表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゾンビになんてなってたまるか!  作者: 夜凪
エピソード1〜そして始まる
13/14

「さぁ〜て、と。どう行こうかねぇ」

第一目的は駅ビルの外に出る事。


ところがどっこい、1階に素直に正面から降りたらゾンビ祭り真っ只中なのは、最初に確認した通りだ。


一人一人はショボくても、数は暴力だ。

四方八方から纏わり付かれるのはご勘弁いただきたい。

さらに言えば、テロリストもどき共も気にかかる。


「ってなると、やっぱり初志貫徹かね〜」

ぼちぼちと入り口から離れつつも独りごちる。

従業員通路から外階段に出れるみたいなんだよな。1階の喧騒を避けるには最適だろう。


まぁ、そこにもいないとは限らないんだが、人の数なら表の方が多いし、ゾンビが集まるのも生きた人間の方って事で、居たとしてもそこまで多くない、はず……。


「っと、第1村人発見ってか」

店の角に身を潜め覗き込めば、フラフラと歩く女発見。首筋から胸元にかけての血痕及び片腕がないのをみれば、生きてる人間じゃないのは明白、だな。


このまま進まれたら、店の前を通過する事になる。

音は立てないよう言い含めていたとはいえ、危険を排除しとくに越した事はないか。


さっき聞き取りをして、ザックリと組み立てた駅ビル内の地図を思い浮かべる。

女がフラフラと歩いているあたりは雑貨や衣類の店が並んでいるところだ。


店の通路に面した場所は棚やマネキンで視界が悪い。

こっからは見えないだけで、中に潜んでる可能性は高いな。


息を潜め、女がこちらに歩いてくるに任せる。

ふらりふらり。

やる気なくゆったりと歩く様子はちょっと気持ち悪いものの、下で見た凶暴性は欠片も見えない。


手が届く範囲に来たところで残っていた腕を横から引き寄せ、構えていたナイフで一気に首を切る。

倒れるのを抱きとめ、音がないように転がせば、お仕事完了。


だらんと後方にあり得ない角度まで下がった頭を元の位置に戻し、なんとなく、見開いたままの目を閉じてやる。

まだ、20歳ぐらいの子供だった。


出そうになるため息を飲み込み、進むべき通路を探る。

従業員通路に抜けたければ、どうしたって雑貨・衣料品エリアを抜けなきゃならない。距離にしてほんの20メートルほど、だが。


な〜んか、考えるの面倒になってきたなぁ〜。いっそ、一気に駆け抜けるのも手か?

鬼ごっこしながら数を減らす。

ありな気がする。ただし、危険度は未知数。


少し考えてから、さっき倒した女のゾンビから靴を拝借。

ちょっと良心は痛むが、もう歩く事もないし、良いだろ。

エラメルのパンプスは硬さといい転がりやすさといい理想的。

狙いを定めて力一杯、放り投げれば、なかなかの飛距離を稼いで落下した。

廊下に跳ね返り、結構な音が響く。

間髪入れず、もう一足。


「ありゃ、結構いやがったな」

無機質な音でもつられてくれて助かった。

そういうものなのか、そんなものにまで反応してしまうほど、飢えてるのか。

知りたいような、知りたくないような。

とりあえず哀れなヤツらの腹を満たす糧になる気はない、な。


深呼吸、1つ。

サバイバルナイフと中華屋で手に入れた結構刃渡のあった肉切り包丁をそれぞれの手に握り、走り出した。

無防備に向けられた背中が最初の獲物だった。


俺の存在に気付き、伸ばされてくる手を掻い潜り、体当たりを避け、蹴りつける。

体勢を崩したところに刃物をお見舞い。

やっぱ、ワイヤーかせめて刀欲しいなぁ。

リーチが短いと動く量が増えておっさん疲れるわ。


人外相手とはいえ、久しぶりの命のやり取りは、俺の潜在意識を大いに刺激したらしい。

蹴りつけた背中を足場に回し蹴りが綺麗に頭に入り、一回転した首と見つめあった時には、俺は楽しくて笑っていた。

アドレナリン、出まくり。

良いねぇ、加減しなくて良い相手ってヤツは。


背後から歯をむいて熱烈なバグを仕掛けてきたヤツの手をかがむ事で避けると、そのまま足をすくい立ち上がる。

俺の体を越えて頭から落下したそいつの首もあっけなく砕けた。


悪りぃな。むちむちの姉ちゃんが好みなんだよ。自分と同じくらいのおっさんのハグは拒否させてもらう。


ヘタこいて包丁が脊椎間に挟まり抜けなくなった為、咄嗟に手放し、代わりに柄の部分を思いっきり蹴りつける。

と、飛んで行った体が貫通した包丁の刃で壁に縫い付けられていた。

や〜なオブジェだな。


そんなこんなで気づけば手近な10体ほどを殲滅してた。が、向こうの方から、騒ぎを聞きつけてゾロリとこっちに向かってくる影、発見。

あ〜〜、うん。相手してたら日が暮れそうだ。1抜けた!


ゾンビたちの成れの果てを乗り越え、予定の角を曲がる。

突き当たりにあるstaffonlyの文字の扉を思いっきり開き、閉じないままに走り抜けた。

こっちに来てもらわないと、飲食店街の方までゾンビが行っちまう。

それは、マズイ。


ワザと足音を響かせ気味に走れば、良い具合に食いついてくれた。

はいはい、餌はコッチですよ〜遅れずについてきてくださいね〜と。


走りながら非常口の緑の看板を見つけて開けば、望み通りの外階段。

すべり出て、開いた扉と壁の隙間に身を潜め、さっき雑貨屋で拾った秘密兵器を階段の下の方にスイッチオンで投下した。


(壊れるなよ〜)

果たして秘密兵器くんたちはごんガンと良い音をさせながら階下に落ちていった。

キャンキャンキャンとけたたましくも可愛らしい声を響かせながら。


その音につられるようにゾンビ達が階段を降りていく。

ある程度の数が行けば、他の奴らもつられる習性があるようだ。

ドタンバタンとたまに転げおちるヤツもいながらも、ゾンビの群れは階下へと降りて行った。


しばらく音が遠ざかるのを聞きながら、ポケットから取り出した携帯をチェック。

残念ながら圏外。


予想範囲内ではあるが、この建物から離れた場所でも確認はしないとだな。

非常階段から喧騒は遠ざかったみたいだし、降りるか?

けど、下はさらに投入する事になっちまったゾンビ共で、面倒な事になってそうだし、なぁ。


隣のビルとの距離を何気なく図る。

駅ビルと階数は同じ。

屋上の高さもそう変わらなさそうだし、助走つければ行けるか?


音を立てない様に階段を3階まで登る。

残り一階分は梯子階段だった。

ゾンビいなさそうなら、屋上まで避難もありかもしれんな。

普通の階段はともかく、梯子は登れないんじゃないか?あいつら。


屋上はだだっ広いだけの空間で何も無かった。どうやら、ここは一般には解放されてないんだろう。

一応、腰までの高さの柵は設置されているものの、それだけだ。


隣とのビルの間は約3メートル。

高さは若干あっちが低いくらい、か?

柵が邪魔だが、まぁ、どうにか行けるだろ。

向こうのビルはどこかのオフィスビルみたいだから、邪魔者、少ないといいなぁ。


少ない荷物が飛び出したりしない様チェックをすると、柵から5メートル程離れ、勢いよく走り出す。

その勢いで1歩、柵を踏みつけ、体を勢いよく前へ蹴りつけた。


一瞬の浮遊感。


そうして、無事、俺の体は、隣のビルの屋上へと移動完了。

ちょっと勢い余って着地に失敗してゴロゴロと2〜3回転したけど、ま、そんなもんだろ。

遥か下の地面とご対面するより何百倍もマシ、だ。


「さて、携帯は………。ダメ、か」

極力駅ビルから遠ざかる様に、ビルの屋上を歩き回るが電波に変化はない。


「とりあえず、無駄だとは思うが普通の電話も試してみるかね」

屋上からの出口はしっかり施錠されていた。


ので、チョット鉛の弾にお仕事していただいた。

まぁ、非常事態だ。許せ。


さぁ〜て、電話はどこかな〜?

銃を片手にぶらぶらと歩く。下に降りる階段は2人並んで歩くのがやっとの広さだった。

踊り場手前で足を止め、そっと顔だけのぞかせる。

よしよし、誰もいないっと。





どうも、コッチは建物の中まで入り込んでないんじゃ無いかなぁ〜なんて、呑気に構えてた俺が後悔するまで、後10分。



読んでくださり、ありがとうございます。


次は主人公サイドに戻ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ