純愛
純文学風のローファンタジーです。純文学が好きな人におすすめです。
純愛
サマエル
序章 宿命の少年
私はある巻物を読んでいる。そこには定められた宿命を背負わされた人間のリストです。
上の欄に人物名が、下の欄にその宿命が。
そして、私は一人の人物のところで止まった。
・・・・・・・・・・・・・
思案する。その人物の宿命はかなり特殊な宿命の持ち主で私は彼に接触するかどうか迷っていた。
「・・・・・・・・・行きますか」
私は羽を広げて彼の元へ飛んで行った。
私がその門の前へ来ると警備をしていた男性の天使たちが緊張を緩めた。
「どうも、ご苦労様です」
私の体の性質上お辞儀はできないが優しい声で挨拶をする。それに天使たちも答える。
「お疲れ様です。ベルゼブブ様」
私の名はベルゼブブ。カナンの地でバアルとして過ごしていたが、ここの今の天界の主人、天主によって悪霊とされて今はその神に従属している。
下界の人間たちは神というのは確か(たしか)なものだと思っているらしいが、そんなことはなく神と人間は相互に干渉をし合っている。
神は人の運命をある程度決め、人を神に名を与える。それによって神の性格が決定され、またその神によって人の運命、宿命が決まっている。
よく、人間たちは神々の戦いというがそれは神の世界ではあり得ない。一応戦うことはできるが、その場合人間界にも大きな影響を与えるので、人に名と性格を与えられる神は神との戦いを好まない。
それよりは、穏健にしていた方がスムーズに神は人に運命を定める作業をし、それによって人間界は安定すれば、神の世界も安定するのだ。
そして、私ベルゼブブも一人の神によって主神から悪霊になり隷属し、それを人が書き留めたことによってベルゼブブの地位は確定した。
「ミカエル様とガブリエル様はいますか?」
それに天使たちも頷く。
「います。お入りください」
「失礼します」
金色の門をくぐると、そこには風が澄み(すみ)きり。片方には林、片方には池がある、人間風に言えば楽園のような場所だった。
私は飛び立ち、その中で一際金色色の強い一つの建物に入っていく。
「失礼します。ベルゼブブです」
中に入るとガランとした通路が現れまっすぐ中央の通路に進む。そして、ある扉の前に来た。
いますね。この感じはガブリエル様とミカエル様、そしてラファエロ様でしょうか?
私は魔力の腕で扉を開いた。
果たせるかな。そのお三方はその部屋にいました。
まず、私に挨拶をしてくれたのは巻物を広げた屈強そうな天使ミカエル様です。
ミカエル様は古代ローマの服装のトュニカを着て、トガという一枚布を体に巻き付ける着物いました。
「おお、こんにちは。ベルゼブブ。元気だったか?」
「はい、それはもう」
そして、私は部屋に入り大きなソファーに体を沈み込ませます。
その部屋は金色のタイルを基調に書棚と観葉植物が入り混じった、とても神秘的な部屋でした。
「隣いいかしら?」
そう声をかけてくださったのはガブリエル様です。彼女は古代ローマ風のキトラに似た、白のワンピースの服装を着て、ストレートのブロンドヘアと青い目、抜群のプロポーションを持って。
ス大天使は私に優しく声をかけてくれました。
「どうぞ、おかけになってください」
「失礼します」
そして、彼女は私の隣のソファーに腰をかけました。
「ベルゼブブ殿、それで今日は何用で?」
そう言ってくださったのは中世ヨーロッパの僧侶が着ている服装をした穏やかな目をした男性の天使ラファエロ様。彼は私の前にマナポーションを置い、ガブリエル様と同じ髪と目をした端正な顔で言いました。
「どうぞ、お飲みください」
「失礼します」
そして、私はラファエロ様がくださったマナポーションの蓋をやはり魔力の腕を使って開け、そのマナを吸収した。
神にとっても下界の動植物と同じように自分を働かすエネルギー源が必要です。それはマナですが、しかし、もともと、この天界にはマナが満ち溢れ(あふれ)、このマナポーションは栄養補給というよりも霊体の感覚を気持ちよくする、いわば人間界で言うところのドリンクみたいなものです。
ミカエル様はスクロールを置いて、私の正面のソファーに腰をかけました。
「それで貴殿は何の用でここに来たのだ?」
ミカエル様は腕を組み丸刈りにした頭で高圧的に言ってきましたが、普通の人間たちにはこれは良くない態度と言うのですが、私たちは長年にわたり生活し知っています。これが単なる彼の癖であると言うことは簡単にわかります。
傍ら(かたわら)には私の顔を見てニコニコ笑うガブリエル様を感じながら私は言いました。
「私に下界に行かせて欲しいのです」
しばしの沈黙。そのあとにため息が一つ漏れました。
「そんなことをわざわざ言うために来たのか?」
「はい」
また一つため息がミカエル様から溢れ(あふれ)ました。
それにガブリエル様は笑みを深くして、ラファエロ様は普段通りの表情で聞いています。
「うーん」
ミカエル様は天を仰いだ(あおいだ)あと言いました。
「ベルゼブブ」
「はい。ミカエル様」
「本来、私たちは君の行動にとやかく言う所以はないんだ」
「いえ、しかし、私がいないと言うことは天界の仕事をする人間がいなくなるわけで、一応報告はしておかないと」
「いやいや、私たちはね、君に大変感謝をしているんだ。わかるかね?」
「・・・・・・・・・・・・・」
「そう、ベルゼブブ。いやカナンの主神バアル。君はあの時、我が主人イエス様や預言者たちを殺すこともできた。だが、君はしなかった。あまつさえ、我が主人が君を悪霊へと貶めた(おとしめた)際にも君は何もしなかった」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「それどころか悪霊になって今なお、私たちを手助けしてくれている。君が私たちの信者を何人も助けたことはは誰もが知っている。正直に言って我々は君には頭が上がらないんだ」
「それは神は人の運命に関与すべきではない、という鉄則に従ったまでです」
「うん。その通り。しかし、そのせいで君は主神の地位を追われ人間界には魔王と呼ばれているのに私たちの手伝いをしてくれている。私たちは君に感謝をしてもいきれないし。何より、君は元を言ったら私たちキリスト教の天使ではない。異教の神だ。客には敬意を持って接することは当然だし、このキリスト教界の中でも君は際立って(きわだって)特別な存在だ。もう、君は自由に行動してくれていいのだよ」
「・・・・・・・・・・・・」
その言葉を私は身じろぎせずに静かに聞いていた。
そして、4本の組んでいた手を解く。
「では、あの少年に会いに行きます」
それにミカエル様は眉を動かずに言いました。
「あの少年。あの特殊な星を持った少年か?」
「はい。神は運命に関与してはいけない。しかし、あの少年は運命よりもさらに強い宿命を持っていますから、私が関与しても彼の宿命は変えられないでしょう」
「そうか」
ミカエル様は立ち上がって背を向けました。
「こうしてみると天使たちの仕事も嫌なものですね」
傍ら(かたわら)のラファエロ様落胆の色を滲ませた(にじませた)冷静な口調で言いました。
「人が誕生してからというもの、我々が生み出されましたが、しかし、私たちは人に運命や宿命を人に与えます。いい運命や宿命だけを与えれば良いのですが・・・・・・・・」
「ラファエロ様」
明らかに青い表情をしているラファエロ様に私は優しく言いました。
「それは古今東西。どんな神も思っていることですよ。人も神も一緒です。与えられた職責を全う(まっとう)するしかありません」
それにラファエロ様は襟をただしました。
「失礼しました。貴方様にこんなことを言うのは無神経でしたね」
「良いのですよ。むしろ、私は魔王として人々に記憶されているのですから。多くの人に記憶されず滅んだ神もいることを考えれば私は幸運の部類に入りますよ」
そして、私は席を立ちます。
「では。行ってきます」
そのまま部屋から出ようとすると背中に声がかかりました。
「ベルゼブブ様」
それはガブリエル様でした。ガブリエル様は私の元にやってきて十字を切ります。
「貴方に天主のご加護があらんことを」
「はい。ありがとうございます。貴女にも天主のご加護があらんことを」
お互いに十字を切り、そして私は飛び出しました。もちろん、目的はあの少年。あの特別な星を持つ少年の元です。
1章子供っぽい少年
「はは、やったぞ。ついにやったぞ!」
最初に聞こえたのはその言葉でした。というより、聴覚を復元した後に聞こえた言葉はそれでした。
もともと、私たち霊体の体にとって五感はさほど重要なものではありません。重要なのは霊体を保全するための魔力が重要なのです。
魔力とはなんなのか?それは人が神を名付ける時に決まります。
例えば、ミカエル様であれば正義の心、ガブリエル様であれば愛の心です。
私はカナンにいた頃は新生の象徴。特に人の赤子が必要だったり、人の精欲で魔力をもらっていましたが、悪霊、魔王となった今は非常に曖昧で、簡単に言えば人の負の感情で魔力をもらい生きていくことができるのです。
とは言っても、天界、魔界にいればのマナがたくさんあるので、人から魔力を取ることにそんなに苦労しなくてもいいのですが。
しかし、下界に行くものにとっては魔力は必要なもので、特に私のように魔王のような強大なマナを持つものにとって、マナを還元できる魔力は重要です。
そして、下界に行くときに、その魔力の吸引、かつマナに変化させ霊体を保つ仕組みに全神経を集中し、集中したが故、体はできても五感の構築は後回しになりました。
なので、あの少年は五感を持っていない私を見て、そして、私が五感を構築して初めてあの少年を気づくことができるのです。
私は辺りを見渡しました。
あの少年はいますね。しかし、ここは・・・・・学校でしょうか?今は夜で傍ら(かたわら)に大きな建物が見えます。
多分、日本の学校であるような気がします。
なにせ、これまでは北米やヨーロッパを中心に降り立ちましたから、日本の風景を見るのは初めてですが、北米やヨーロッパと違った非常に特殊な風景をしていますね、日本という国は。
北米のニューヨークを別とすれば、非常に広大な農業地帯を背景としたワイルドな風景でもなく、ヨーロッパの昔ながらの風景を尊重した国々でもなく、何かおかしな風景ですね。
モダンといえばモダンですが、遠くに見えるビル群の無秩序さや、かといってとってつけたかのような木立や雑草という点から言っても非常にユニークな町の外見をしています。
なおかつ、この大きな影の、学校は非常に変で、学生たちの学び舎のはずなのに監獄のような無機質性を持っており、しかもそれがこの混沌としたモダンな街にぴったり合うから不思議です。
それはともかく、私は少年に話しかけました。
「貴方が私を呼んだのですか?」
そう、尋ねたらその少年は大層驚きました。
「おお!喋ったぞ。なあなあ、俺あんたに聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「ええ」
「あんた。魔王ベルゼブブ?」
「はい。今はそうです」
そういうとその少年はガッツポーズを出しました。
「やったぜ!これで世界の奴らは皆殺しだ!」
「これこれ、少年」
少年は不思議そうな顔をしてこちらに向き直ります。
「相手の名前を訪ねるのは、まず自分の名前を言うべきでしょう?どこの国でもそのルールは変わらないと思いますが?」
そう言うと、少年はなんとなくがっくりと肩を落としました。
「なあ、あんた。本当にベルゼブブ?なんか雰囲気が想像したのと全然違うんだけど・・・・・・・」
そう言う少年の反応に意を介さず私は言いました。
「自分の名前」
しかし、少年は素直に私の言葉に従ってくれました。
「烏丸悠馬」
「悠馬様ですね。私のことはベルゼブブとお呼びください」
「いや!」
烏丸様は大きな声を出して、手で制した。
「ブブ様と呼ばせてくれ!」
「ブブ様?なんですかそれは。私はそんな呼ばれ方したことがないのですが?」
「人間界じゃあそう言う呼び方が流行っているんだって!是非呼ばせてくれよ」
そうはいっても、北米でもヨーロッパでも私をそんな風に呼んだ人はいませんでしたけど?
「まあ、ご自由に。と言うより、私は日本で有名なのですか?」
「モチのロン。日本じゃあ大有名。ちょっとしたアイドルと言っても差し支えのない大人気魔王だぜ」
「はぁ」
なぜ、人口の1%ほどのクリスチャンしかいない国で私はそんなにも有名なのでしょうか?
その時、私は思い出しました。私を名付けた人たちが滅んだことを。
そして、私を悪霊にした神に今私が支えているということ、そしてなおかつ、それがクリスチャンが多くない国で私が覚えられているということに私は大きな感慨を覚えざるを得ませんでした。
結局、私は私を慕ってくれる人に何もできませんでしたね。人の運命には関与しない。たとえ、その運命が己が身を滅ぼすことになっても。しかし、私を慕ってくれる人には何かをしたかったですね。個人的に。
「それはともかく」
悠馬様は期待を寄せる目で私を見つめました。
「なあなあ、あんたベルゼブブだろ?魔王だろ?魔王と言ったら悪いことするやつだろ!?ならさ、世界中の人を俺の奴隷にしてくれないか?俺を世界の王にしてくれ!抵抗するやつは皆殺しにしようぜ!」
それに私は苦笑しました。
確か(たしか)に私は人を殺す能力は備わっていますが、神は人の運命に関わる(かかわる)べきではないという暗黙のルールをどうやって彼に伝えるか。
それに私が世界征服をしようとしても天主が下級天使に命ずれば簡単に私は負けます。
悪魔は天使に勝つことはできない。そう人が神の法則を決めたのですから、私に魔王という属性がついている以上、私はどんな力の弱い天使に勝つことは出来ません。
そう、私がその天使よりはるかに強いマナをもっていようと、人間に定められた法則の範疇を超えることはそもそも私たちには出来ないのです。
しかし、それをどうやって彼に伝えるか。今までもそれを伝えるのが一番苦労している部分です。
悩んだ末、私は言いました。
「いえ、私はしません」
「なんで!?」
「私は人を支配したくないのです。金にも女にも興味はありません」
ここで、いつもくる反論の、これから好きになればいい、という反論をどう対処しようかと考えていたところ、彼はあっけなく頷き(うなずき)ました。
「そうか、なら仕方ないな」
私は拍子抜けしました。欧米人相手だとここでいつも口論をするので一番めんどくさい場面ですが、日本人の彼はやけにあっさり頷き(うなずき)ました。
日本人は真面目で礼儀正しい、とは聞いていたのですが、まさか世界征服を企む人が真面目で礼儀正しいわけがないと思っていましたが、いやはやなんとも驚きです。
本当に日本人というものは欧米人に比べてなんとも変わっています。
「でも、世界征服ができないのならどうしよっかな」
彼は一人後ろに俯いてブツブツ言いました。そんな彼に声をかけます。
「あの、世界征服は無理ですが私はあなたのそばにいますよ」
それに彼は振り向いて好奇のキラキラした目で言いました。
「本当か!?」
「ええ、ちょっと待ってください。流石にこの姿では目立つので」
今の体は全長2メートルのかなり大柄な姿です。その体内に備えた機能をコンパクトにして、そのまま体型を変化。
「できました」
私は先ほどまでは悠馬様を見下ろしていたのですが、今度はこちらが見上げました。
「おお、ハエだ!」
「はい。下界にいるときは大体こういう姿をしているのです」
そして、私は悠馬様の肩に止まりました。
「では、帰りましょうか。悠馬様」
「あ、でも、変化してくれるなら女の子の姿をしてくれれば良かったのに」
「いえ、私の性別は男性と決まっているので」
昔の天使は両性でしたが、今では一人の天使、悪魔ごとに性別は決まっています。これもやはり人間が決めた格言に沿って我々も変化していったのです。
「まあ、いいか。では我が家に帰還するか」
「はい」
そうやって悠馬様は歩く道すがらこうも問いかけました。
「世界征服が無理なら、俺の気にくわない奴ぶっ殺してくれない?」
「私は殺人は好きじゃないので」
「残念だな。じゃあ、何のために俺の召喚に応じてくれたんだよ」
そういって悠馬様は頬を膨らませました。
別にあなたが私を呼んだのではなく、私があなたのところに行ったのですけどね。
キリスト教においては黒魔術、白魔術両方禁じられています。
中にはそれを試す人もいますが、大方の人が天使や悪魔を呼ぶことができないとわずかに信じていれば、私たちはどうあがいても人の力では呼べないのです。
そして、人は悪いことが起きた(おきた)際には何かと悪魔のせいにしたがるので、悪魔も人間界に降り立がらないのです。
しかし、天使だと大勢の人々に喜ばれますが、悪魔の場合だと嫌われます。
私たちは人の格率にしたがって生まれてきますから、人が悪魔よ去れと念じれば、それだけで悪魔は消えます。
そして、だからこそ神はあまり人に関わりたくないのです。人はかなり身勝手で天使や良い神にでも自分の欲望を知らず知らずのうちに通そうとして、邪魔になればいなくなれ、と唱えれば人間界からも消えますし、ましてその天使や神の悪い噂まであげたら、存在が危機的状態になるのです。
実際に私は主神から魔王になったのでそれはよくわかります。だから、天使や神は滅多なことでは人間界に降りてきません。
「ついたぞ、ここが俺の家だ」
そういって悠馬様が指差したのはアメリカ風のモダンな建物でした。ですが、やはりアメリカの一軒家とは雰囲気がだいぶ違います。
欧米風の建物ですが、どこかこぢんまりとして、かなり日本らしさを私は感じました。
「さ、上がってくれ」
「はい」
そして、初めて私は悠馬様の家に上がりました。
最初玄関を上がった時に驚いたのは悠馬様が靴を脱いだことです。
私はどこが靴を脱ぐスペースなのかわからないのでかなり戸惑いました。正直言って人間型ではなくてよかったです。
そのまますぐ右手に悠馬様は移動しました。
目に入ったのは世界中でおなじみのリビング。テレビとファンヒーター。
ファンヒーターは例えばカナダだとあって当然ですが、テキサスあたりになるともう撤去している家も珍しくありません。今は3月ですが、日本は今でも寒いのでしょうか?
その時、私は温度覚も備えることにしました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
少し寒いですね。霊体と言えど、本来の私は天界にいて、ここにあるのはマナで作られた構造物です。もちろん、衝撃を受ければ砕け散るし、あまりの暑さや寒さなどでは体の機能に支障をきたすかもしれません。
一応、私の能力、人の負の感情をマナに変換する能力を使って、負の感情を吸引、そしてマナに変換して、体を温めておきましょうか。
それから、また、ざっとヘアを見ます。リビングには棚もあり、アルバムや育児関連の本が目につきました。
「クソババア帰ったぞ」
そういって悠馬様はどかっと食卓の椅子に体を預けました。
「さっさと食わせろ」
悠馬様のお母様が出てきました。まだ、シワはないですし肌もツヤがないどこにでもいる中年のおばあさまです。
「はいはい」
そういって、テキパキとキッチンに行って悠馬様のお夕飯を出してくれました。
「なんじゃ?こりゃ?ご飯と味噌汁とシシャモじゃねーか。まともなもの食わせろよ」
しかし、お母様は幽霊のごとくその場から去りました。
「チ!しけたやろうだぜ」
なんとも、またしても私はカルチャーギャップを受けました。
日本人というものは礼儀正しくて優しい人たちではなかったのですか?まあ、私を呼ぶ人ですから性格的に曲がっているのは容易に想像することはできたのですが、しかし、あまりにもちぐはぐな性格の変化に私は驚きを禁じえませんでした。
素直に私のいうことを聞くかと思えば、自分の母親にはこういう対応を取る。あまりのもおかしいです。
それから彼はぶちぶちと不満を言いながら夕食を食べました。
AmazonのKindleで完全版販売中。よろしければ、購入の程をよろしくお願いします。
マジで、作者の生活がかかっているから、買っていただくと作者が非常に喜びます。
と言うか10年、小説書いてきて、未だ、無給ってどうよ?
そんなわけで作者の貧乏生活を救ってください。お願いしますm(_ _)m