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#だから僕は、ダークヒーローになった  作者: 木兎太郎
【第一部 #だから僕は】
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#045――救出作戦6


(ダメだ…このまま正面から戦っても、勝てない。)


 既に研究所に来た目的は達している為、瞬時に目的を戦闘から退避へと切り替えた。

 しかし、栄光により齎されるシャイニングの移動速度は尋常ではなく、影汰の移動速度では逃げ切るのが困難だった。


(僕の根源の影響範囲が十メートルであることが悟られれば、きっとその時点で僕の負けになる。そうなる前に…どうにか隙をついて…アレを使うしかない。)


 影汰が思考を巡らせている間に、シャイニングは遅くなっていく自分の体を動かしながら、面白そうに眺めている。


「凄いな…宇宙空間みたいだ。――でも、余り長引かせないほうが良さそうだね。」


 シャイニングは不意に、右手を前に伸ばした。人差し指だけを突き出し、まるで子供が何か物珍しさを感じた時のように、影汰へと指を差したのだ。

 そして、右手の人差し指の先から、細い光がライン状に放射、目視することなど不可能な速度で、影汰の右肩を貫いた。


 影汰の肩を、激しい痛みが襲った。

 出血などは一切ないものの、人体の内部までもが一瞬で焼けてしまっていた。

 思わず右肩を左手で抑え、苦しそうに顔を歪ませた。


「どうだい?SF映画なんかによくある、レーザービームってやつさ。」


 明るい顔で、とんでもない力を行使するシャイニングに、影汰は恐怖を感じた。

 影汰の恐怖心が、二人の間にある本当の力量差をかき乱す。普段なら抵抗できる場面で影汰の思考回路は、完全に停止してしまっていた。


「理解していると思うけど、これで脳を貫けば、君はゲームオーバーだ。今すぐ抵抗を止めることを勧めるよ。」


 シャイニングは人差し指という名の銃口を、影汰の頭部へと向けた。

 目前まで迫った死に、影汰は思考をかき乱される。

 やがて鈍化を付加していたはずの闇の霧すらも、影汰の中へと戻ってしまった。


 だが、影汰が思考停止状態に陥った瞬間、それは起きた。

 シャイニングのこめかみに、正確に小石がぶつかったのだ。よほどの衝撃だったのか、シャイニングの頭が傾いた。

 同時に彼を脳震盪が襲い、そのまま地面に片膝をついてしまう。


 何が起きたのかも理解できないままに、ぼやける視界の中で、シャイニングは周囲を見回した。

 その動きはやけにゆっくりとしており、影汰はシャイニングが脳震盪に陥っていることに気づいた。

 そして脳震盪をきっかけに、思考回路を復帰させた。


 同時に、小石が誰の仕業かも理解していた。

 恐らく馬渕が、投石したのだろう。


 脳震盪を起こしたシャイニングへ追撃する為に、影汰が数歩前に出る。

 シャイニングは影汰から注意を反らしていた為、急接近に気づくのに数テンポ遅れていた。


 シャイニングの鈍重な動きを見た影汰は、即座に攻勢に出る。

 硬質化させた闇を右手に纏わせ、シャイニングの頭へと打ちおろした。

 更にシャイニングの脳震盪は加速するも、意識を奪うまでには至らない。

 影汰が追撃を仕掛けようとした瞬間、シャイニングの体が発光。眩い光に影汰の視界が眩んでしまった。


 揺れる視界の中で、影汰に出来た隙を狙い、シャイニングは人差し指を影汰へ向けた。

 だがそのタイミングを狙ったかのように、人差し指を再度小石が貫いた。先端部分を起用に狙ったその一撃は、シャイニングの人差し指の骨を粉砕。彼の指はあり得ない方向へと曲がってしまった。


 影汰は何とか視界を取り戻し、シャイニングへと更に攻撃を仕掛けようとする。

 だがその手を突然止めてしまった。

 ――原因は、シャイニングの指先にあった。

 ぼんやりとシャイニングの指先が光ると、瞬く間にその傷が完治してしまったのだ。


 その光景を見た瞬間、影汰は即座に退却を選択した。

 シャイニングの「栄光」は、治癒系統の特質をもっている。


「引きます!!!」――あえて影汰は、大声で叫んだ。


 もちろん大声は、馬渕へと撤退の意思を伝えるためだ。

 そして、全身から衝撃波を伴った闇を放ち、シャイニングを吹き飛ばした。

 シャイニングの症状が全て回復する前に、影汰は切り札を行使した。

 逃げの一手として用意していた、――「暗泳アンエイ」。


 影汰は闇の中に、独自の空間を所持しており、その中へと潜ることが出来る。

 夜のような深い闇が広がっている時にしか使用できないが、非常に強力な戦法の一つである。闇の中を移動する際の速度は音速を超えるが、闇の中から敵に干渉することなどは出来ないため、戦闘への応用が困難であることが弱点だ。

 闇夜を泳ぎ、影汰はパラダイム零の本部へと向かった。


 

 脳震盪から復帰したシャイニングは、周囲をよく眺めた。

 完全に敵に逃げられてしまったことを理解し、彼は嬉しそうに笑う。

「初めてだ…こんなにやりがいを感じたのは。」

 広がる混沌の闇夜に、そんなつぶやきが響き渡った。



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