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Empty idea  作者: 坂津狂鬼
《下位上達》
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「濁川君、濁川君! 大事件だよ!!」

梅雨の時期特有の躁鬱な雰囲気とは真反対な少女の大きな声に少年は冷たい目線を向けた。

彼がそんな視線を少女に送った理由は、大声がうるさかった、だけではなかった。

そもそも少女はここ最近、当たり前のようにここに通い詰めているがそれ事態が迷惑だった。

ここは彼の住処であり、同時に仕事場でもあるのだ。

そこに毎日、仕事もせず、仕事をもってくるわけでもなく、ただ遊びに来ている少女は鬱陶しい存在だった。

そんな少女に対して、正直なところ応答したくはないのだが仕方なく少年は言葉を返す。

「どんな事件だ? 死人でも生き返ったか?」

「違う、違う! その……私が告白された!!」

「…………は?」

部屋に溜まった湿気と少女の話題がますます少年の目から生気を奪っていく。

少年はただでさえ行動も言動もしたくはない心情だというのに、よりにもよってこの少女は自身がモテるということを自慢しに来た。

わざわざ雨の日に学校からも遠いこの場所に来て自慢とは、この少女は自己顕示欲が高い方なのかもしれない。

適当な根拠もない結論を導き出した後、少年は静かに問う。

「それで、どうしてお前に対しての告白がここに来る理由になるんだ。沈村」

「どうしてって……調査して欲しいからだよ」

少女……沈村四葉は当然のように少年の問いに答える。

しかし四葉の反応とは裏腹に、少年の方は驚愕のあまり腰を抜かしそうになった。

もしかして、いつも遊びに来るだけの役立たずである沈村四葉が自分に仕事を持ってきた……?

あまりにも予期していなかった事態に声が震えそうになったが、どうにかそれを抑えつけ少年は条件を口にする。

「言っておくが、俺は金を払われなければ仕事はしないぞ」

「3000円でいい?」

驚嘆しそうになる口をどうにか理性で抑えつけて、少年は四葉のことを改めて認識し直した。

どうやらこの少女でも役に立つときはあるらしい。自分から仕事を持ってくるなんて。

割と普通の仕事がこない少年にとってはたかが一人の調査などは暇潰ししながら金銭を貰えるようなものだ。

一手失敗したら地獄行きのようなリスクもない。

「よし受けた。それで沈村、そのお前に告白した目が節穴の奴は誰なんだ?」

「それが分からないから濁川君に調査を依頼するんでしょ。っていうかさりげなく酷いこと言わなかった!?」

少年の発言に引っ掛かるものを感じながらも四葉は、促されるまま自身が知っている情報を言う。

網野あみの健司けんじ。年齢は私と同じくらい」

「一応聞いておくが、性別は男だよな?」

「なんで女の子に告白されなきゃいけないの……っていうかそんな状況だったらすぐ断るよ!」

「いや一応な。最近はおかしな事もよくあるから」

四葉から得れた情報は二つだけ。それでも名前が分かっているため十分な情報だった。

調査の方は明日から進めれば問題はないだろう。

そう考えをまとめて、一つ、思わず口から出てしまったことがあった。

「それにしても……こんな天然女に惚れる男がいるなんて。体目当てか」

「……濁川君、濁川君。今なんて言った?」

「えっ? …………ッ!」

沈村四葉から見た少年の感想は、最低で外道で悪魔的な変態、といったものだ。

だがそんな少年でも、普段は他人に気を遣って関係をややこしくするような発言は抑えている。

しかし四葉が依頼してきたことによる驚愕が尾を引いたのか、そんな感想が口から出て来てしまった。

少年にしては珍しい失敗であり、そして依頼主を怒らせるという最大の失敗を犯してしまった。

「濁川君は何? 私の事を顔以外は取柄のない女だと思ってるの!?」

「いや、その……」

普段の少年ならば悪態をつき、さらに酷いことを言っているであろう。

しかし今は立場が違う。今の沈村四葉は、少年にとっては"お客様"なのだ。

どんなに相手の事を、バカや天然や無能やドジっ子と思っていたとしてもそれを決して口に出してはいけない。依頼を取り消されてしまうかもしれないから。

こんな安易な依頼はまたと来ない。

「だってほら、沈村。お前は相手のことを知らないわけだろ?」

「そうだけど?」

「つまり相手もお前のことをあまり知らないということにならないか?」

「…………そう?」

「そうだよ。さらにいえば相手の網野はお前に対して、一目惚れをしたというわけだ」

「……そうなるね」

「ようは外面上だけでお前を選んだということになる。その言葉を悪く言えば、まあ、体目当てっていう言葉が見合うだろ?」

「でも、そんな言い方する必要はないんじゃない?」

「そこは……ほら、俺は外道な最低人間だから。他人のことを卑下してみる癖があるんだ」

決してそんなことはない、と少年は思っている。

しっかりと判断基準を設けて、その人間が良い人間か悪い人間かを判別するようにはしている。

ただ今は自身のプライドや人間性などを捨てて、失言をどうにかフォローする。

「ふーん……まあいいや。調査、お願いね」

「了解した。ちゃんと金に見合った仕事をするよ」

少年の発言を聞いた四葉は、それでは雑な調査になるのではないか、と少しばかり心配していた。

鬱憤晴らしの投稿です。

ですから内容が薄っぺらいとか展開が無茶苦茶とかその他色々思っても口に出さない様に。

別に出してもいいんですけど。読者少ないから。

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