エピソード14 新エリア開拓
それから二人は、銀座にある小洒落たフレンチレストランへと向かった。
雄太が事前に予約しておいた所だ。
ガイドブックとインターネットを片っ端から読み漁り、ここなら、と吟味に吟味を重ねた店であった。
店に着くと、二人は窓際のテーブル席に通された。
窓の外には、銀座のネオンが晴れやかに瞬いている。
「このお店、とても雰囲気がいいけど、高いんじゃない?」
席に着くなり彼女が聞いてきた。
彼女の予想通り、このレストランのディナーコースは、中々の値段である。
少なくとも、雄太がしょっちゅう来れるようなところではない。
しかし、雄太にしてみれば、このくらいのことは大したことではなかった。
彼女と二人きりで食事が出来る。
この事実に比べたら、値段なんてあってないようなものだった。
「そうでもないよ」
雄太が、出来る限りの余裕を見せながら言った。
彼女は雄太の言葉を聞き、少し安心したようだ。
彼女の顔にうっすらと笑みが戻った。
するとすぐに、メニューを持ったボーイが雄太たちの席へとやって来た。
雄太は、緊張を隠しながら、料理とお酒を注文した。
お酒は、赤ワイン、料理はお任せのコースだ。
ワインは一口飲んだだけで、それなりのものと分かるワインだった。
それから二人は、出された料理に舌鼓を打った。
かなりの値段であることを納得させる味だった。
そして、最後のデザートが出てきた時、雄太は声を振り絞って言った。
「これからも、時々、食事に、誘っても、いいかな?」
彼女は、デザートを食べる手を止め、口元をナプキンで拭きながら答えた。
「喜んで。でも、次回からはもう少しリーズナブルなお店にしてくださいね。こんな高級なところじゃ、肩が凝ってしょうがないわ」
彼女はにっこりと微笑んだ。
雄太も彼女につられて、にこっ、と笑って応えた。
これでようやく、彼女とデートらしいデートが出来る。
そう思うと、雄太は天にも昇る気持であった。
食事が終わり、彼女を駅まで送った雄太は、ひとり電車に揺られていた。
今日はなんていい日なんだろう。
彼女とデートできたなんて。
雄太は電車に揺られながら、今日一日の出来事を思い返していた。
今日は眠れそうにないな。
雄太は夢見心地であった。




