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Empty idea  作者: 坂津狂鬼
《恍然自失》
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it's code

翌朝。

四葉を送り出した空はそのまま街中を散策していた。

いや正確に言えば、待ち合わせをしているがそれまでの時間が空いてしまった為に待ち合わせ場所の近くをうろついているだけなのだ。

濁川空は中学卒業後、進学はしなかった。

学業以外に特にこれといってやりたい事も無かったが、だからといって何かを学ぶ気もしなかったも事実だ。普通ならばそういう心情の場合、取り敢えず進学をしておいてやりたい事を決めるのだろうが、空はそうしなかった。

自分は独りで生きていける術をもうすでに教えて貰っているし、高校で学ぶ程度の内容はいつでも参考書一つあれば学べることだし、学校に通ったところで自分自身が何かを得られるとは思えない。

だから空は進学をせずに一応『探偵』という名で職には就いている。

しかし『探偵』という名のわりにはやる事が物騒な事が多い。

そもそも彼が関わる事件には大概コードが絡んでくる事が多い。猫を捜す、などの依頼でなければ大概はコードを使った犯罪の解決に彼は回される。

今回の通り魔事件に関してもそうだ。彼が四葉を助けてこの事件に関わりをもったのではなく、そもそも前にコードが絡んだ事件の際に関わった刑事からの依頼でこの通り魔事件について調べていた時に、四葉が襲われかかった為に助けたのだ。

そしてこれからその事件に関して、空自身が捕まえた通り魔についての捜査結果をその刑事から聞く予定になっている。

「ん? アンタにしては時間より早く来るなんて珍しい」

「それほど事件が早く終わってしまいそうになっているって話さ」

そろそろ喫茶店に行こうかという時間になりそうな頃合いで空は、四葉を連れて行った時にいた刑事と偶然出会った。

「ならこのまま話を続けてくれ」

空は適当に行く先も決めずに再び歩きだし、刑事はその隣を歩きながら話をする。

「……お前が捕まえた通り魔が一連の犯人ってことで事件が終わりを迎えそうだ」

「あぁ? 何でだよ? 最低限一件はあのお嬢さんにはアリバイがあるぜ」

「おかしい事に、それの裏が取れないんだよ。犯行現場の位置からして最後まで部活動に参加してあればアリバイを証明できるはずなんだが……皆々様、口裏を合わせたかのように『その日は部長の姿は見ていない』って言うんだと」

「なら、沈村四葉……昨日俺と一緒にいたお嬢さんが証人になるはずだ。証拠としちゃ物凄く弱くなるだろうけどな」

「情報提供ありがとさん…………それで、お前さんの方からまだ何か聞きたい事は?」

「あんたら警察が聞き込みをしたのはイラスト部の部員たちだよな」

「ああ、そうだが」

「そいつらの何か共通点はないか?」

「共通点? そうだな……別に全員が全員、可愛いかったわけでも不細工だったわけでもないしな…………あえていうなら全員女だって話だな」

「女、か…………そうだ。刑事さん。告訴が取り下げになるなんて事態は成りそうか?」

「ああ……ん?」

何かを思い出した後、そのことを疑問に思った刑事は立ち止まり空に問う。

「なんでお前がその事を知っている?」

「沈村四葉自身が、あのお嬢さんに掛かっている殺人未遂の容疑を取り消そうとしていてな」

「という事は……相当、罰は軽くなりそうだな」

「…………どういう事態なんだ?」

刑事の言葉を疑問に思い、空も問い直す。

おおよそ、あのイラスト部部長が通り魔という事で事態が収拾してしまうのならば相当数の容疑が掛かっているはずである。

傷害罪に殺人罪、殺人未遂も含まれた上にその数からして罰が軽いなんて表現はできないはずである。

それをそういう表現をするという事は、つまり。

「次々に告訴が取り下げられてな、一種の異常事態だぜこれは」

「どの程度の罪が今、通り魔に掛かってる?」

「捕まった時に犯していた殺人未遂と傷害だけだよ、もうな」

「…………そうか分かった」

空は溜息を吐きながら刑事から聞いた情報を頭の中で簡潔にまとめる。

イラスト部部長である少女が通り魔として事件は決着がつきそうになっている。

だが少女に掛けられている罪は、沈村四葉が目撃した現場での犯行である傷害、それと沈村四葉に対する殺人未遂のみ。

通り魔自身がこれまで犯した罪は、被害者たちが次々と告訴を取り下げている。

さらに少女自身のアリバイが他の者たちによって実証不可能になっている。

「コードによる犯罪だと思うんだが……どう思う」

刑事は自身の予想を空に伝え、意見を訊く。

「その通りだと思うぜ。ここまで来るとコードじゃなければおかし過ぎるからな。金持ちや権力者でも出来そうに見えるが……さすがに俺が現場を取り押さえてるからな」

「どんなコードかは分かってるのか?」

「知らないに決まってるだろ。実際今になるまでコードが関わってるかどうかすら疑わしかったんだから」

「……まあ、それが分かったところで意味は無いか」

コードによる犯罪の実証など不可能。つまりは法で裁けはしない。

それどころか殺人以外の方法でコードによる犯罪を歯止めする方法など存在しないと言ってもいい。

そもそもコードには形がない。故に悪意あるものにコードが渡り、今回のように他人を使って自分の手を汚さずに犯罪を犯されれば、本当に捕まえることすらできない。

「なに、そんな落ち込む必要は無いさ」

空はやはりその事実を受け止めながらも、のん気にそう返す。

「俺が今回アンタから依頼されたのは通り魔事件の調査、および、それを終わらせることさ」

「まさか……殺すつもりじゃないよな」

「冗談。犯罪なんて犯したって、国に金がパクられるだけで何もいい事がない」

「ならどうするつもりだ?」

「簡単な話さ。無いモノは作ればいい。ただそれだけ」

「……まあ人すら殺さなければ何をしようと構わないさ。ある程度のことならこっちで揉み消す」

「揉み消さなければいけないような事は……するつもりも今のところは無いが、協力して欲しいということはあるかもしれない」

「その時は連絡をくれ」

「ああ、分かった」

その言葉を最後にして二人はそれぞれ別の道へと歩を進めていった。



コード。

簡単に説明してしまえば、異能や超能力の類に入る自然的な"人為現象"だ。

コードの会得条件は、過去に絶望してしまうような事象を体験している者。

またコードには『後継』と呼ばれる他人のコードの奪取ができる。

しかしコードは最初からそう言ったものではなかった。

嫉妬、怨嗟、憎悪、拒絶。そんな人々の中にある感情を抽出し、結果、異状になってしまったもの。それがコードの原形。それを使い、預言者や呪術師などと呼ばれていた本物もいた。

それがいつの間にか、本当に形のない現象(,,)だったものが、とある事情により世界をあらゆる形で変えてしまうコード(,,,)になってしまったのだ。

だが濁川空にとってはそのような経歴には興味が無い。

そもそも濁川空にとってはコードであろうと魔法であろうと異能であろうと銃火器であろうと情報であろうと駒なのだから。深く知る必要性が無かった。

ただそれが自分にとって使えるのか使えないのか、それ以外の情報は必要では無かった。

「…………こいつか……」

刑事と別れた後、空はそのまま直接近隣にある図書館に来ていた。

理由は一つ。通り魔の黒幕が誰なのかに対するヒントを得ようとしているのだ。

通り魔事件の最初の事件とされるものは半年前。夜中に一人の男性が殺された事件が始まりとなる。

それから三人連続で男性が殺され、その後に同方法で女性にも犯行が及んでいる。

しかし奇跡的に女性は一命を取り留め、通り魔につけられた傷も癒えていったそうだ。

「やっぱ……女か…………」

薄々コードに関しては、どういう現象を起こせるのかは分からないが、どういう制限があるのかは察しがついてきた。

いや、もっとはっきり言ってしまえば現象もおぼろげではあるが分かってきている。

あとはもっとも重要である、誰が使っているか、という問題点だ。

「…………やっぱ、こいつを辿るしかないよな」

通り魔事件最初の被害者の男性。もしも通り魔が突発的な犯行では無くて、理由や法則性がある犯行ならば最初の事件は一番重要なカギとなるだろう。

その被害者の男性の名前を携帯のメモ機能を使って保存し、空は図書館を後にした。

会話が分かり難いと思いますが、まあ仕方が無いよねぇ……アマチュアですもの

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