表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/46

第2話「旅立ち」

わたし、クーア。

とある森の奥でお婆さまと暮らしています。

幸か不幸か太陽エネルギーで動くカラクリ人形をバラバラにしてしまって怒られてしまいました。


「あんた、また日記なんか書いてんのかい」


「うん、日課だから」

わたしはこうやって毎日欠かさず日記をつけている。

忘れっぽいしあの時はこんなことしてたんだって思い返せるから少し楽しい。


「そういえばカラクリ人形はどうなったの?」


「ああ、あれかい。あれは作り直しだよ」


「ごめんなさい……」


「別に構わないよ。あんたに壊されるようなものだったらいつかは壊れていたろうからね」



お婆さまは素直じゃない。でもそんなところもわたしは好き


「明日も箒で練習するのかい?」


「うん! わたし、剣聖になるのが夢だからっ!」


「……知ってるよ」


それからというもの、わたしは箒を色んな角度から振ったりしてた。

もちろん走ったりもした。剣聖には体力作りも大切だって本に書いてあったから。それから二ヶ月が過ぎたある日



「クーアーごはんだよーまったく……いつまでやってるんだあんたは」

「剣聖さまになるまでー」


わたしは相変わらず箒を使って練習とか色々やっていた。そこでお婆さまに呼ばれてお家に戻った



「なんだい箒がもうボロボロじゃないかい……ヒビまで入って。いったいどれだけ酷使したらこんな風になるんだい?」


「あ……」

お婆さまに言われて初めて気付いた。

よく見ると確かに箒にヒビが入ってた。

どうしよう


「まあ、良いからそこに座りな」


「……うん」


わたしはドアの前にボロボロになった箒を立て掛けるとテーブルの前にある二つのうちの一つに座る


「クーア、今日はあんたに一つだけ聞きたいことがあるんだよ」


「……何?」

お婆さまはこんなわたしに何を聞きたいんだろう。

もしかして、箒をこんなにしたことを怒られるのかな


「あんた、本当に剣聖になりたいんだね?」


「もちろんなりたいよ」


なんて当たり前のことを聞くんだろう。


わたしは剣聖さまになりたい――その一心でわたしは練習してきたんだから


「なら、ここに申し込んでおくけど構わないかい?」

お婆さまは一つの紙をテーブルに置いて、わたしに見せてきた。

そこには剣士修練生募集と大きく書かれていて


「これって?」

「剣聖になるためにはまず剣士にならないといけないからねぇ……だからまずは、ここで色々なことを剣士として必要最低限の知識を学ぶべきだと思ったんだよ」


わたしはすっかり忘れてたけど剣聖になるためにはまず剣士としてじっせき? だったかな。

それがないと駄目だって本にも書いてあった気がする


「どうだいクーア。まずは剣士学校で必要な様々なことを知って、剣士になって剣聖を目指すのも悪くないんじゃないかい?」


「でも良いの? こんなところに行っても」

剣士学校。

剣士の卵とも言うべき人達が通う学校。


確かにそんなところに行けたら、きっと剣聖の道に近付くかもしれない。でも


「細かいことは気にしなくて良いよ。あんたはまだ子供なんだから」

お婆さまはわたしの頭に手をおいて優しく言ってくれた。


「あんたはただ一言を行きたいか行きたくないか。思ったままを言ってくれたらいいんだよ」


「……い、いきたい」


少しの間があって、わたしはそう告げた。


「よく言ってくれたねクーア。そんなあんたにバースデープレゼントだ」


「え? プレゼント?」

お婆さまはテーブルの下から一本の剣を取り出して、それをわたしに渡した


「はい。これがそのプレゼントだよ」


「い、良いの? 貰っても」


「もちろんさ。まあ訓練用の木で出来た剣だからね危険性はそんなにないから安心しな」


お婆さまの言う通り、確かに見た目も街で見掛けた剣とは違ってた。

でも剣だってだけで少し嬉しかった


「ありがとうお婆さま!」


「なんだいそんなに嬉しかったのかい? そんなに喜んでくれたなら私としても用意した甲斐があったってもんさ」


うれしくてついお婆さまに抱き着いてしまった。でも本当に嬉しかった



「じゃあ早速明日から練習開始だよ! 厳しくいくから覚悟しな!」

「えっ お婆さまも一緒に?」

「当然じゃないか。剣士学校に行くんだ。少しは強くなってもらわないと困るからね」


次の日から厳しい厳しいお婆さまの訓練が始まった。

杖と木剣で打ち合うものやお婆さまが魔法を撃って、わたしがそれを避けたり木剣で跳ね返したりと思ったよりハードなもので陽が沈む頃にはヘトヘトになっていた。


「なんだいもうバテたのかい?」

「だって動きが激しくて」

お婆さまが球状の火の魔法を撃ってきてそれをわたしが避けて攻撃を加えるという訓練。軽快な動き? が必要でとても今のわたしには無理なものだった。

もうあれから一ヶ月も経って毎日練習してたから剣の扱いには慣れてきたけど、それでもまだまだだった


「確かにね。でもあんたは剣聖になりたいんだろう? 普通の訓練をしてたんじゃ剣聖なんて夢のうちに終わっちまうよ」

「わ、分かってるよ!」

お婆さまの言う通り、普通のことなんてしてたら剣聖さまになることなんて無理。だからこそ一ヶ月間もお婆さまの魔法とかに耐えてきたんだ。わたしはこの練習を剣士学校に通うことになる半年後までにもっともっと強くなるんだ


「お、お願いします」


わたしは目一杯に力を振り絞って立ち上がり。お婆さまに言った

「おお、よく立ったね。じゃあいくよ」

炎の玉、ファイアーボールがわたし目掛けて飛んでくる。

わたしはそれを右によけて、木剣でお婆さまに斬りかかる。


「少しは慣れてきたんじゃないかい?」

お婆さまをそれを軽々と杖で防いだ。

こんな厳しい練習が何日も続き、気付けば剣士学校前日の夜


「いよいよ明日だねクーア」


「……うん」

いよいよ明日、わたしは剣士学校に行く。でもここ数日、お婆さまに元気がない。

それが何なのか分かってる。

だってそれはわたしも感じていたことだから


「クーア、明日は時間がないだろうから入学祝いにこれをプレゼントしておくよ」




お婆さまは大きな箱を開いてその中をわたしに見せてきた

「明日はあんたが女剣士の卵として旅立つ日だからね特別だよ。まずはこれだ」

お婆さまが箱から取り出したのは鎧だった。

街で見掛けたものよりサイズは小さい


「これは革製の鎧なんだけどね? あんたのために作らせた特注品さ」

お婆さまは嬉しそうに語る。

わたしはこんなに嬉しそうにしてるお婆さまを今まで見たことがなかった。


「そして次は剣と鞘だ。鞘は帯剣用にベルトもついてるんだ凄いだろう?」


なんでだろう。


お婆さまは凄く嬉しそうに話してるのになんだか涙が出てきた。

お婆さまがわたしのために用意してくれたこともそうだけど、明日でお婆さまとお別れだって思うと――

「ちょっとあんた、何泣いてるんだい。剣士に涙は似合わないよ」


「ごめんなさい……お婆さま」


わたしはお婆さまに頭を撫でられて、袖で涙を拭った。


「とりあえず使い方を教えておくよ。剣を抜く――抜剣する時はこうで、剣を鞘に納める時はこうするんだ」


お婆さまは丁寧に剣の抜き方と鞘にどうやって納めるかを教えてくれた


「そして帯剣用の鞘はこうやって左腰に取り付けるんだ」


お婆さまはそういって帯剣用の鞘のベルトをどうするかを教えてくれた。

何故かそれがとてもよくわたしの耳に届いた


「よし、これでおしまいだ。後日、学校の方に送っておくからね」


「うん、分かった」


「それじゃあおやすみクーア」


そしてわたしは部屋のベッドに入って眠りについた





そして剣士学校に行く早朝。

わたしは持ち物の最後の確認をしていた。


「これもあるしこれもある。うん、完璧」


「クーア――ちょっと良いかい?」


そこにお婆さまが部屋のドアをノックして一言


「うん、大丈夫だよ」


「ごめんね。あんたに一つだけ言わなきゃならないことがあるんだよ」


「言わなきゃいけないこと?」

今この時になって言わなきゃいけないことってなんだろう。


もしかしてお別れの挨拶とか? でもそれだったらもうちょっと後だよね


「ああ……実はね、あんたは私とは縁もゆかりもないんだよ」


「えっ」


縁もゆかりもない? わたしはずっとお婆さまのこと、本当の


「あんたのフルネームはクーア・アースガルナ」


「それがわたしのフルネーム……」

そういえば初めて自分のフルネームを聞いた。

でもアースガルナって何処かで聞いたことあるような


「あんたも聞いたことあるかもしれないけど言うよ。アースガルナとは強いものが全て上に立つ実力主義の国・アースガルナ王国」


「そ、それって……」



その言葉を聞いてお婆さまが何を言いたいのか分かった。

分かってしまった


「そう、アースガルナなんて国名になるような名前は王族の人間のみが持っている。つまり、あんたはアースガルナ王国のお姫様なんだ」


「し、信じられないよ」


嘘に決まってる。

そう思いたかった。


でもお婆さまの瞳も顔も真剣そのもので、あのお婆さまがこんな日に嘘なんてつくなんて、わたしにはどうしても思えなかった


「信じられなくても当然だよ……でも事実なんだ。そしてあんたに言っておかなければならないことは――アースガルナという姓を名乗ってはいけないということなんだ」


「ど……どうして?」



「今も言った通り、アースガルナという名前は王族のみが付けることを許されている。だからその名を名乗れば色々と大変なことになる」



大変なこと、わたしがアースガルナを名乗ってはいけない理由


「大変なことって?」


「“剣聖になれなく”なる」

「あっ……」


そうだ。

もしわたしが本当にお姫様だったら剣聖になることはもちろん、剣士になることだって



「だから母親の姓を名乗ると良い。母親がアースガルナ王に嫁ぐ前のファミリーネームはダリアスだ」

「ダリアス……」

「ああ、だから名乗る時はクーア・ダリアスと名乗ると良い。ダリアスは特に珍しい名前というわけではないからね怪しまれることはないだろう」


クーア・ダリアス。それがわたしの名前


「おっと長いこと話し込んでしまったね。早くいかないと遅れてしまうよ」


「あっ、本当だ」


時計を見るともうすぐ出ようと決めていた時間が近付いていた


「準備は出来たかい」


「うん」


「忘れ物はないね?」


「大丈夫」

さっきも確認したし問題ないはず


「じゃあまたねクーア」


「うん、また」



わたしは必要な荷物を持って家を出た。


持ち切れない荷物は予め送ったり、後で送ったりしている。


「外に出るの久しぶりだなぁ」

森を出て道なりを歩くと馬車が通りがかるところだった


「あのすいません馬車、乗ります!」


馬車に乗って東の城街まで。

そこまで行けば案内してくれる人が来てくれるらしい



「ありがとうございましたー!」

わたしは馬車に乗せてくれたことに頭を下げて礼を言った。


馬車が見えなくなって、城下街に入っていく



「一人で来るの初めて……」

半年ぶりくらいに来る城下街。

前はお婆さまと一緒だったけど今日は一人――なんだかこれからの期待と不安で胸が一杯になった




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ