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5. 二人目の女性型コピー

 僕は始祖コピーの方々に呼ばれて、最上階の部屋へと伺った。

 部屋一面が大きな窓で覆われていて、レプリカの街並みが一望できる。


 建物も車も何もかもが白で統一された街は美しかったが、何も描かれていない寂しげなキャンバスにも見えた。


「一週間経ったが、iks-099の様子はどうだ?」


 iks-010様が僕に尋ねる。


「はい、同期はすでに完了し、毎日任務に励まれています」


 ……本当は、街で規則違反の人を見かけても、度が過ぎていなければアクア様は見逃してあげていらっしゃった。


 厳格な管理を望まれている他の始祖コピーの方々にすれば、それは任務を果たしているとは言えないだろう。


 でも、そんなことを伝えたらアクア様がどうなってしまうかと考えると、こうして嘘の報告をせずにはいられなかった。


 今まで始祖コピー様に絶対服従していた僕がこんなことをするなんて、自分でも信じられない。


 もし嘘がバレてしまったら、僕は「秩序を乱す者」として廃棄されてしまうだろう。


 ただ、それでも、僕にとってはアクア様を失ってしまうことのほうが恐怖だった。


(早く報告を終えてアクア様のところへ戻りたい)


 そう考えていると、部屋の隅に、いつもはいない誰かが立っていることに気がついた。


 始祖コピーの特徴が色濃い容姿で、女性の姿をしている。


(アクア様……? いや、アクア様とは髪色が少し違う)


 彼女のほうが白く、本来の始祖コピーの髪色とそっくり同じだ。


 僕が彼女を凝視しているのに気づき、iks-011様が口を開いた。


「彼女はiks-100。二人目の女性型だ」

「iks-099との比較用に作成したが、明らかな差があって我々も驚いている」

「差とおっしゃるのは……」


 嫌な予感がして、僕は恐る恐る尋ねる。

 iks-011様がiks-100様を呼び寄せた。


「彼女は作成時点で同期も完璧に完了していたし、私たちの見分けにも問題はなかった。管理者としての仕事も初日で25名の違反者を見つけて処分した。未だに一人も検挙できていないiks-099とは大違いだ」

「iks-099の能力の低さは性差の問題かと考えていたが、そういう訳ではなさそうだ」


 iks-100様が嘲るような笑みを浮かべた。


「はい、性別の問題ではございません。iks-099が無能なのです」


 その言葉を聞いた瞬間、体中が抑えがたい衝動に襲われるのを感じた。


 アクア様が無能?


 あんなに街の人々の声に耳を傾け、僕たちエラー種に対しても分け隔てなく接してくださる方を無能だと言ったのか、この女は?


 今すぐあの醜悪な笑みを止め、発言を訂正させてやりたい。


 しかし、そんなことなどできるはずもなく、僕は怒りが溢れ出しそうになるのを、拳を握りしめることでなんとか我慢する。


 iks-100の言葉に、iks-012様がうなずいた。


「iks-100によると、iks-099はエラー種のコロニーに入り浸って遊んでいるそうだな」

「い、いえ、遊んでいるなどということは……」


 まさか、すでに知られていたとは思わず、僕の背中に冷や汗が流れる。


 下手に誤魔化せば、余計に怪しまれてしまう。


「iks-099様は管理者として僕たちの特性を把握しようとなさっているだけです。決してエラー種と馴れ合っている訳ではございません」


 それらしく言い繕ってみるが、始祖コピーたちの目は冷ややかだった。


「一度我々、始祖コピーの仲間として迎え入れはしたが、欠陥があるならiksの名は剥奪しなければならない。それに特筆すべき能力もないのであれば、廃棄するほかない」

「廃棄……ですか?」


 全身から血の気が引いて、唇が震える。

 始祖コピーは僕の様子は気にもせず、淡々と言葉を続けた。


「ああ。とはいえ、始祖コピーの廃棄となると、いつものように簡単には済ませられない。ひとまず、改めて身体検査を実施する。クロ、iks-099を検査室に連れてこい」


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