宇宙最強の男
その男は、宇宙最強と自負していた。
星から星へ飛び回り、数多の種族を屠って来た。
しかし、男は物足りなさを感じていた。
何処かに、自分を苦戦させる程の実力者はいないものか…そう考えていると、何時の間にやら新たな星へと降り立っていた。
「何をしに来た?」
「ほう…言葉が通じるとはな。それなりに高い文明を築いているという事か?」
男はニヤリと笑うと、この星の住民に説明した。
「私は、己の強さの証明の為に数多の星の最強の存在と戦い・勝利して来た。この星の最強は、誰だ?」
「…勝利した後は?」
「皆殺しだ。さあ、滅ぼされたく無くば、最強の者を教えろ。そして、そいつが勝利するのを祈るのだな!」
「ならば、俺と戦え」
「そうか。お前が最強か」
二人の戦いは、星が壊れてもおかしくないほどの激闘だった。
「どうやら、私の勝ちのようだな」
地面に倒れて起き上がれなくなった相手を見下ろし、宇宙最強の男は満足げな笑みを浮かべた。
「誇るが良い。私をここまで苦戦させたのは、お前が初めてだ」
「…そうか。お前に言いたい事がある」
「何だ? 恨みごとか? 命乞いか?」
「この星の最強の存在は、俺を含めて1億人だ」
宇宙最強の男は耳を疑った。
「…は?」
「だから、最強の存在は、後9999万9999人いる」
何時の間にか、地上と空中を覆う様に大勢の人間が現れていた。
回復した男が立ち上がる。
「さあ、滅ぼしてみろ」