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Empty idea  作者: 坂津狂鬼
《下位上達》
18/18

Unpleasant

「濁川君、濁川君! 大事件だよ!!」

梅雨も明け、太陽の日差しが照らしつける夏の雰囲気に見合った少女の声が部屋へと響く。

少女の大声に対して、まず少年は氷のような冷たい視線を向ける。

何も声がうるさい事だけでそんな目を向けたわけではない。とある喧嘩の後から少女は色々と突っかかってくるのだ。少年のことを知ろうとするが故の行動なのかは知らないが、それが少年にはとても迷惑なことだった。

その少女が今度は大声を上げて、いつかの時と同じようなことを口にしている。

悪い予感しかしないために思わずそんな視線をむけてしまったのだ。

「どんな事件だ? また告白でもされたか?」

「惜しい! 網野君が謝りにきたの」

「網野が…………?」

網野とは先日、少年が八つ当たりのために恥をかかせてボコボコにした不幸な男子学生の名前である。

その網野が少女に謝りにきた。これは一体どういうことなのか。

別に網野は、少女を殴ったわけでもない。

それこそ復讐に出向いてきたものも、黒幕の正体を明かされて、そちらに矛先を変えたのだ。

だから網野が少女に謝る必要などないはずだが。

「そう。襲おうとしたから、だって」

「ふーん……そうか」

「それと濁川君にも伝言があって」

「俺にも?」

「これからはコードを使わずに生きていこうと思いますって」

「へー……」

特に心が揺さぶられるような台詞ではなかった。

少年にとってはどうでもいい道端に落ちている小石と同じ程度の重みしかない言葉だった。

「……あのさ、濁川君」

「ん? なんだ沈村、働く気にでもなったか?」

「網野君に言ってたことについてなんだけど……」

「またそれか」

最近よく問いかけられている。

少女、沈村四葉はことあるごとに少年が網野へと言った言葉について問いかけてくる。

何故そこまで気になるというのか。少年にしてみれば大した言葉でもないというのに。

しかしならば少年もその問いかけに対してしっかりと返してやればいいのだ。

だというのに少年も回答を拒否している。そのせいでこのイタチゴッコはいつまでも続いてしまうのだ。

「なんで網野君にあんな事を言ったの?」

四葉の問いかけに対して少年は黙り込む。

ここでこういう対応をするからいつまでも問いかけてくる。そのことについては少年も理解していた。

ならば嘘の回答をしてやればいいのだ。

「網野健司を間違った道から、正しき道へと戻してやるためさ」

「嘘吐き」

すぐにバレるという予想はついているが。

「なんで網野君を悪じゃないって言ったの?」

「普通そうだろ? 濁川空は非常に残念なことに悪だ。そしてそれとは違う網野は悪ではない。そうなるだろ?」

「でも、似てるって言ったじゃん」

「考え方は似ていた。だが生き方が違っていた。ただそれだけの話だ」

「じゃあ……アイツっていうのは誰?」

四葉の質問に対して、少年……空はまたしても黙り込む。

これ以上、質問に答えることはできない。これ以上、答えるのだとしたら嘘が吐けなくなる。

だから黙るしかない。空はこの事について口が裂けても言いたくはないのだから。

「……やっぱり…………答えてはくれないんだね」

「俺とお前は赤の他人だ。これ以上の質問は、赤の他人にするには少しばかり深過ぎる内容だからな」

「じゃあ、赤の他人じゃなくなったら答えてくれるの?」

「なんだ。俺と付き合うとでもいうのか?」

「訊きだせるんなら」

四葉の回答に思わず頭を痛めた。

そこまで彼女が気に掛ける発言だったとは空自身が思っていなかった。だからあの場に四葉がいても問題ないという風に仮定した。

だが結果はこれだ。どうしてかは知らないが、彼女の興味を惹いてしまった。

酷い結果だ。空が一方的に話す内容に興味を示すなど、皆目見当もつかなかった。

「分かったよ。お前と付き合わされるなんて死んでもごめんだからな、サラッと答える」

案外簡単に空は白旗を上げ、その空に対して四葉は少し期待を込めた眼差しで見つめる。

それもそうだろう。延々と先延ばしにされ続けた回答がようやくされるというのだ。

その内容がどういうものであれ、期待するのが筋だろう。

「昔々、バカな三人がバカらしくつるんでいました。ある日、そのうちの一人がある事件によって傷付けられました。残りの二人はそれが原因で特殊な異能を手に入れて、片方は偽善者へ、片方は外道な悪魔へと進化しましたとさ。おしまい」

「…………えっ?」

「ようはアイツっていうのは昔の知り合いさ。名前も忘れた。思い出したくもない」

「……何か、されたの?」

「いや別に。俺はアイツの事が嫌いだったけど、アイツは俺の事が嫌いじゃなさそうだったからな。何か嫌な事をされたってわけじゃないよ」

別に重々しいく語ったわけでも無い。逆に淡々と、いつもの空らしく飄々と、ありのままに語った。

だから四葉もそれ以上は訊く事ができない。聞いたところで答えてくれる気がしなかった。

「ほら、帰れ。お前が言いたかったことも聞きたかったことも両方終わっただろ」

「えっ、ちょ、まだ飲み物飲んでない」

「いい加減にしろ。あれは客用なんだ。お前にやるためにあるんじゃない」

「そんなぁ……酷いよ、外道!」

「どっちがだ。バーカ」

空はどうにかして四葉を部屋から叩き出ろうとするが、四葉が抵抗してきて上手くいかない。

だがそれでいい。別に上手くいかないことも馴れている。

笑いそうになっていることを悟られない様に、表情を引き締めて、空は四葉といつも通りの口論を始めた。

展開が早過ぎるとかもっと深く内容をかけとか言われたって、思いついたの土曜日だったし軽いプロット作ったのも土曜だし本文書いたのも土曜だし昨日は寝てたし、色々事情があるんですよ。面倒だし。

ともかくこれでまたしばらく更新致しませんので。

さらば!

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