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政治経済エッセイ

「高校授業料無償化」が空前の愚策であることについて

作者: 中将

筆者:

 本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。


 今回は2月25日に自公維3党が、高校生のいる世帯へ、

 私立に関しては2026年度から所得制限を撤廃して額を引き上げることなどで合意している「高校授業料無償化」について個人的な意見を述べていこうと思います。



質問者:

 でも、私立学校については授業料などの金額はまちまちになりますよね?


 それを「無償化」とは一体どういう事なんでしょうか……。


 際限なく認めてしまうという事なんでしょうか……?



◇「高校授業料無償化」と言うより「授業料分を高校に給付」する制度



筆者:

 まず、この制度は個々のご家庭に給付されるものでは無く、

「高校に対して給付されることによって授業料を下げることが期待される」ものであって、実際のところは「高校にたいして授業料分を補填」という感じの制度と言えます。


 これは「ガソリン補助金」と似たような構図であり、「本来下げるのに必要な金額」以上にお金を賭けるという非常に効率の悪いシステムとなっています(3兆円で良いところを6兆円拠出、その差額分は利益と役員報酬と配当に回っていることでしょう)。


 また、現在においてもこの「高校授業料補填」は行われており、

 「高等学校等就学支援金制度」と呼ばれています。


 具体的には現行制度の公立高校の場合では

 世帯年収が約910万円未満なら、月額9,900円(年間11万8,800円)が支給され、実質授業料は無料となります。


 私立高校の場合では、


・世帯年収が約590万円未満の場合は、最大で月額33,000円(年間39万6,000円)の支援が受けられます。

 

・世帯年収が約590万円以上910万円未満の場合は、公立高校と同じく月額9,900円(年間11万8,800円)の支給となり、私立高校の実際の授業料との差分は家庭負担となります。

(学校側が世帯ごとの年収に応じて授業料を階層的に設定している)



 現在議論されている案では私立高校の高校授業料について、

 与党案では世帯年収590万円未満は現行助成額39万6000円を維持するものです。


 それに対して維新案では現状910万円未満に限られて助成されているものを世帯年収問わず45万7000円~最高63万円支給(恐らく既に東京や大阪では“無償化”は始まっているのでそれに上乗せられる)まで引き上げと言う方法を考えているようです。

(また、公立高校の11万8800円を世帯年収910万円以上にも適用)



質問者:

 学校の裁量で元の価格設定が決まっちゃう感じなんですね……。

 

 ちなみに、この「高校授業料無償化」について「憲法違反だ」という理論もあるようなのですがそれについてはどうなんでしょうか?



筆者:

 憲法違反を主張している方々は、


 日本国憲法第26条の「義務教育は、これを無償とする」と明記しているだけであり、無償化の憲法上の義務は原則として小・中学校などの義務教育に限定されるのではないか? 


 それを超えた高校や大学といった義務教育外の教育段階まで完全な無償化を国家に義務付けると、憲法が保障する「教育を受ける権利」の範囲を越え、結果として国民全体に対する過度な財政負担や、納税者の財産権を侵害、選択自由の制限などが起きているのではないか? 


 と言う理論を展開しているようです。


 しかし、高校に関しましては日本国民の進学率は99%を記録しており「事実上の高校義務教育状態」とも言えるわけです。


 ただし、学歴によって憲法14条の社会的身分又は門地の差別に事実上あたるのではないかという懸念は残ります。


 本来であれば「学歴フィルター」という概念自体がこの日本から消滅させ、「人物の能力」を純粋に評価する社会的風潮が大事だと思いますね。


 それは本題から逸れていくのでさておいて、この指摘についてはちょっと的外れではないかなと言うのが僕の感覚としてはあります。



◇現状では、授業料が下がらないOR私学の教育制限が起きる



質問者:

 では、本当に懸念すべきことはどういう事なんでしょうか?



筆者:

 2月21日に国会で議論されたこととしましては「新たな給付金額分高校が値上げをするのではないか?」という事です。


 石破首相はそう言った質問に対して「便乗値上げあってはならない」としたものの、具体的に何か策が示されたわけではありません。



質問者:

 確かに、何も対策をしなければ高校側に価格設定権があるわけですから「便乗値上げ」があってもおかしくは無いですよね……。



筆者:

 それを防ぐために僕が考えたプランでは「数年間は授業料を据え置く(物価上昇率分のみの調整を許容する)」という制度が良いと思います。


 物価高まででも苦しいと思うのですが、学校に対して全く値上げが出来ないというのも経営難になってしまうので、ここら辺が落としどころとして有効だと僕は思います。



質問者:

 なるほど、それなら便乗値上げを防げそうですね。



筆者:

 逆に学校の「授業料ゼロ」に拘るのであれば、ガチガチに高校の教育を縛り上げて「私学の自由度を下げる」と言った可能性が懸念されます。


 学校側の十分な予算が確保できない場合、人員カットやカリキュラムの見直しなど「教育の質の低下」が起こりうるのです。


 そうなるとどこの学校も同じような授業になり、結果的に「学校がどこもつまらない」と言った現象が起きるわけです。



質問者:

 それはかなり嫌ですね……。確か以前のお話では大阪がそうなりかねないという感じでしたね……。


 これについてはどうしたら良いんでしょうか?



筆者:

 基本的には現在のような「補填」という制度のままで進めた方が良いと思いますよ。

 先ほどのようなケアをすれば「便乗値上げ」も無くなりますしね。



質問者:

 でもそうなると、公立高校から私立高校に流出しちゃいませんか?

 「割引額」として見たら私立高校の方が大きいので、「教育の質」を考えたら私立高校の方に流れてしまうような……。



筆者:

 僕もそういう意味での「教育格差拡大」を懸念しています。


 これは「そもそも論」になると思うんですけど、

一番良いのは高校生のお子さんのいる親に子供一人当たり現金60万円を配るのが高校教育についてはベストな政策だと言えます。


 経済的余裕が無いご家庭ですと、公立高校に入学させてその浮いたお金を「予備校に通わせる」「大学進学の費用に回す」と言った他の選択肢に資金を投入することも可能になりますからね。



質問者:

 確かに……「そもそも論」になっちゃうところがもう……という感じですけどね。


 どうして個々人の世帯に給付してはくれないんでしょうか?



筆者:

 一つは「国が高校生1人当たり60万配りたくない(セコイ)から」と言うのと、

 もう一つは文部科学省の「事実上の天下り」が大学だけでなく各有名高校の上層部に巣食っているのだと思いますね。


 元お役人を雇う事によって便宜を図ることを集団的にやっているので非常に強力に「あまり効果が無いこと」が推進されているという事です



◇「財源」を言うのなら「実効性が高い政策」を優先するべき



質問者:

 本当に利権だの天下りだの聞いていて酷い話ばかりですね……。



筆者:

こんな穴だらけで実効性が怪しい「高校授業料無償化」なのですが、

「予算を自然成立期間までに通す」ために議論し尽されるとは思えません。


 そして、日本維新の会は野党から「抜け駆けして、実績作り」をしようとしているようにしか見えません。


 「財源」には8000億円ほどで済むそうので、7兆円かかる「所得税の壁を178万円まで引き上げ」より“安くつく“という事で採用されようとしているんです。


 安くつく「子育て支援策」は全くやるなとは言いませんが、「やった感」があるだけでほとんど「少子化対策」にはなりません。


 「貧困対策」の方が「少子化対策」に最も近いのです。


 

質問者:

 国民の困窮の声は聞こえないんでしょうか……?


 エンゲル係数や体感物価指数、相対的貧困率は最悪のレベルの訳ですが……。



筆者:

 政治家の方々は「GDPがほんの僅かでも伸びている」「大企業の利益は過去最高」「賃上げが進んでいる」と言ったバラ色の情報しか入ってこない又は見ようとしないんでしょうね。


 しかし、全世帯に直接的に影響がある所得税の壁の引き上げ方が遥かに必要性と実効性があると思います。

(勿論、消費税廃止や社会保険料減免の方がもっと効果があって筆者は推奨しています)


 現在自民党が国会に提出した「所得税の壁を160万円まで引き上げる」法律案では年収850万円を上限に、控除を4段階で上乗せするという――「新たな壁」を作りかねない完全に異常な制度と言えるでしょうね。



質問者:

 何でそんなややこしくしたいんですかね……。



筆者:

 結局「国民の生活よりも財源が大事」という事なんでしょうね。

 

 そもそも所得税や住民税の基礎控除は最低賃金を基に算出されることが根拠であるために、所得による控除の制限や「財源論」があることはおかしいと思います。


 上級国民の方以外は取られるばかりでどの年収階層の方も苦しいのが実情ですからね。

(年収が上がれば色々な控除の廃止や優遇の撤廃があるため)


 また、壁引き上げによる減税の増収効果などを全く考慮されていないのでそこもまた異常であると思います。


 この路線から変更していくためには国民が声を上げると同時に、次の選挙結果に反映させるしかないと思います。


 今回新しく「ブラックリスト」に自公に続いて日本維新の会が加わったというこの日本政治の惨状がまたしても露呈してしまった形ですけどね……。



質問者:

 筆者さんは予算を盾に減税政策の圧力を期待していたわけですからね……。


 予算がこうもあっさり、大して実効性の薄そうな政策が採用されそうで失望されましたか?



筆者:

 政治家の方々の人格が全員入れ替わらない限り、突如として国民にとって良い政策が出てくることは無いと思っているので、失望すらしていない感じです(笑)。


 政治家の皆さんは「国民を救いたい」だの「将来世代のため」だの綺麗事や建前だけはご立派だと思いますけど、実際のところはそれを利用して自身やそのお仲間にお金を配っている連中にしか見えていないです。


 ただ、ここで諦めることなく長い目で見て、政治家を選挙ごとに入れ替えていくという粘り強く気持ちを強く持つことが大事だと思いますね。


 ということでここまでご覧いただきありがとうございました。


 今回は「高校授業料無償化」は高校に対する給付であるために「国民に対する給付又は減税」の方が重要であることをお伝えしました。


 今後もこのような政治・経済について個人的な意見を述べていきますのでどうぞご覧ください。

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