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第3話「入学試験」

わたしの名前はクーア。

剣士になって、将来は剣聖さまになるのが夢です。

今は城下街に来ていて、これから通う剣士養成学校まで案内してくれるという人を探してい――


「って日記なんかつけてる場合じゃない!」


案内してくれる人は確か地図によればここらへんに。


「えー聖エスメラルダ女剣士養成学校の剣士修練候補生・総合剣士科の方はこちらです」

旗を持った女の人が居る。もしかしてあの人かな


「あ、きっとそうだ。聖エスメラルダの総合剣士科……間違いない」

わたしは剣士学校の資料を読んで確認すると急いで総合剣士科の列に並ぶ。

「結構並んでるなぁ」


わたしが列に加わってからも徐々に並ぶ人は増えていく。

軽い行列が出来てる。


「はーいみなさん集まりましたね? では今から受験カードを配りますね」



「受験カード?」

わたしがその聞き慣れない言葉に戸惑っていると受験カードと書かれた紙が渡される。


「一枚だけ取って、残りは後ろに回して」


「は、はいっ」


一つ前の人にそう言われて、わたしはその指示に従う


「はーい全員回りましたね。では竜車に乗って目的地に向います」


「えっと竜車って何?」


「馬車が竜になっただけ。最近は空の移動手段として多くの人に知られているんだけど……そんなことも知らないなんて何処の田舎者?」



知らなかった。そんなものがあるんだ。


わたし、お婆さまに教えられて基本は魔法で飛ぶものだと思ってたから。


「お喋りは駄目ですよーさっさと乗っちゃってください」


前から順番に次々と竜車に乗り込んでいく。


「さあ、次はあなたの番ですよ」


「は、はい」


竜車に乗ってみたけど中は馬車と大きな差はなかった。

外もただ馬だったのが飛竜に変わっただけみたいだし。


でも一つだけ違いがあって、それは中も外も頑丈そうな造りになってた。


なんだかこうやって見ると車というよりはカゴにでも入れられているような――そんな気分になる


「やっと順番が回って来ましたわね。ずっと立っているばかりで疲れましたわ……そうは思いませんこと?」


「……別に」


「私も特には」

竜車に乗れるのは最大四人までだった。


左下にわたしが乗って、その前には綺麗な金髪の女性――ちょっと勝ち気そうで、お婆さまがよく言ってた良いところのお嬢さまってイメージにぴったり合った。

その右に座っているのは藍色の髪の女の子――なのかな? ボーイッシュな感じで男の子に間違えそうだけどここに乗ってるから女の子で間違いないはず。


顔も体もここの中の誰よりも全体的に小さい印象を受けて、ちょっと可愛く見えた。

そして、わたしの隣に座っているのは紫色の髪をツインテールにしてる女の子。


なんだかオドオドしていて落ち着いてない様子で、もしかしたら人見知りするタイプなのかもしれない。



「あなたもそう思いますでしょう?」


「えっ、わたしは――」

そこで少し竜車が揺れる。

どうやら動き出したみたいだった。


「凄い……飛んでる」

外を見るとどんどん城下街やお城が小さくなっていく。

本当に飛んでるんだ。



「そういえば初めてみたいなこと言ってましたわね」


「うん、初めて」

金髪の女性はわたしの様子を見て思ったのかそう言ったのでわたしは頷き返した。


「初めてなら、さぞ絶景に見えるでしょうね」


「初めてじゃなくても結構な絶景だよ」


藍色の髪の女の子が言った。

とっても素っ気ない感じで無表情だった。


「た、確かにそれには同意しますけど言い方というものが」


「そういえば、皆さんのお名前はなんて言うんですか?」

わたしの隣に座ってる紫髪の女の子が遮る形で言った。

「わたくしはメリッサですわ」


「ボクはアリス」


「わ、わたしはモニカです」

その質問に最初に答えたのは金髪の女性――メリッサさんだった。その次に藍色の髪の子のアリスちゃんで、次に紫色の髪をツインテールしている女の子のモニカさんと続いた。



「君の名前は?」


「わ、わたしの名前はクーア・ダリアスですっ」


わたしが自己紹介をした瞬間に静まり返る。

つい緊張して声が裏返ってしまって、恥ずかしい。

「そう、クーアさん」


「ダリアスってもしかしてあのダリアス?」


メリッサさんは納得したみたいだったけど、藍色の髪の――アリスちゃんは納得してないらしく、じっとわたしの顔を見てきた。


「あのって?」


「だからあの――ルシア・ダリアスの?」


「剣士でありながらアースガルナの王妃になったとかいう? あのダリアスですか?」


近年稀に見る勝ち組の女剣士ですわね」


ルシアってもしかしてお母様のことかな。なんでだろう思い出せない


「た、多分違うと思うよ?」


「思う? ふーん。違うならいいけど」



「まあ、ダリアスなんてそんなに珍しい名前でもありませんし、ただ一つ気になることが」


「気になること?」


アリスちゃんからの視線から逃れられたと思ったら次はメリッサさんの標的にされてしまった。


「えぇ……あなたがよっぽどの自信をお持ちだということが」


「自信? そんなの全然ないよ!」


「それでもファミリーネームを名乗ったのは、あなたただ一人だけ」

何が言いたいんだろう。なんか嫌な予感しかしないけど


「これから行われる入学試験でどうせ何人かが“消える”のですからファミリーネームを名乗る必要はないと、わたくしは思っていますわ」


「き、消えるっ!? それってどういう」


消えるってどういうことだろう。

もしかして駄目だったら消されるとかないよね。


「失礼。正確には“落ちる”でしたわね」


「……合格しなかったら、お家に強制送還だから」


「……ははは。でも、すぐに帰るのは嫌ですよね」


なんだそういう意味だったんだ。

だったらお婆さまに合わせる顔がないな。

絶対に合格しなきゃ。



「ほら、着いたみたいだよ」


「ここが試験会場ですのね」


外を見るとそこには広大な草原が広がっていた。

というかそれ以外に何もない


「はい到着しましたよーちゃっちゃと降りてくださーい」


次々と竜車を降りていく、わたしたちと同年齢らしき人達。


そして響き渡る先生っぽく先導する数人の大人の方々。


「さてと、わたくしたちも参りましょうか」


「言われなくてもそのつもり」

メリッサさんとアリスちゃんはいち早く竜車から降りた。

それを追う形で、わたしとモニカさんも降りる


「はーいここに集まってください」


「なんか結構多いね」

なんだか城下街で見た時より人が多いような


「当然ですわ。何せわたくしたち総合剣士科だけじゃなく、剣士科と魔法剣士科もここに集まっているのですから」

剣士科と魔法剣士科というのがあるんだ。

確かに、風貌や雰囲気が違う感じがする心構えとかが違うのかな



「はい。それでは説明しますよー今から皆さんには受験に必要な――いえ、皆さんが将来、剣士として必要なものが我が学校基準であるか見定めます」


「ちなみにこれは学校案内のパンフレットにも書かれていないことだが、総合ランクがD以下のものは即不合格とする」


その不合格という言葉に周りの人達は驚きの声を上げていた。

わたしにはそれが何を意味しているのか分からなかったけど、即不合格は厳しいと思う。

出来たら、そんなこと教えてくれなかったら良かったのに。


「Dランク……普通以下はいらないと」



「そういうことだ。ではまずは剣士科希望者は一番左に並べ」


剣士科と思われる人達は一番左に列を作って並び始める。


なんというか正にわたしが連想する剣士に近い人達が並んでいるのが分かった。


わたしも剣士科が良かったな


「次に真ん中に魔法剣士科希望者、そしてその右隣に総合剣士科希望者の順に並べ」


先生の指示の下、各科の希望者は一斉に並び始める。

わたしも総合剣士科希望者の人達についていく形で並んだ。


「では試験内容を発表しまーす。ちなみにこれは学校案内のパンフレットにも書かれていたことですが改めてお伝えしますね」


「あーまずは剣士科の諸君は剣術と体術を――魔法剣士科は剣術と魔法。そして、総合剣士科は剣術・体術・魔法の全てを受けてもらう。以上だ」


全部? 総合剣士科って全部なんだ。

うぅ、益々剣士科の方が良かったかも。

体術って何の事か分からないけど



「では入学試験を開始する」


その一人の怖そうな先生の発言の後、同時に全科の試験が開始された。

わたしはまだまだ後なので退屈してたけど、先生の怒鳴り声や受けている人の――少し悲鳴みたいな声も聞こえてくる。


「なっとらんな。不合格だ」


それから次々と不合格と明言されていく声が響く。

これって合格者とか出るの? 大丈夫だよね?


「今年は合格者ゼロも、あるな」


嫌な言葉だった。

ゼロという言葉がこんなにも嫌なものになるなんて今まで思いもしなかった


「初の合格者だな。期待しているぞ」


「へへ。ありがとうございまーす」

初の合格者ということでその人に注目が集まる。

そして驚いた。何に? 服装に



「な、なんですの……あのふざけた格好は」


「……可愛い」

「なんというか奇抜な感じ?」

みんながみんな、有り得ない。

信じられないと言いたげな表情で絶句していた。

それはわたしにも分かる。

だってフリフリなドレスみたいな服装なんだよ? なんて言うんだっけ。ゴスロリ?


「不合格者、ざまぁ!」


その人は不合格者達を見て言ってはならないことを言ってしまった。

不合格者達は合格者に言われては何も言葉がないみたいで歯軋りして睨むしかなかった。

そんな様子を合格者の女の子はニヤニヤ笑うばかりで――


「あの次、あなたですよ?」


そんな人達に注目していたらいつの間にか、わたしの番まで回ってきてしまった。ああ緊張するよぅ


「は、はい!」


「受験番号と名前を」


「受験番号四十六番。クーア・ダリアスです」


「よろしい。では何から受ける」


「へ? 何から?」

えっと何があったっけ? 剣術と魔法と――


「……剣術・体術・魔法のどれを最初に受けるか聞いているんだ」



「す、すいません! じゃ、じゃあ剣術で」

とても怖そうな女の先生は軽く溜め息をつくと呆れた様子で説明してくれた。

それに慌てながら答えてしまって。



「剣術だな。よし始めるぞ」



先生から木剣を投げ渡されて、ギリギリのところでキャッチ出来た。危なかったなぁ



「持ったな。ゆくぞ」

先生はすかさず飛び込んで突きを繰り出してくる。

わたしはどうにかその動きを見てよけて斬り返した。

「なるほど。反射神経は悪くないな」


わたしの攻撃はあっさりと先生の構えた木剣で受け止められてしまう

「ありがとうございます!」


「だが――下半身が甘いっ!」



「きゃああっ!?」


先生に脚を引っ掛けられて転んでしまう。ちょっと痛い


「可愛い声で鳴くじゃないか。剣術はおしまいだ」


「本当ですか?」


「嬉しそうだな。よし次は体術だ」


な、なんで自分で決めるんじゃ


「わ、わたし、魔法が――」


「口答えするなああああっ!!」


「ひぃっ」


思わず立ち上がって先生が向かってくる方とは反対方向に端が進んで――


「こら逃げるなっ! 立ち向かえーっ!」


「だって先生が怖くて」

しばらく逃げ回って結局、わたしから体術を見せることになった。

「い、いきます。えいっ!」


「なんだその攻撃はふざけているのか。剣術の時のキレはどうした」


わたしの拳が当たらない。


「えいっやぁ!」


「駄目だな。終了だ」

全然攻撃が当たらなかった。かすりも


「次は魔法だな」


「は、はい」


「剣術はそこそこ。体術は測定不能。後は魔法で挽回するしかないな」


魔法。わたしに出来るかな


「そうだな魔法属性は――そうだな、風で適当にやってみろ」


「……はい、分かりました」


魔法。きっと大丈夫。小さい頃からお婆さまに教わってきたんだから


「携帯用の小さなに杖だ。これを使え」


私は先生が持つ杖を受け取ると眼を閉じる。

確かお婆さまは言っていた。

魔法を唱える時に大切なことは集中力と創造力だって。

その二つをきちんとしていれば魔法の方から応えてくれるって。



「じゃあいきます」


「ああ」


まずは集中。

心のざわめくを落ち着かせて魔法を唱えることだけに集中する。

次は創造――頭の中に魔法を撃つ自分のイメージを確立させる。

魔法は風魔法のトルネード。竜巻。

感じる。風が私の力になってくれる。

大丈夫いける落ち着いて。後は一心に


「――風魔法・トルネードッ!」


「な、何ぃ!? うわ、うわああああっ!」


私は静かに目を開ける。

そこにはトルネードが通ったらしき跡が残っていて、魔法成功を私に教えてくれている。

「成功、したの?」


「成功ですねークルビル先生はあなたが唱えた竜巻で飛んでいっちゃいましたけど」


クルビル先生? 多分きっと厳しい感じの先生のことかな? って飛んでったってそんなまさか


「ということで後は残った先生にお願いして。試験が終わった人は適当にくつろいでてくださいね」


本当だった。

それはこの先生の笑顔を全てを語ってる。

笑顔でも目は全然笑ってなかったから

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