お節介者
玄関のドアを開けた瞬間、ジロウくんが尻尾を振りながら迎えてくれた。女の子はジロウくんから目を離さなかった。
"触ってみる?"
と女の子にジロウくんを渡すと、女の子は少し嬉しそうに抱っこした。
"どうぞ、入って。"
私はリビングの方に手招いた。
女の子はジロウくんを抱っこしたままついてきた。リビングのソファーに座らせ、お水を持っていくと、女の子は突然、
"あのう…失礼かもですけど…男じゃないですよね…?"
と聞いてきた。
"そうだよ。"
"ごめんなさい。やっぱ帰ります…"
"どこに?"
女の子はジロウくんを優しく床に降ろしながら、
"他のところに…"
"どうして?男じゃないと嫌なの?"
と優しく聞くと、
"そうじゃないけど…"
と複雑そうな顔をして言った。
"私、見ての通りレズビアンだよ。"
と言いながら財布から1万円を取り出し、女の子に差し出しながら、
"はい。男なんてろくな奴いないよ。とりあえずここで泊まりな。変なことしないから"
と笑いながら言った。
"迷惑じゃないですか…?あと…本当に何もしないですか…?"
"全然。寧ろありがたいくらいだよ。昨日彼女と別れたばかりだから、ひとりだと何をしだすかわからないからね。てか、犯罪者になるのはごめんだからね。何もしないから安心しな。"
"そうなんですか…ありがとうございます。明日すぐ出て行きますので!あと、これ要らないです…"
女の子は一万円を申し訳なさそうな顔をして返そうとした。
"いいのいいの。それより、何で家出なんか?"
"…"
事情を聞いた途端女の子は少し泣きそうな顔をした。
"よしよし。言いたくなかったら無理して言わなくていいからね。"
"…したんです。"
すぐにでも泣きそうな声で言った。
私は聞き取れず、
"うん?"
と返すと、
"妊娠…しちゃったんです。彼の…"
涙を流しながら抱きついてきた。
私は女の子の頭を撫でながら泣き止むまで待った。
ようやく泣き止み、女の子は話を続けた。