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#だから僕は、ダークヒーローになった  作者: 木兎太郎
【第一部 #だから僕は】
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#044――救出作戦5


 取りあえず屋上まで登った影汰は、周囲を観察した。この研究所に駆け付ける警備員がより少ない個所から奪取するのが、圧倒的に安全だからだ。

 しかし屋上には――先客がいた。


「どうして彼らを救ったんだい?」

「ッ?」

 ――なんの気配もなく現れたその謎の存在に、影汰は完全に不意を突かれた。


 声がする方へ直ぐに振り返った。そこにいたのは、真っ白なスーツに身を包んだヒーローだった。そして、影汰はそのヒーローに見覚えがあった。


「…シャイニング。」――そのヒーローの正体は、以前ニュースで見た、新鋭ヒーローそのものだった。

「僕のことを知ってくれているんだね。」


 シャイニングのヒーロースーツは、現代には珍しく、一切の広告が付いていない。その代わりに純白のヒーロースーツには、ところどころ赤い装飾が施されている。

 そして、胸の中心部にはトレードマークが付けられていた。

 誰が見ても一目でわかるそのトレードマークは、地図記号の灯台に近い模様だった。


 彼は広告主を持たないその性質から、大富豪が素性なのではないかなど、多種多様な憶測が飛び交っている。もちろんそれらの憶測のどれが真実かは、本人しか知らない。


「さて、もしかして僕のファンなのかも知れないけれど、残念なながら僕は君を捕らえなくちゃいけない。君はこの場所を破壊した悪者だからね。」


 瞬間、シャイニングはその場から消えた。

 次に彼の姿が確認できたのは、影汰の腹部へと深く拳がめり込んだ後だった。


 そのまま影汰は後方へと凄まじい速度で吹き飛んでいく。

 森の木々を幾本もなぎ倒したのち、ようやくその勢いは収まった。

 防御用に自分を囲んでいた闇を、影汰は解いた。あくまで闇は、障害物にぶつかった際の衝撃を軽減してくれただけであり、腹部には鈍痛が残っている。


 日夜馬渕の拳を受け止めていなければ、一撃で気を失っていただろう衝撃だった。

 影汰がようやく視線を上げた頃には、既にシャイニングが到達していた。


(高速移動系の根源か?それにしたって、馬渕さんよりも速かったぞ。)


 表情には出さないが、影汰は確実に動揺していた。シャイニングが用いた速度は初めて体験した域に達しており、目視で追うことは困難だった。


(だが今シャイニングが立っている場所は…僕の領域だ。)


 影汰は全身から霧散した闇を放出する。

 直ぐに闇は、シャイニングを領域に収めた。


 夜も深く、霧散した闇を黙視することは非常に困難である。

 その為、シャイニングはまるで気づくこともなく、影汰の領域内に収まった。


 無意識かつ無警戒に、自身の力によほどの自信があるのか、シャイニングは無造作に前へと踏み出した。

 そして、異変に気付く。


「へぇ…面白い根源だな。」――明らかに鈍化しているのにも関わらず、シャイニングは普段通りに話して見せた。


 他者に行使した時よりも、鈍化の効果が薄い。影汰はそれを感じ取った。

 それでも明確な隙であることは確かなので、攻勢に転じる。


 手から発射した闇の先端を硬質化させ、シャイニングへとぶつけた。

 必中の一撃であるはずのそれを、シャイニングは体を反らし、ミリ単位で躱した。

 その速度は明らかに馬渕よりも早く、鈍化の影響ないであろうと衰えていない。

 影汰が動揺を隠せずにいると、その隙を見抜いたシャイニングが即座に距離を詰めた。


「なるほど…自然操作系で、闇を操作するのか。それも特質持ち。戦いの幅が広そうで羨ましいな。でも奇遇だね、まさか系統が同じだとは。」


 シャイニングは影汰の腹部へと、右手を手を伸ばした。触れるか触れないかの寸前でその手は止まり、影汰は疑問気にシャイニングの方を見返す。


「これが僕の根源だ。」――瞬間、シャイニングの右手が光輝く。


 そのまま爆発するように光が広がると、影汰の腹部付近の服が燃焼を始める。即座に距離を取るためにバックステップを踏むも、シャイニングはピタリと付いてきた。


 強引に振り切るしかないと判断した影汰は、闇を一気に全方位へと解放した。闇は衝撃波を伴い、シャイニングを襲う。

 しかし、シャイニングはそれすらも高速移動で躱してしまった。


「自然操作系…「光」を操るのか!?」

 ――影汰は腹部に出来た火傷を右手で抑えた。

「ご名答。僕らはそっくりだ。」

 ――シャイニングは話ながらも、高速移動を実行。


 再度、即座に影汰の目前へと接近した。

 ようやく鈍化の効果が眼に見えて現れ始め、影汰の目でもシャイニングを目視できるようになり、接近してきたシャイニングへとカウンターで闇を放つ。

 だがそれすらも、シャイニングは右手で光を放ち相殺してみせた。


「ここまで抵抗されたのは、久しぶりだ。みんな僕の【栄光】の前では、ほとんど無抵抗で戦いが終わるのに。」

 ――なぜかシャイニングは、嬉しそうにしている。

「【栄光】――それがお前の根源の名前か?」

「あぁ、そうだよ。でも不思議だよね。どうして僕達「覚醒者」は、根源の名前を感じ取ることが出来るんだろう。根源については諸説あって、元々僕たちの中にある潜在能力の一部だって言う学者もいるんだってね。だからなのかな…自分たちの一部だから、こうして身近に感じるし、名前を感じ取ることも出来るのかもしれないね。」


 影汰との戦いを楽しんでいるような素振りや、どこか達観した評論家のような論調、そこから垣間見られる彼の思考回路が、彼そのものの不気味さを引き立てていた。


 そんな余計なことすら考えることが出来るほどに、影汰との戦いに余裕を持っているのかもしれない。

 恐らくシャイニングは、まだ全力の一部すらも発揮していない。影汰は瞬時にそれを感じ取り、相手が自分の格上であることを理解した。


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