カオル、提案する
行き当たりばったりで書き始めてみた
ウォルト人とフィアー人とかそういうのは第2話で全部書くつもりで敢えて最後まで伏せてたけど、あらすじで書いてしまった。
その日、カオルはまるで新入社員になった時のような活力、情熱を久々に感じていた。
伝統ある遊園地「フレール遊園」。その前身である「炎水園」から数えれば開園から150年以上、この星で遊園地と呼ばれる類の施設では最も長い歴史を持つ。開園100周年のイベントには大勢の人が集まりその歴史を祝い、200周年、500周年、1000周年までこの園を守り抜くとの当時の社長の演説は今でも語り草となっている。
その伝説の演説から50年が経過した今、フレール遊園は決して経営危機状態ではなく、フレール遊園には休日はもちろん平日にもそれなりの数の人が訪れ楽しんでいる。とはいえ、その客数は50年前より確実に減少している、確実に衰退を続けている状態にあった。
伝統的遊園地はその数を減らしつつあり、人気キャラクターを擁するテーマパークに客が移っている。伝統的遊園地の数が減った分、それを求める人たちがフレール遊園に足を運ぶようになったにも関わらず客数は減少しており、テーマパークに対して何らかの対抗策を打ち出さなければならないのは明白であるのだが…。
見た目は学生か就職したての新社会人にぐらいにしか見えない若々しい、というよりは幼い見た目をしたカオルであるがその年齢は28、フレール遊園を運営する四黄社に入社して10年になり、順調にいっていれば若手中堅に位置しているはずであったが、通常であればアルバイターが行うようなアトラクションスタッフ…観覧車専属のスタッフの職にあった。
子供の頃からフレール遊園が好きで10年前当時非常に狭い門であった四黄社への内定が出た時には喜びに満ち溢れ、当時既にテーマパークに客が流れる流れは止まらないはずだと考えていたカオルはその改善のための希望に燃えていた。だが、現実はあまりにもカオルの想いとは異なっていた。観覧車は安定しており事故も無く、行列が出来る程の人気アトラクションではない。ある意味、誰でも出来る業務なのだ。観覧車スタッフの業務そのものは嫌いではない。笑顔のお客さまを見れば自分が子供の頃大好きだったこのフレール遊園を楽しんでくれている事を自分の事のように嬉しく思うのは事実である。それでも、カオルが本当にやりたい仕事は毒にも薬にもならないこのような業務ではなかった。
圧倒的人気アトラクションではないとはいえ、観覧車は遊園地の顔である。その顔であるアトラクションには見た目が可愛らしいカオルがいいだろうと入社1年目にしてすぐに採用され、その頃は喜んでいたものだが、それが10年も続くとは考えていなかった。
月に1度の四黄社の会議には正社員であるカオルももちろん参加する。ただ、その会議は毎回毎回時間の浪費としか言えない内容だった。議題は毎回同じようなもの、四黄社としてこの状況をどう改善するかという内容でそれを話し合っている…という体を取っているだけで、ほとんど誰も真面目に考えていないのはカオルの目からもはっきりとわかっていた。それでいて時間の無駄だと切り上げるでもなくだらだらと会議は長く続くのだ。誰も喜ばないこの苦痛のような会議は一体何の為のものなのかカオルには理解出来なかった。
だからといって自分から建設的なアイデアを出せる自信もなく、他の社員を批判出来るような立場にもない。何か意見を出してもベテラン社員に言葉通りまさしく「あっ」という間に瞬殺される。それを経験してしまえば同じ事を繰り返す気にもなれずに今日まで無駄に過ごしてきてしまっていた。決してカオルが嫌われている、軽視されているわけではない、その可愛らしい容姿は社員、特にある種の社員には人気が高く新人の入社が無い状況でカオルはマスコット的な位置にいる。そうであっても、観覧車での業務経験しかなく、素人の思い付きと変わらないカオルの改善案はベテラン社員からすれば愚にもつかないものであり、可愛い子のアイデアだから採用などとはならない、その点についていえば極めて健全な状態ではある。
それがこの日までのカオルであった。ただ、その日のカオルの心には新入社員の頃のように火が灯っていた。観覧車業務の最中に出会った幼い2人の恋人の姿、素敵な笑顔を見せていたその2人に思わず声をかけてしまい、そしてフレール遊園が今後目指すべき形が頭の中で1つの形となった。それを今回議題にあげてみる気でいる、もしかしたらまた瞬殺されるかもしれない、けれどそれが悪意で行われているのでないのであればその意見を基に更なる案に改修するだけだ。
いつものように席につき会議が始まるのをまるで子供のようにワクワクしながらカオルは待っていた。
「何かいい事でもあった?」
席に座る先輩社員のハジメがカオルに声をかけてきた。入社時研修の時にカオルがお世話になった人で、年齢差はあるものの今でも時々一緒に食事に行く程度には仲がいい。先輩でありながらその事を意識させない気安い人であった。無論、恋人のような関係ではなく、カオルが入社した時点でハジメには既にお相手がいた事は付記しておく。
「いい事……あったといえばありました。まだ10歳ぐらいなのかな?そんな子が」
「おっと、会議が始まるな、その話はまた後で聞かせてよ」
言うと真面目なハジメは顔を会議室へと入室してきた議長に向ける。議長とは別に社長も本来会議に参加するのだが、社長の遅刻はもはや常識と化しており、それを待っていてはまさしく時間の無駄であり、社長自身も自分が来るまで会議を待つ必要は無いとしているため、社長不在で会議は開始された。
「では、本日の四黄社定例会議を始めます」
年齢不詳の恰幅のいい議長のシガがいつもの調子で会議の開始を告げる。年齢不詳ではあるが現社長よりも年は上で、このフレール遊園をこれまで支え続け、社員不足の現状においても上手く立ち回りを見せている四黄社にとっては欠かせない人物なのだが、カオルはどうにも苦手としていた。尊敬はしているのだが、どうにも自分をよく思っていないのではないか?と思う事がしばしばある。カオルからすれば確かに観覧車の前で毎日立っているだけと言われればそうなのかもしれないと思える現状で、社に貢献しているという自負は無い、けれどそれは自分が悪いのだろうか?とも思っているのも事実だ。カオル本人は別の業務をしたいのだから。
「まずは伝達事項。1つ目は……」
伝達事項はいつも通り。ライバルとなる各種テーマパークの実情、そしてフレール遊園の客層などについてだ。そのデータは悪くないのだが、そのデータから分析するという作業が毎度行われない。
「伝達は以上です。では、次は議題に移ります。何か新しい議題がある者は」
今までであれば沈黙が支配する。だが、その日はカオルが久々に名乗りをあげた。
「はい」
全員の顔が一斉に声のした方向へと向けられると、カオルは自信満々に立ち上がる。シガは目を光らせ面白くもなさそうに言葉をあげた。
「カオル君か。前に言わなかったか、議事をあげるのであれば会議の1週間前には資料を用意しろと」
カオルの意見が瞬殺される原因の1つでもある。当日緊急で議題をあげる者がいるかもしれないため、今のように誰かいないか確認はする。ただ、基本は事前にどのような議題、どのような案を用意したのか先にチェックし、会議出席者に配布しておくものである。ただカオルにはその時間が無く、あったとして作成した事がないため、あまり良い資料が作成出来なかったであろう。
「はい、覚えています。ただ時間が無くて間に合いませんでした」
「……それであれば来月に提出すべきではないのか?ふん、まあどうせ毎度同じの下らない決まり切った議題しかないんだ、いいだろう。議長として議題提出を許可します」
議長としては言葉が丁寧になるが、シガ議長ですら今までの会議を「下らない」と思っていたという事実にカオルは内心驚いていた。
「はい!ありがとうございます!」
カオルは少しトーンを上げシガに礼を言う。
「議題はもちろん客数減少に対する集客提案。その為に園全体をウォルト人とフィアー人が安心して対等に平和に楽しめる場を提供、ウォルト人とフィアー人の友好を推進するそんな方向性をアピールし同業他社との違いを打ち出したいと思ってます」
平凡といえば平凡だが野心的であり、この星では多くの敵をも作りかねないその細部の検討もしていないであろうまるで子供のような提案である。だがシガはその提案に一瞬感心したかのような表情を見せ、面白そうだとでも言わんばかりの顔を見せる。もっとも、その顔の意味を誰も理解は出来てはいないのだが。
安全に倒してR18にしようかと思いつつ全年齢で。
星とウォルト人、フィアー人の説明はR18のノクターンの方で連載してる作品に記述しているけれど、第2話でちゃんと説明する予定。




