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#だから僕は、ダークヒーローになった  作者: 木兎太郎
【第一部 #だから僕は】
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#042――救出作戦3


 広告主をそのヒーロースーツに携え、正門を守っている。

 右側に立つヒーローは、赤いスーツの非常に目立つ見た目だ。左側のヒーローは、青いスーツを着ており、どちらかというとクールな印象がある。


 まるで磁石のN極とS極のようにもみえるが、二人は真剣にあの格好をしているのだ。

 あれを脱げば、出資している広告主との契約違反になってしまうからだ。

 そして影汰は、そんなヒーローたちを睥睨した。

 気に食わなかったのだ。現実のヒーローたちは、困っている人を守るのではなく、お金を稼いでいるだけなのだと。


「それじゃ、計画通り行きましょう。僕が正面突破します。」


 影汰はそう宣言すると、研究所の方へと踏み出した。

 その歩みには一切の迷いはなく、どんどん進んでいく。

 馬渕は、そんな影汰の背中を暫く見送った。そして、自分の役割を遵守する。


 影汰の正面突破は陽動も兼ねており、馬渕はその隙に内部へと潜入。そして、治癒師の少女を奪還する――というのが今回の作戦内容だった。

 作戦と呼べるほど複雑ではなく、余りに強引な方法を用いる予定だった。それが影汰が阿久津へとした提案であり、この正面突破という行動には、ある決意が込めらえている。

 一度失った彼女に、報いるための。



 門番に任命された二人のヒーローは、向こうから歩いてくる一人の男を観察した。

 体は華奢で、どこか子供じみている。背丈などは十分に成人に達してはいるが、どこか子供のような体つきなのだ。

 だからこそ、二人は油断してしまっていた。

 少年を興味深そうに観察し、赤いヒーローがようやく口を開く。


「おい少年っ、それいッ!!!???」


 瞬間、少年の右手から闇が伸び、男の胸元に衝突した。

 赤いヒーローはそのまま後方へと吹き飛び、正門を突き破った。

 研究所への道のりが、即座に開かれてしまった。

 青いヒーローは少年の方を見て、狼狽する。


「自然操作系…まずいッ。」

 ――ヒーローは即座に系統を見抜き、距離をとろうとした。


 そして、自信の体に変化が起きていることにようやく気付いた。

 早く動くことが出来ず、体の動きだしすら遅いのだ。


「…なん…だ…こ…れ?」


 ヒーローが疑問気な声を上げた頃には、少年は彼の目前にまで到達していた。


「僕の能力は晦冥――あなたの推測通り、自然操作系統の根源です。」


 少年は男の胸元に、ゆっくりと右手を当てた。

 彼の体もゆっくりと動き始め、少年の右手を握りしめようとする。


 もしかすると、根源を使用しようとしているのかもしれない。最初から油断せずに立ち回れば、少なくとも何らかの抵抗をすることは出来ただろう。

 ただ、それはもう遅い。


「さよなら。」

 ――瞬間、影汰の手から闇の波動が放たれ、ヒーローを吹き飛ばした。


 青いヒーローは、正門から更に後方まで吹き飛び、研究所の正面口をぶち破った。


 ――ウーッウーッウーッ!!!


 そのおかげで、研究所からは警報が鳴り響いている。


 正門付近には、大量の警備員が集まった。敵の位置が判明しているのであれば、当然の対応だろう。ただし、一般の警備員では、覚醒者に対応することは出来ない。


「これで治癒師の奪還も捗るよね。」

 ――影汰は周囲に集まった警備員を眺めた。

「手を挙げろッ!!!抵抗すれば即座に撃つッ!!!」


 警備員たちは皆一様に影汰に銃を向けている。それも銃のどれもがハンドガンのような弱弱しいものではなく、マシンガンばかりだ。


「…日本とは思えない光景だ。」


 警告されてなお、影汰は大量にいる警備員たち方へと踏み出した。

「発砲ッ!!!」――一人が指示を出した瞬間、全員が影汰に向けて発砲した。


 ズガガガガガッ!!!という、耳が痛くなるような銃声があたりを包み込む。

 撃ちなれていないのか、地面に当たった弾丸が、砂煙を巻き上げた。


「発砲中止!!!」――一人の指示が飛び、銃声が収まった。


 巻きあがった砂煙が徐々に落ち着くと、警備員達はある光景に驚愕した。

 黒い球体が先ほどまで影汰がいた地点を包み、その周りにははじかれた弾丸が大量に落ちている。警備員たちは皆一様に、唾をのんだ。


「――覚醒者だ。」


 誰かがそう呟き、警備員たちは全員静かになってしまった。

 そして、闇が地面へと溶けるように落ちていき、中から影汰が出てきた。

 抵抗の意思を絶やさなかった一人が、影汰の方へと銃を向ける。

 即座に引き金を引くも、カチッという音が鳴っただけに終わった。先ほどの射撃で弾倉を打ち尽くしていたようだ。警備員はそのまま、苦笑いを浮かべた。


「悪いけど、先へ進むよ。救いたい人がいるんだ。」


 その瞬間、彼から闇が広がった。それはまるで衝撃波のように周囲へと到達し、警備員たちが全員後方へと吹き飛んだ。

 そして、全員が研究所の壁にぶつかり、意識を失ってしまった。


 その後悠々と、影汰は研究所の中へと突入した。

 影汰の道を阻もうと幾人もの警備員が影汰の前に立ちふさがったが、それは意味をなさなかった。


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