表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/34

008.冒険者ギルド

 ルシュガルの中央通りを進む。

 すると冒険者ギルド「シーブンファーブン」の看板が見えてきた。


 オレンジの塗り壁に、赤茶色の化粧柱が可愛らしい外観だ。

 

 玄関の扉を押し開けると、木の温もりが感じられる開放的な空間があった。


 なんだか思ってたんと全然違う……。

 

 冒険者ギルドと言えば、武骨な猛者たちが集う殺風景なところを想像していたが、ここはまるで都会のカフェだ。

 

 時刻は昼すぎ。

 そのためか、人はまばらで落ち着いていた。

 

「――こんにちは。依頼をしたいのですが受付はここですか?」

「はい! どのような内容でしょうか?」


 クシードは受付にいたモカ色のウサギ耳の女性に話しかけた。

 受付嬢は、元気な声と笑顔を向ける。


 同時に、受付嬢はクシードの後ろにも視線を向けた。


「あれ? ミルフィさんじゃないですか?」

「なんや? 知り合いなん?」


 ミルフィはコクリと頷く。


「筆談の“方言”女子、ミルフィさんですからね!」

「カッコええ通り名持っとるやん!」


 クシードが茶化すと、ミルフィは赤面し、手にしていたスケッチブックで顔を隠した。




 

 

 和やかな雰囲気の下、クシードは受付嬢に護衛の募集について聞く。


「んー……、オウレは今、軍が駐屯している最前線ですからね」

「……最前線?」


「はい! ロクエティアに抵抗するため軍が置かれているんです」


 受付嬢が言うには、ルシュガルから西へ向かうとロザーカと呼ばれる西側の最大都市があるらしい。

 その先に、ミルフィの故郷オウレがあるのだとか。



「――カロッサ・ヴァキノからロザーカは、直線距離で大体150()ぐらい離れています。結構遠いですよ!」


 受付嬢は地図を広げて指でなぞる。

 

 なるほど。

 確かに遠い。


 道はまっすぐじゃないので、実際はもっと……、いや、結構あるな。


 そもそも“1ル”が何キロメートルなのかはわからないが……。

 どこかのタイミングで確認が必要だ。

 

 それに、カロッサ・ヴァキノとロザーカ間は鉄道が通じていたが、ロクエティアによって破壊されてしまい、今は街道を通るしかないとのこと。

 

 つまり、移動は徒歩がメイン。

 長い日数がかかる。

 道中も安全が保障されていない。

 

 さらに、護衛は同世代の女性限定という条件付き。

 

 コミュ障のミルフィは異性相手には緊張して話せない。また、“今までボッチだったので、ガールズトークをしたい”という理由もある。


 何ともお気楽な……。

 

 同性だから気を遣わなくて良さそうであるが、命を預ける護衛がそんな友達感覚で良いのか、とツッコミたくなる。

 

 そのため、護衛探しは難航の一路を辿った。



 しかし、護衛探しが厳しいのは逆に好都合である。

 そのタイムラグを利用して、他に仕事を見つけるつもりだ。

 

「……話変わりますけど、冒険者の仕事って何をするんですか?」

「冒険者業は()()()()退治がメインです! 他にお使いや草むしりといった雑務もありますよ!」


「モノノケ?」


 知らない言葉。

 クシードの眉が歪む。


 

「……んーと、憲兵さんの業務外のお仕事ですね! 企業さんからの依頼で、輸送車や馬車の護衛、出張退治が多いですよ」


 どうやら元の世界のモンスターと同じような認識で良いだろう。


「その冒険者って、誰でも簡単になれるものなのですか?」

「はい。身分証さえあれば登録できますよ!」


 そう言って受付嬢は、反対側にあるカウンターを指差した。


「実は、ミルフィさんも冒険者なんですよ!」

「ウソやん!? マジで!?」


 ミルフィは気まずそうに視線を逸らした。


「メッチャかっこええやん!」

 

 本当に誰でも簡単になれそうだ。

 だが、身分証が必要となるとハードルは一気に上がる。


 あぁ、そうだ――。


「――そういや、身分証を無くしとったな」


 

◆◆◆


 

 受付嬢からアドバイスをもらい、クシード達はルシュガルの行政庁舎へやって来た。

 庁舎は街の中央部に位置し、地上12階建と他の建物より圧倒的に高い――が、高層ビルに見慣れたクシードからすれば、なんということもなかった。

 

 身分証は1階にある、戸籍管理課で発行できるそうだ。

 

 早速、足を運び再発行を申し出る。

 

「――再発行ですか? 無くした経緯を聞かせてください」


 対応にあたったのは、シワが刻まれた目元の渋い男性職員。


「経緯かぁ……? なんや、思い出されへんなぁ……」

「その発音……訛り……、もしかして西側からの疎開者でしょうか?」


「……まぁ、そんな感じですね」


 

 “異世界人に身分証は発行できるのか?”

 単純な疑問がクシードにはあったが、会話を重ねてきたミルフィの喋り方にヒントがあった。

 

 彼女の話し方はこの国の西側特有の言葉遣い。

 幸いにもクシードの話し方と類似していた。

 

 それに役所の記録は紙ベース。

 電子照合のような機器類は見当たらない。

 

 これは何世代も前のやり方だ。


 それに災害などの緊急事態により、身分証を無くしたなんてよくあること。

 こうやって“疎開中に紛失した”ことにすれば案外すんなり行くかもしれない。

 とクシードは読んでいた。


 

「――ここまで来るの大変でしたね」

 

 彼の目論み通り、“疎開者”と言う言葉に、職員は手慣れた様子で、引き出しから1枚のカードを取り出す。


「これに名前を書いて、魔力を注いで下さい」


 名前はミルフィに代筆してもらい、クシードはカードを手にした。


 そもそも“魔力を注ぐ”とはなんだろう。

 よくある創作物同様、何かをイメージすればよいのだろうか。


 カードを指で挟み、魔力的な何かを念じるようにクシードは目を瞑った。

 


「……こんなもんで、いいですかね?」


 クシードはカードを職員に渡す。


「あぁ、無属性なんですね。久しぶりに見たな」

「えっ!」


 まさかの魔力持ち――。

 異世界転移の特典だろうか。

 

 珍しい属性とか特殊性があり、異世界転移の主人公っぽくて良い。


「ちなみに、無属性の人って、結構珍しいのですか?」


 思わずテンションが上がり、少し興奮気味で聞く。

 

「んー、100人に1〜2人ぐらいですかねぇ」


 地味に多いやんけ。

 血液型で言えばAB型みたいな感覚で言われた……。


 


 

 ――こうして、クシードは無事に身分証を取得できた。


「これで冒険者登録ができるんやな」

「……?」


 ミルフィは首を傾げた。


「あーいや、その……、冒険者登録するんも、ミルフィも冒険者やん? 通訳するんには、同行せんなんから、オレもしておいた方がええかなぁ〜、って思ってん」


 苦し紛れの説明をしながら、クシードは再びシーブンファーブンへと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ