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経済ノワール小説『血の配当』  作者: 如月妙美


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エピローグ 配当の行方

 一週間後。  新聞の社会面の片隅に、小さな記事が載った。  

『弁護士・佐久間氏、事故死。運転中の心不全により崖下に転落か』  警察は事件性なしと判断したようだ。仕事が早い。

 そして経済面には、もう一つの記事。  『赤城中央百貨店、大黒社長からの二十億円の増資と地元企業連合による支援で再建へ。老舗の灯守る』  大黒重蔵は、あの地下倉庫をどうしたのだろうか。おそらく、氷室の助言通りコンクリートで埋めてしまったに違いない。昭和の亡霊は、再び深い眠りについた。

 西麻布のバー『G』。  氷室は、いつもの席でバーボンを傾けていた。  隣には、新しいスーツを着た葛城が座っている。上等なイタリア製の生地だ。

「入金は確認したか?」

 葛城が尋ねた。

「ああ。約束通りだ。税金のかからない、血塗られた配当金だ」

 氷室はポケットから封筒を取り出し、葛城に渡した。  成功報酬の分け前だ。中身を見もせずに、葛城は懐に入れた。

「で、次は何をするんだ? 50億もありゃ、南の島で一生遊んで暮らせるぞ」

 葛城がグラスを掲げた。  氷室はグラスの中の氷を回し、カランという音を楽しんだ。

「いや。……また、腐肉の匂いがする」

 彼は一枚の名刺をカウンターに置いた。  今日、届いたばかりの新しい依頼だ。  『医療法人 徳善会 理事長』。  巨大病院の買収案件。そこにもまた、黒い噂と、蠢く欲望の気配がある。

「仕事だ、葛城。死神の鎌は、錆びつかせちゃいけない」

 氷室は不敵に笑い、琥珀色の液体を飲み干した。  夜の西麻布に、パトカーのサイレンが遠く響いていた。それは、新たな獲物を告げるファンファーレのように聞こえた。

(完)


※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・事件等とは一切関係ありません。



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