用も無料(修学旅行含む)という破格の特別支援制度が学園独自にあり、クリア。
頭脳特化キャラは伊達じゃなかったのですよ、皆様。
さらには最新式のパソコンが設置され、蔵書量も魅力的な図書館や冷暖房完備の自習室。
授業は選択式で、予定のカリュキュラムさえこなしてしまえば、後は何してても自由とか、なにそれ、ここは本当に日本か?と本当に驚いたものだ。
あ、一応登校の義務はあるので、授業なくても登校はしてる。流石にスキップ制度は許可が下りなかったらしい。
そして何より。
私服登校可、だったのだ。
還暦過ぎのおいちゃんの精神宿してる俺としては、スカートは鬼門だったのだ。
たとえ見た目はピチピチ美少女(←死語か?)でも、気分は女装の変態さん。
公立は、制服は絶対で確認してみたが特例は無かった。
正直、最後の情報が1番魅力的だったのは内緒だ。
最も、中に入ってみれば、式典等の行事には着用の義務があったんですけどね〜。
だ〜ま〜さ〜れ〜た〜。
更に、着てるだけでステータスとなる制服を着ないって選択肢はほぼ存在しないようで、私服登校の人間の方が少ないという現状。
まぁ、気にせず私服で登校してますが。
年に数度の制服着用義務の日は泣く泣く着るけど、式終わった瞬間に着替えてるもんね〜、だ。
周囲からは文句言われるが、知らん。
自分の精神安定の方が大事に決まってんだろ!
ちなみに天翔は「服装考えるの怠い」との理由で制服愛用者だ。裏切り者め!
話が逸れたが、そんなこんなで現在苦行の1つである始業式。
話は長いし、立ちっぱなしが少々辛くなってきた。眠いし。
義足に慣れてるとはいえ、1時間近くずっと立ちっぱなしは、流石にな。
(貧血少女でもすっかなぁ?)
ボンヤリ考えてると、不意に身体を横に引かれた。
「もうちょいだから、頑張れ。それとも、抜けるか?」
腰のあたりに巻きついた腕が身体を支えてくれる。
と、いうか少し体浮いてるし。
力持ちだな、天翔。
脚にかかる負荷が減ってだいぶ楽だ。
少し情けないけど背に腹は代えられないし、いっか。
「このままで良い」
短く答えて身体を預ければ、一瞬ギュッと腕に力がはいった。
痛みが薄れて安心したら途端に眠気が襲ってくる。
そういや俺、朝方寝たんだったなぁ〜。
あ〜、理事だか学園長だかの演説が子守唄に聞こえてきた………。
そうして、うつらうつらと眠り込んでしまった俺は、結局、天翔にお姫様抱っこで保健室に運ばれちゃうわけなのだが、そんな事をその時の俺が知る由も無かった。
てか、起こせよ天翔!
「いやぁ〜、いいもの見せてもらったわぁ。ぐったりとする美少女を颯爽と姫抱っこで運ぶ黒王子。勿論、スカートがめくれたりしないように腕で抑える配慮つき」
前の席から後ろ向きに座り、ニヤニヤ顔の花梨がマジでウザいんだが、殴っても怒られないよな?
やっていいかな?
チラリと横目で天翔を伺えば、お好きにどうぞ、と目で返された。
良し、殴ろう。
「いやいや、暴力反対」
拳を握りしめたところで、何かを察知した花梨がガタンと身体を後ろに逃がした。
チッ!
「せっちゃーん、女の子なんだから舌打ちは止めようよ。制服もサッサと着替えちゃうしさ〜」
「知らん。必要も無いのにあんな格好いつまでもできるか」
切り捨てればシクシクと泣きマネされた。
「折角素材良いのに、宝の持ち腐れだよ〜。お着替えごっこして遊ぼうよ〜」
ガタガタと椅子を揺らして主張してくる花梨に冷たい視線を向けてやる。手本は更紗で。コツはゴ○ブリ見る目、だそうだ。
俺はどっちかというとゲジゲジのが苦手だが。
理事の演説で見事に眠りについた俺も保健室のベッドで無事に目を覚まし、現在、最後のホームルームを受けるべく教室に復帰した。
当然、制服は私服に選手交代、だ。
で、戻ってきた途端に花梨に絶賛絡まれ中、と。
あのまま帰っときゃ良かったか?
「せっちゃんが冷たい。極寒だよ」
「涼しくなって良かっただろ」
「冷暖房完備だもん!そんな気遣いいらないもん!」
きゃんきゃん騒ぐ花梨をスルーして、天翔に視線を向ける。
「天翔も、寝てるだけなのわかってんだから起こすかそのまま放っておけよな」
文句を言えば肩をすくめられた。
「周りの視線が煩わしくなってきたんだよ」
あ、寝てるのバレバレだったわけね。
そりゃ、巻き込んで悪かったとは思うけどさ……。
俺が寝汚いのもクラスメイトにはバレバレだし、今更だろ?
「…………それで姫抱っこで全生徒の視線集めてたら世話無いだろう……」
一部の生徒(主にクラスメイトの皆さん)の方がマシじゃ無いか?
「意味が違う」
ため息と共に返された。
あ?違うって何が?
「…………せっちゃん、自分の事になると鈍いもんねぇ。流石ヒロイン補正」
「ヒロインはお前らだろうが」
あげく、花梨までわけのわからん事を言い出した。
花梨にそんな目で見られるいわれは無いぞ!
突っ込もうとした文句は、入ってきた担任の姿によって行き場をなくし、喉の奥に消えていった。
なんなんだよ、一体?
読んでくださり、ありがとうございました。
雪がなんかあざとい感じに………。
鈍感は主人公の特権という事で……(汗




