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エピソード10 一面クリア

翌々日の水曜日、昼ご飯を食べ終えた雄太は、自席で読書をしていた。

彼女ともっと話をするために、空いている時間は出来る限り読書をすることに決めたからだ。

今まで暇な時間の大半を過ごしていたパソコンやスマホは、その利用頻度が激減していた。


読書をし始めると、本がこれほど面白いものだったのかと改めて認識した。

オンラインゲームなんかより、よっぽど面白い。

時間が経つのを忘れるとはこういうことなんだと、深く感心した。

この日読んでいるのは、図書館で読んだ本の内の2番目に面白かった小説だった。

タイトルは『地球サバイバル』。

近未来の世界を舞台にしたSFものだった。


内容は、『ぼうママ』よりも非現実的で、フィクション小説としては、『ぼうママ』よりも良く出来ていた。

ただし、彼女の趣味からするとこういうジャンルはどうかなあ、と思い諦めたのだ。

しかし、内容はとてもおもしろそうだったので、改めて本屋で買い直し読み始めたところだった。


すると、女性が一人、雄太の席へと近づいてくるのがわかった。

彼女だった。

手には、一冊の本を持っている。雄太は顔を上げて彼女を見た。


「堀尾さん、この前は本をどうもありがとう。あの小説、とても面白かったわ」


彼女は、雄太に微笑みながら言った。


「それは、よかった」


雄太は消えそうな声で答えた。

何回か話をしていても、未だに彼女の前では緊張の波が襲ってくる。


「そのお返しと言っては何だけど、これ、もしよかったら読んでみない?」


彼女は一冊の本を差し出しながら言った。

雄太は恐る恐るといった感じで、その本に手を伸ばした。

本のタイトルは『白い壁の向こう側』。

どんな内容か、タイトルからはわからない。


「ありがとう。じゃあ、早速、読んで、みるよ」


雄太が、声を振り絞って答えた。

彼女は、それじゃあ、と自席へと戻って行った。

席に座ったままの雄太は、彼女が貸してくれた本を片手に、しばらく放心状態だった。


初めて彼女の方から声を掛けてくれた。

その事実だけで、雄太は幸せな気分になれた。

これで、彼女とは同じ読書好きの友達になれたのだ。

雄太は心の中でガッツポーズをしたいくらいだった。


それからというもの、雄太と彼女はお互いに面白いと思った本を貸し合う仲となった。

彼女の反応は早く、早い時は次の日に読み終わっているくらいだった。

雄太はというと、空き時間を見つけては読書に勤しむ日々が続いたが、彼女のように早く読むことは出来なかった。

それに、彼女に教える面白い本を探すのに、毎週図書館へと通わなければならなかった。

それでも、雄太は幸せだった。

選んだ本を、彼女が面白かったと言ってくれることが、何より嬉しかったのだ。


そして自然に、彼女との会話が出来るようになっていった。

雄太はもっと彼女のことが知りたいと、強く思うようになっていった。

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