ウォルト人とフィアー人
R18の方は疲れて手を出せないけど、こっちの短いのなら。読みたい人がいるとも思えないけど。
遥か彼方の宇宙に浮かぶ惑星ウォルト。青く輝く海と緑に包まれた大地が広がるこの星には二つの種族が共存している。彼らは見た目は似ているが、その精神と文化はまったく異なる。ウォルト人とフィアー人、かつては高位種族と低位種族に分かれ厳然たる階級によって分けられていた。しかし、10年前の革命がその秩序を一変させた。人種差別が撤廃され、彼らは表向き平等な立場に立つことを余儀なくされた。
ウォルト人—かつては高位種としてハイウォルト人として知られていた種族である。その優雅さと美しさが自慢であり、その長髪こそがウォルト人の象徴でもあった。その名は「水」から来ているとされるが、現在のウォルト人に水的素養は見られない。
フィアー人—かつては低位種のローウォルト人として知られハイウォルト人に隷属を強いられていた種族である。10年前の差別撤廃を期に既に伝説となっていたフィアー人の名を復活させた。彼らは力強さと逞しさを誇示し、短髪が彼らのスタイルの象徴である。隷属させられてなお、ハイウォルト人の美しさは彼らにとって羨望の対象ですらあった。その名は「火」から来ているとされるが、現在のフィアー人に火的素養は見られない。
今や、短髪のウォルト人、長髪のフィアー人も現れ始め、彼らの文化は進化の途上にある。その進化をよしとしない者たちもいる。
表面上の平等は確立されたものの、主に高年齢層の心には根深い偏見が巣食っている。教育や社会制度は共通の場を持つが、依然として差別の影は消えていない。だが、時代が変わりつつあるのも事実である。
惑星ウォルトにおける人類の歴史は数千、数万年に及ぶとされているが記録に残されているのはわずか数百年前からであり、その最古の文献の時点で既にフィアー人はローウォルト人と呼称され差別があった事がわかっている。それより過去は口伝とどこまでが真実なのかもわからない神話のみとなる。
この2つの種族がこの星で生まれたのか、どちらかの種族、もしくは両種族ともに異星から流れ着いたのか真実は知れない。伝説にのみ名を残す「風」をその名の由来とするフーン人、「地」をその由来とするグラド人は実在したのかどうかすらも定かではない。
ゆえにこの星の偏った科学技術が何に由来しているのかはわかっていない。ウォルト人、フィアー人ともに性を持たない。子を為す事が認められたものが望めば自身の遺伝子を元に最大2人までの子を生成してもらえる。地球でいう結婚に近いシステムとしてペアリングのシステムがあり、12歳以上の同種族同士であれば家族となる事が認められ、ペアリングした2人が共に子を為す事が認められた場合、2人の遺伝子から子を生成してもらう事が出来る。
10年前の差別撤廃時に、ウォルト人とフィアー人とのペアリングが認められたが未だ1組もペアリングは成立しておらず、ウォルト人とフィアー人の遺伝子から子を生成する事が出来るかは不明となっている。
差別撤廃後に生まれた世代においてはウォルト人とフィアー人の間に友情が成立しているため、ウォルト人とフィアー人とのペアリング第1号も間近であろうと噂はされており、両者の遺伝子が混ざり合った新たな人種が誕生する未来は近いのではないかと、差別が存在した時代から2つの種族間で友情、愛情を築いていた者たちは期待している。
この激動の新たな時代、遊園地勤務のウォルト人のカオルは見た目や出自に関わらず、すべての存在が平等であるべきだと信じている。カオル自身はフィアー人と愛情を築いているわけではない。だが、ウォルト人とフィアー人が仲良くしているのを見ればカオルの心は安らいだし、その2人の未来を内心応援し、2つの種族が仲良くする未来を心から望んでもいた。
だからこそ、この愛するフレール遊園を建て直すためにも、2つの種族の明るい未来のためにも、まずその第一歩としてこの遊園地に訪れる客層から変えようと思い至ったのだ。
実のとこ性という概念が無いだけで、ウォルト人=女性、フィアー人=男性で同じ種族なんじゃね?とかそういう議論すら立ち上がらないのが惑星ウォルト。でも、人間以外には性別がある。雄と雌の存在はわかってるけど概念を理解してるかどうかはわからない。