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#だから僕は、ダークヒーローになった  作者: 木兎太郎
【第一部 #だから僕は】
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#051――テロリスト6


 場所を変え、地下修行場。今日は珍しく、影汰だけが使用している。

 馬渕がこの場所を使うのは、午後十五時から十八時までの間であり、だからこそ影汰はタイミングをずらし、早朝にこの修行場を利用していた。


(もしもあの時馬渕さんの助けがなければ、僕はシャイニングに捕まっていただろう。根源の相性的には最悪だと、彼は言っていた。でもそれは、果たして僕だけが不利だという意味なのだろうか。光と闇は表裏一体であるはず。)


 影汰は集中状態を深めた。すると徐々に、イメージが具体的になっていく。

 ゆっくりと、深く、あの日の記憶をたどり始める。

 研究所での、最後の瞬間の記憶だ。


 あの日、影汰を包み込んでいた闇は、解き放たれた。

 晦冥の射程は、せいぜい十メートル程度。だがしかし、あの日影汰は、研究所を跡形も残らないほどに破壊した。研究所は、射程以上の大きさがあったはずだというのに。


 つまり、晦冥の射程は、実際は十メートル以上ある。

 影汰も感覚的に、上記の事実を理解していた。

 一見矛盾しているようにも思えるが、十メートルというのは、影汰が晦冥を操れる限界距離のことで、それ以上に達すると、晦冥は影汰の手から離れる。


 影汰は右手を空へと伸ばし、そこから闇をゆっくりと伸ばした。

 手のような形をした闇は、そのまま真っすぐに進んでいく。

 やがて十メートル地点に到達すると、その動きを止めた。

 そっと手を握ると、人差し指だけ伸ばし、十メートルの更にその先へと出した。

 すると五秒後、指を形成していた闇は、空気中に溶け込むように消えてしまった。


(やっぱりか。闇は、十メートル以上先へ到達すると消える。その時間はおよそ五秒ってところ。それに、闇自体が減っている感覚もある。恐らく充電池みたいに、操作できる闇には限界量があって、十メートル以上伸ばすと消費するんだ。そうだな…今なら感覚的に理解できそうだ。僕の容量は…十立方メートルの立方体が、丁度埋まるくらい。つまり、一万リットルってところか。)


 影汰は、感覚を研ぎ澄まし更に自身の根源についての理解を深める。

 十メートル以上闇を伸ばすと消えることは、馬渕との修行で理解していた。

 しかし、研究所での一件を思い出すには、まだ胸が痛むため、この分野における理解を深めようとはしなかったのだ。


(正直僕の根源は、とても万能だけれど、攻撃力にかける。例えば硬質化によって剣のような切れ味を持たせれば、何かが変わるのかもしれない。でも、誰かの血の上によって作られた世界を…花音に歩んで欲しくない。だから…出来ればもっと、違う形をした攻撃力が欲しい。きっとその可能性は、あの日の記憶にある。)


 影汰の脳裏に、封印していた記憶が蘇る。


(あの日の僕は、感情のままに晦冥を解き放った。そして、射程外へと全力の衝撃波を放出することによって、研究所を破壊したんだ。それから約二十四時間、根源を使用することが出来なかった。つまり、容量いっぱいの闇を消費しきったんだ。でもそこから生まれる衝撃波は、普段よりもずっと強力で…あの時の衝撃をもし一点に集中できれば。)


 そして影汰は、結論を導き出した。


(きっとそれなら勝てる…シャイニングにも。)


 しかし、その瞬間それを試すことを止めてしまった。

 新たな力を行使すれば、この本部すらも破壊してしまうことを理解してしまったから。

 影汰が修行にひと段落付けたタイミングで、地下修行場に花音が降りてきた。


「お兄ちゃん、ここにいたんだ。今日は学校だよ?」


 編入となる花音は、今日が学校初日だ。

 ほとんど毎日昼夜問わず勉強をし続けた為、問題なく授業についていけるだろう。


「もちろん覚えてるよ。直ぐに準備するから。」

「もう、一緒に行くんだから、早くしてよね!」


 そこまで伝えると、花音は再び階段を上がっていってしまった。

 影汰も直ぐに後に続き、一つ上の階の食堂へと向かった。

 花音は先に席についており、朝食を取っている。


 パラダイム零のメンバーは、基本的に朝に弱く、今日という記念すべき日の朝に立ち会えたのは、阿久津だけだった。彼女は花音の隣の席に座っている。

 影汰も用意された朝食を手に取ると、花音の正面の席へと座った。

 ちなみに朝食は、オーソドックスに目玉焼きとベーコン、それにご飯とお浸しだ。


「花音ちゃん、学校は楽しみ?」――阿久津は唐突に、そんな質問をした。

「…はい。」――正直に答えはしたが、花音は少しだけ恥ずかしそうだ。


 思春期特有の羞恥心があるのだろう。

 そんな花音を、阿久津は微笑ましく思っている。そして、それが表情に出ていた。


「なんだか、お母さんみたいですね。」――影汰は何の気もなく、それを言葉に出した。

「ふふふ、そう思ってくれてるのなら、嬉しい限りね。」


 何故か阿久津も、とても嬉しそうにしている。

 それから三人で何の変哲もない会話を楽しみ、二人は無事に準備を終えた。


「それじゃ、行ってらっしゃい。楽しんできなさいな。」


 阿久津は玄関まで二人を見送りに行った。


「「行ってきます。」」――偶然影汰と花音の声が揃う。


 二人は向き合い、思わず笑ってしまった。

 そんな二人の姿を見た阿久津も、どこか微笑ましそうにしていた。



久しぶり。あけましておめでとうございます。

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