エピソード6
敵陣営を始めます。
エピソード6-1
今の自分はまどろんでいる。夢を見ているのか見ていないのかもわからない。今は見てはいない。夢を見るのは嫌いだ。昔を思い出すからだ。夢を見ていない眠りの時だけが辛い人生の唯一の安息の時。それなのに・・・。
???「・・・んせい。・・・イル先生。」
どこかで自分を呼ぶ声がする。だが、正直まだこのままでいたい気持ちがある。それでも声は呼びかけてくる。
???「先生!ガイル先生!起きてください。お時間です。」」
ゆっくりと瞼を開ける。そこには見慣れた顔があった。心配と不安の混ざった視線を自分に向けてくる。胸にバインダーを抱えて、何枚かの書類が束ねてある。
???「先生、起きられましたか?後、15分後には出発のお時間ですよ?直ぐにでも身だしなみを整えて。先生がだらしのない恰好をしているとなると従業員は元より、お客様の信用に関わります。しっかりしてください。」
渋々と起き上がる。椅子から立ち上がってスタンドミラーの前に立つ。仕事の合間に仮眠を取ろうとしててそのまま寝入った。そのせいか上着のあちこちに皺が出来ている。スラックスは・・・まぁ問題ない。この程度なら見逃してもらえると思ったが、この子は引き取った時から慎重な性格だ。万一の事態にも注意を向けるのも納得できなくはない。クローゼットから新しいシャツを出しながら言う。
ガイル「今から誰だったか?ジェシカさんにクレアさん。それと・・・。あー、えっと?」
???「トニーさんにルーカスさん。オリビアさんにイザベラさんもです。時間があれば他の方にも会って頂きますよ。」
ガイル「そんなにか・・・。今月も末か・・・。スケジュール、結構手一杯なんだがな。」
???「だったら休暇を取ってください。最後にお休みになったのはいつですか?」
ガイル「確か・・・今月の初旬に2日は休んだぞ。」
???「そんなんですから、仕事中に疲れが出て居眠りなんてしてしまうんですよ。先生に何かあったら社員の皆さんはどんな目に合うかわかっていらっしゃるのですか?」
上着を着直してスタンドミラーの前に立つ。ネクタイを締めて全身を見直す。問題ない。
ガイル「解っている。私に何かの事態が起きれば、顧客の信用を無くす。信用を失えばウチから顧客が離れる。社への収益は減る。社員の収入に影響が出る。まぁ、信用第一の仕事だからな。だから、まぁ・・・休んでもいられん。」
その発言に呆れたのか少年はため息をつく。自分の立場を解ってくれているのもそうだが、言った通りに自分に何かあったら手遅れだ。後5分ある。その時間を追加の説教は喰らいたくないので話題を変える。
ガイル「学校はどうだ?勉強はこなせているか?」
???「問題無いですよ。っていうより、簡単すぎます。同級生の子たちみんな遊んでて・・・。正直、何が面白いのか解りません。世の中もっと大変な事が凄く起きているのに。」
ガイル「そう言うな。それだけお前の周りは恵まれている人たちで構成されているということの証左だと思う事だ。それにお前には少しばかり対人関係を築く能力が低い。勉強ばかりが全てじゃない。味方を作る事が下手では社会ではやっていけん。それはこの仕事していれば解るはずだぞ?」
???「それは・・・そうですけど。」
不満げな表情を浮かべる少年。しかしガイルは知っている。対人関係・・・要はコミュニケーション能力を上げるには何も本人の精神・性格が全てではない。【人の心の動向を読む技術】を知れば良いだけだ。その知識をしっかりと学び、その様に振る舞えばよい。あれこれ考えているうちに時間となった。
ガイル「そろそろ行くか。まずはジェシカさんのところからか?資料は大丈夫だな。行くぞ、ピエール。」
そう呼ばれた少年はガイルの後ろを続いて部屋から出た。
エピソード6-2
アメリカは〇〇州に本社を構える【ライフセキュリティ社】。世界各国に置ける少子高齢化に対策する企業として1X年前に設立された。主に医療・福祉活動に力を入れている。企業としての歴史は極短期間であるものの、ガイル社長の指揮の下で同業他社を破竹の勢いで追い抜いた。数年前に経営が傾きかけていた同州の某大手企業を丸ごと吸収・合併する事で現在の本社を構える。周辺にある医療・福祉機関や施設と連携を取り、社会的地位を高めていった。しかし、何の工夫もせずに出来た訳では無い。既存の企業と異なるサービスを設ける必要があった。それが今から行う仕事でもある。ピエールを後部座席に座らせ、自身は助手席に座る。車に乗り込み運転手に指示を出す。行先は社が直接管理運営する老人ホームだ。ピエールから今日の仕事で出向く場所が記載されたバインダーを受け取る。書類はでたらめと言っていい程の点字が記載されている。ガイルは社用のカメラ付き端末を取り出すとバインダーの上にかざす。すると、端末に利用者の近況がまとめられた情報が映し出された。社内独自規格による暗号化システム。これも顧客の個人情報を守るための工夫の一つだ。端末に映る内容に目を通す。軽く10人。一人20分程度。3時間20分やらなくてはならない仕事。社を立ち上げてから欠かした事の無い重要な仕事だ。目を通しているとピエールが後ろから話しける。
ピエール「先生、よろしいですか?」
ガイル「なんだ?言っていいぞ。」
ピエール「先生がこの業務を大切にしている理由は・・・解らなくは無いです。ですが、他の社員の方にお任せになっても問題無いのでは?」
ガイル「それは出来んな。社を発足してから欠かした事が無い業務だ。これを欠かすくらいならその他の業務を縮小しても構わん。それを軽んじる者はウチの社員として不適切だと私は思っているが?」
ピエール「先生のお考えは解ります。ですが、より多くの方を受け入れる為には・・・なんと言うか・・・そうですね。【効率的に立ち回る】と言う考えは出来ませんか?」
ガイルはその答えに「それは最もだ。」と返す。しかし、直ぐに「それを捨て去ってでもやらなくてはならない業務だ。」とも言った。その答えにピエールは黙り込む。そうこうしているうちに指定の老人ホームに到着した。駐車場に車を停めさせて、運転手には待機を命令する。ピエールとガイルは二人そろって車から降りると、老人ホームの自動ドアを通り入口の警備員に丁寧な挨拶をして入所した。
入所すると周囲の職員・利用者たちがガイルに殺到する。歓迎されているとは言え軽いパニックだ。それは好ましく無い。ガイルは職員と利用者たちに時間を設けて順番に話を聞く予定を立てている事を説明し、その場を諫めた。続いて二人は着替えをする為にロッカールームへと移動する。白と緑を合わせたような落ち着いた色合いの衣服だ。ここの施設での専用の制服でもある。着替えを終えるとロッカー室から二人そろって出る。ガイルはピエールを後ろに着かせた状態で端末に再度目を通す。最初の面談の相手はジェシカと言う高齢の女性だ。齢は90を超える。2週間前に入居したばかりの方だ。社が発行しているパンフレットを届け、最初こそ利用する事を渋ってはいたがガイル本人が辛抱強く説得した。しかし、難色を示すジェシカに対してガイルは、【一か月の体験入居と言う形で利用してもらいその期間は利用料は半額】と言う条件で利用契約を結んだ。現在の報告を見る限り目立った不満は感じていない様だ。そうこうしているうちにジェシカが利用する個室の前に着く。ノックをするガイル。中から老婆の声で「はい、どうぞ。」という言葉が聞こえた。扉を開けて明るく挨拶をするガイル。
ガイル「やあ、ジェシカさん!こんにちは。体調はどうですか?当施設に何か不備はございませんか?」
ジェシカ「とんでもありません。職員の方々は皆さん親切ですし、お食事も想像以上に美味しいです。」
ガイル「それは良かった。せっかくご用意させて頂いた当社きっての最新鋭の施設です。そこに不備があったとされたなどと言われないかと・・・。貴女が気に入って頂けるかと私は正直、不安で仕方ありませんでしたよ。」
ジェシカ「いえいえ、そんな事ありません。廊下は広々としていますし、エレベーターは車いすが二つ並んで入れる位に広いのは驚きました。私はこの通り車いすですからね。それに最新鋭の電動車いすを利用者であれば無料で使えるなんてとても他のところでは無いサービスです。」
ガイル「気に入って頂けているようで何よりです。どうでしょうか?まだ体験中とは言え、私たちの運営する施設に入所は検討されませんか?」
ジェシカ「そうですね・・・。家族に相談しなければ何とも言えませんが、このままのサービスが受けられるのであれば私としては是非とも正式な利用をお願いしたいです。」
ガイル「そうですか!何よりです。仮に体験期間が終了して正式な利用をなされないお考えを提示されたとしても、その判断は正しいと私は考えます。対価に見合ったサービスを提供できない以上、利用料を受け取る訳にも参りません。私たちが行わなくてはならない事は去って行ってしまわれた方々がどの部分に不満を持っていたかを知り、速やかな業務改善を取り組む事です。」
ジェシカ「素晴らしいお考えですね!ですが・・・その私は経営について詳しくはありません。ですけど一つだけお聞きしてよろしいですか?私がここを利用する事になってここの会社に利益になるのでしょうか?そうですね・・・企業として【採算】が取れる行いなのですか?」
ジェシカの当たり前ともいえる素朴な疑問にガイルは微笑みながら返答する。
ガイル「ジェシカさん、確かに貴女の言う通りです。私たちの企業は他よりもサービス内容を充実させる事に特化させております。その為、コストがかかり過ぎると言うのも事実です。ですがこう考えてみてください。私たちのいる国はアメリカです。資本主義の国です。貴女の様な利用者が満足する様な仕組みを作り上げ、そのノウハウを経済活動として行う。例え現在に置いて一時的な損失であったとしても、将来的には多くの利益を生み出すことが出来ましょう。それは職員と利用者の生活の安定に繋がります。ただ目先の利益に飛びつき、社の信用を貶める行為をしたくないと思っているだけですよ。」
ガイルの言葉にジェシカは安心した表情を浮かべる。同時に不安げな様子も表した。
ジェシカ「はぁ・・・その言葉を聞いて安心しました。解りました。私の利用が貴方の会社に利益をもたらすのであれば、それはそれで安心できます。実はここに来る前にいくつかの別の会社の施設を見て回ったのです。ですけど、どこの施設も利用者一人一人の事を考えてくれる様には感じませんでした。私は何というか・・・他の方とお話しする事がとても苦手なのです。他の施設ではレクリエーションや朝の散歩などといった事が日課としてあるようなのですが、それが私にはとても辛くて辛くて・・・。」
ガイルは被り振りながら答える。
ガイル「なるほど。しかしジェシカさん。人と話せないと言う事は別段おかしなことではありません。むしろ初対面でも自分自身をさらけ出して話せる人の方が危ういという事もあります。人には得意・不得意があります。ジェシカさんが他の方とお話出来ないと言う部分になんらかの負い目を感じているのであれば、それは意識しなくても良い事と思いますよ。どうしても無理な事なのです。人生の大半をかけても出来なかった無理を克服する必要性がどこにありましょうか?」
ガイルの回答にジェシカは意外とも言える表情を浮かべる。
ガイル「ジェシカさんの様に人と打ち解けられない方でも満足出来るサービスを作る。これも我が社が作り上げるべき経営方針です。私たちはただサービスを提供するのではありません。より良いサービスを作り上げ、より多くの利用者を獲得する。そうして会社を大きくする。ジェシカさんの後にやって来る利用者の方々が、より納得できるサービスを創造する。それが我が社の目指す方針なのですよ。」
ジェシカに取って納得いく答えだったのだろう。安心と不安の表情は無くなり、すっかり満足した表情になった。
ジェシカ「解りました。体験期間が終わりましたら、家族にも正式利用を検討する考えを伝えてみます。」
ガイル「良かったです。ですが、まだ半月以上の体験期間が残っています。期間が終了してからで問題はありません。ご家族にはその後にご相談された方が良いでしょう。焦る必要もありません。ここと同じ部屋はまだございます。検討中とあれば、お部屋を確保する様にも職員に呼びかけておきますよ。」
ジェシカ「ああ・・・何から何までありがとうございます。」
そこにピエールが声をかける。20分経つ様だ。
ガイル「そろそろお時間なので私は次の方の面談へ行かせて頂きます。何か問題がございましたら職員へ申し付けて下さい。それでは失礼しますよ。」
ジェシカ「あの・・・最後によろしいでしょうか?」
振り向き様にガイルが答える。
ガイル「はい。どういたしましたか?」
ジェシカ「そちらにいる少年は・・・どなたなんでしょうか?」
ガイル「ああ、最初に言うべきでしたか。申し訳ありません、ご紹介をしていませんでしたね。この者の名前はピエール・シモン。私が行った福祉活動の中で知り合った者です。福祉業界を学ぶ一環として同行をさせております。親子関係ではありませんが、私にとっては養子の様な存在です。」
そう紹介されるとピエールは、一歩前に出て目を閉じて軽くお辞儀をする。そうしてガイルへ目配せをする。もう次の時間だと言う事だ。ガイルはジェシカに再度、退出する旨を伝えるとピエールと共に次の面談を向かった。
エピソード6-3
総ての面談が終わった。利用者・職員を含めて15名。全員20分。3時間少しで終わる予定が結果として5時間掛かった。車に乗り込み、翌日の日程を端末で確認していると後ろからピエールが声をかけてくる。
ピエール「先生、昨日お休みになったのはいつですか?」
ガイル「んー、確か夜の1時過ぎだ。それまでは今日の利用者の近況をある程度知っておく為の調べをしていた。」
ピエール「起きたのは何時です?」
ガイル「朝の6時だが?」
ピエールはため息をつく。自分が保護されてきてからの2年間ずっとこの調子だ。50代中ごろであるのにこのバイタリティはどこからやってくるのかピエールは全く解らない。自分自身を大切に扱っていないようにみえる。会社立ち上がりからその方針は変わらない。常に現場に社長が居続ける。それでいて株主やスポンサーと言った人たちにも社の経営方針が如何に社会全体に置いて重要であるかを説明する。その姿勢が周囲の人々からの過剰と言えるほどの信頼を獲得するに至っているのは疑いようもない。実際に施設の体験利用中の方々の10人中8人が正式な入居を検討していると判明した。残り2名も可能であれば利用したかったとかなり渋っていた。職員面談にしてもそうだ。施設長やマネージメント管理といった重役だけではなく、先月入り経ての新入社員にも面談を設けている。それも居合わせるのは基本的にはガイルと面談者だけという徹底さ。後学の為という名目が立つのであれば自分が居る事も許されるが・・・。
ピエール「先生、それではいつか体調を崩してしまいます。先生に何かあったら・・・。」
ガイル「安心しろ。私に何かあっても社は衰退はするが、経営は存続はする。お前には私の財産の幾分かは入る。無駄遣いをしなければ30年程度なら安定して生活できるはずだ。」
ピエール「そうではありません!先生を心配して言っているんです。僕は先生に命を助けて頂いたんですよ?とても大切な事だと思っています。人生の恩人なんです。その恩人を失いたくないんです。お願いです。もう少しお休みを取ってください。」
そう言われてガイルは端末から目を離し、窓越しに街の風景を観る。前まではいまいち活気が無かった街が10年程度でかなり活性化した。それは自分の起こした会社があるのも一因だと自負はある。だがやった事はシンプルだ。能力がある失業者がいれば社長である自分が直接スカウトに赴いて雇用する。社の方針で活躍出来ないとあればその人に合った教育カリキュラムを作り実践する。教育期間はアルバイトと言う形だが期間終了後、正式に採用するかどうかを検討してもらう。その面接の場に置いては必ず自分が同席する。どんなに忙しい場合でもそれは欠かさない。人事部を信用していない訳では無い。しかし失業者は社会からある意味で【無用者】という扱いを受けている以上、自分が勤めたい会社の最終決断は失業者側にあるべきだと。そうした配慮が離職者を出さない最大の対策だとガイルは考えているだけだ。事実として他の同業他社と比べても離職率は随分と低いし、職にあり付いている他の医療福祉施設の勤務員ですら転職先として自分の会社を希望してくることも多い。そう考えていると後ろのピエールが声をかけてきた。
ピエール「ジェシカさんに言ったことが嘘になってしまいますよ?」
ガイル「嘘・・・だと?」
ピエール「そうですよ。言いましたよね?【目先の利益に飛びつかない事が大切】だって。せっかく信頼を獲得して頂けた方を裏切る行為をなさっていませんか?自身の健康を省みない行動は利用者さんたちにとってはいずれ大きな損失に繋がると思いませんか?」
そう言われて、少しだけ思案する。数秒後に答える。
ガイル「確かにそうだな。顧客を手放す事に繋がれば不信を買うか・・・。解ったいいだろう。明日の仕事は午前中だけだ。午後は完全に休暇にする。ただし、急過ぎるからな。社に帰ったら方針を固めさせてくれ。午後の予定のキャンセルする理由を設けなくてはならん。そこは絶対だ。これ以上は譲れん。」
ピエール「いえ、これ以上に譲っていただきます。今後は週に一日は完全に休日にすることも加えてください。休めない場合は翌週に連休を作って下さい。先生は明らかに働き過ぎています。今の状態こそ【目先の利益に飛びついて】いませんか?」
ガイル「手厳しいな。解った。だが、休みの日以外は自由に働かせてくれ。」
ピエール「社員全員には基本的には残業を禁止して置いて、自分自身が破っては元も子も無いんですよ?残業が必要な時もあるんでしょうけど、社長自身が残業をしていてはただのワンマン経営者です。別な形での不信を買いますよ。」
ガイルがため息混じりに笑いだす。
ガイル「解った、解った。それも考えておく。ただそこは経営方針に関わる部分だ。直ぐには変えられん。周りを説得する時間が必要だ。それはお前も理解しろよ。」
ピエール「本当に・・・お願いしますね?約束ですよ?」
ガイルは端末に目を向ける。午後8:30。社員の殆どはとっくに帰っているだろう。社内にある運動施設を借りられる。そこである事を思いつく。少ない機会を有効に使うべきだと内心思っていると、社の入り口に車が着いた。二人そろって車を降りて帰社する。警備員以外いなくなったエントランスでガイルは話しかけた。
ガイル「明日は学校は休みだったな?今日はどうだ、時間があるだろう?」
ピエール「お断りします。仕事中に居眠りしてしまう人に付き合う気は僕にはありません。体調を万全にして下さい。貴重な時間を消耗した人から教わりたいと思いません。本当にお休みを取られたのであれば明日のこの時間にお付き合いしますから。それでは先生、お休みなさい。」
そう言うとピエールはエレベータに乗り込む。自室がある階へ行くのだろう。その様子を見てガイルため息を漏らすと共に一種の満足感も感じていた。ピエールは2年前までは碌に教育も受けられなかった孤児だ。自分の支援があったとは言え今では社会に溶け込み、学校では成績上位。ボランティア活動の重要性を説いたこともあってかその分野においては活動的である。加えて先ほどの自分の養父であるガイル自身を説得する知性。どの分野でも優秀だ。その資質は初対面の時、数十分話しただけで見抜いていた。自分が軍人時代に培った、人材の能力を見抜く力は健在だと実感する。ピエールの未来の姿を想像して口にした。
ガイル「実に頼もしい・・・。実に楽しみだ・・・。」
そう独り言ちると残った仕事を片付けるためにガイルは社長室へ戻った。
エピソード8までは敵陣営です。