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第2話 予言の子

静寂が部屋を支配していた。


薄暗い石造りの広間。


中央に立つ少年――クロト。


彼を囲むのは、魔界の頂点に立つ四体。


常人なら、その場で気を失っている。


だがクロトは動かない。


いや、動けない。


恐怖で足が硬直しているだけだが、

結果としてそれは“威厳”になっていた。


ゆっくりと、彼は口を開く。


「……まず確認しよう。」


声は低く、抑えられている。


本当は喉が震えている。


「なぜ、俺はここにいる。」


間。




視線が四天王を射抜く。


「そして――お前たちは何者だ。」


完璧な強者ムーブだった。


内心では。


(頼むからちゃんと説明してくれ……!)


と全力で祈っている。



そのとき。


痩せ型の男が、静かに前へ出た。


そして、迷いなく片膝をつく。


「失礼いたしました、我らが王。」



その声音は恭順に満ちている。


巨体な化け物も、女性も続く。


少女だけが腕を組んだまま不満げだが、膝はついた。


痩せ型の男は顔を上げる。


「ここは魔界。

 そして我らは、魔王軍幹部――魔界四天王。」


クロトの心臓が一瞬止まる。


(魔王軍!?ガチのやつ!?)




だが表情は微動だにしない。


男は続ける。


「先代魔王様は、三ヶ月前に崩御なされました。」


空気が重くなる。


「その瞬間より、魔界は揺らいでおります。」


魔王不在。


それは支配構造の崩壊を意味する。


「魔界のみならず、オーク、ヴァンパイア、コボルト、悪魔……

 様々な種族が集って形成された魔王軍ですら、混乱の最中。」


巨体の化け物が低く唸る。


「王なき軍は、獣も同然。」


女性が静かに目を伏せる。


「人間界との停戦も、いつ破られるかわかりませんわ。」


少女が舌打ちする。


「内部でも“次の魔王”を巡ってゴタゴタしてるしね。」


クロトはゆっくりと顎に手を当てた。


考えているふりだ。


実際は。



(え、俺帰れない感じ?)



男の瞳が、狂信的に細められる。


「しかし、先代魔王様は最期に、こう仰せられました。」


静寂。




「――“予言の子を、召喚せよ”」




空気が震える。


「我ら四天王、全員の魔力を注ぎ、禁断の召喚を敢行。」


女性が微笑む。


「その結果、現れたのが――あなた様。」


化け物が拳を握る。


「魔力は感じぬ。だが、その静謐さ……ただ者ではない。」


少女がジト目で睨む。


「本当にそうかなぁ?」


クロトは、目を閉じた。


情報量が多すぎる。


整理しろ。


漫画でよく見る展開だ。



“選ばれし者”。


“予言の存在”。



だが、彼には魔力がない。


戦闘力ゼロ。


どう考えてもハズレだ。


だが。


ここで否定すれば、終わる。


クロトはゆっくりと口を開く。




「……なるほど。」




沈黙。


四天王が息を呑む。


「状況は理解した。」


(してない。)


「貴様らが混乱しているのもな。」


(してるの俺だよ。)



男の瞳が潤む。


「やはり……!」


クロトは視線を巡らせる。


「名を聞こう。」


短く、命じるように。


「四天王――順に名乗れ。」


その言葉には、王の威圧があった。


完全に偶然だが。



男が深く頭を垂れる。


「悪魔族代表、ロキ。

 魔王という存在そのものに、我が身を捧げる者。」



次に、豊満な影が一歩前へ。


ドラグニアが優雅に一礼する。


「竜人族代表、ドラグニア。

 魔王様の側近として、全てをお支えいたしますわ。」


甘く、包み込むような声。



続いて、巨体が進み出る。


グラドが拳を胸に当てる。


「コボルト族代表、グラド。

 力こそ我が誓い。王と認めた者には命を尽くす。」



最後に。


ブラッディが面倒くさそうに肩をすくめる。


「ヴァンパイア族代表、ブラッディ。

 あんたが本当に“王”なら、使ってあげてもいいわよ?」


挑発的な笑み。


四人の視線が、再びクロトへ集まる。


重圧。


圧倒的重圧。


だが彼は、ゆっくりと頷いた。


「……悪くない。」




…しかし内心は


(終わった。俺、完全に魔王ルート入った。)



その日、魔力ゼロの少年は、


魔界の頂点に立つ存在として


正式に認識された。


本人の意思とは無関係に。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

こっちは少し更新遅くなります;;

申し訳ないm(_ _)m

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