1.「借金まっしぐら☆」
「沼をナメてたーーーーー!!!!」
月島三日は、己の愚かさを呪いながら頭を抱えていた。
一度ハマれば最後、自力脱出はほぼ不可能——
そう、ホスト沼である。
「いやいやいや去年の夏、私の口座には248万円あったんよ!?!?」
なのに!昨日は給料日だったのに!!今の口座残高は6万7千円。
「いや、おかしいやろ!? こんなん数学的にありえん! どこで何がどうなった!?!?」
——いや、分かってる。
3時間前のこと。
担当・紅輝のキラースマイル。
「来月のバースデー、来てくれるよね?」
三日:「うん! 行く!!!」(もはや自動音声)
結果。
30万円の支払いが確定(※完全なる自滅)。
残された時間は2週間足らず。
(え、待って……どうするの私!?)
ホストに通い始めた頃の誓いを思い出す。
「貯金ゼロになったら撤退!」
……が、今そのゼロ地点に立っている。
そして、踏み越えようとしてる!!
「いやぁぁぁあああ! どうしよう! お金! お金!!!」
完全に頭がショートした私は、スマホを掴んで検索ワードを打ち込んだ。
「借金 低金利」
「無利息 期間」
「キャッシング カードローン 違い」
(いや、待てよ……借金するくらいなら働けばいいのでは……?)
「夜職 未経験」
するとその時、スマホ画面にメッセージ通知が——
ハル『明日ひま?ちょい手貸して。来れたらでいいから漫画手伝って』
「……お?」
ハルこと雨宮晴花は、高校時代のイラスト部の先輩で──いや今それどころじゃないんだが!?!?
なんでこのタイミング!?
私、「絶対締め切りヤバい」って時だけ呼び出される召喚獣かなにか!?!?
彼女のマンガはクセ強すぎて、手間暇かかる地獄作業なんだけど……たまに手伝うし、それ以外でも月に一、二度会ってるし……でも無理やろ、私それどころじゃないんだってば!!!
テンションMAXでパニクりながらも、三日は「人生初の借金」と「友人の手伝い」との狭間で揺れ動くのであった——。