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#だから僕は、ダークヒーローになった  作者: 木兎太郎
【第一部 #だから僕は】
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#025――組織4


「阿久津さんたちと繋がりのあるギルドは多いんですか?」

「少なくはないわ。特にこの東京の地下はね。」

「まんまとテリトリーに紛れ込んでしまった訳ですね。」

「私たちにとって、幸運なことにね。」


 彼女は朗らかに少しだけ笑うと、また茶わん蒸しを一口食べた。その度に幸せそうな顔をしている。

 恐らく誰が何度見ようとも、彼女が革命家であることなど、気づきはしないだろう。

 そんな彼女のコロコロと変わる表情を眺めていると、唐突に目が合った。

 いつの間にか彼女は、真剣な表情に戻っている。


豪財会ゴウザイカイ――この名前を聞いたことがあるかしら?」

「…?いや、ないですね。」 


 一瞬だけマスターの表情が暗いものになったが、それは何らかの後ろめたさからなどではなく、恐らくは苦手意識からだろう。 

 つまり、「豪財会」という名前には、それほどの畏怖があるのだ。


「今の世界を仕切っている組織よ。例えば日本でいう総理大臣、アメリカでいう大統領、国の代表の呼び名は何でもいいけれど、今の彼らはお飾りなのよ。彼らの裏で暗躍し、世界を動かしている者たち。それが【豪財会】――そして、私たちの敵の名でもある。」


 彼女は淡々と説明しているが、そうした情報は一切民衆に流出していない。

 少なくとも影汰は、今の今まで日本を動かしているのは総理大臣だと思っていたし、影汰以外の一般人もそれは例外ではないはずだ。


「…つまり、彼らが今の世界のルールを作った。」――影汰は、核心を突いた。

「まさしくその通りね。今はもうみんな当たり前だと考えつつあるけれど、人身売買の合法化なんて、どう考えても頭が可笑しいでしょう?少なくともまともが人間が提案する法案じゃないわ。」

 ――阿久津の言葉は、震えるほどの怒りに満ち溢れていた。

「でもそのおかげで、身寄りのない子供たちの多くが助かりました。それに経済もかなり持ち直して、今ではほとんどの人が普通に暮らしていますよ。」


 自身も被害者である以上、認めるのは癪だが、効果があったのは事実である。その為、最悪であるはずの法案を、全否定する気もなかった。


「当時の日本に、経済を回復させるほどの財力はなかった。日本は小島の割には人口が多いし、高齢者も多い。そんな中で簡単に経済が回復すると思う?」

「…わかりません。」――それが影汰に答えられる限界だった。


 影汰は、一般教養すら中途半端にしか教育を受けていない子供だ。

 そんな詳しい情報まではもちろん知らない。


「つまり、現在の日本を成り立たせるために、ある程度の資本が必要だったの。それを生み出す為に、豪財会は人身売買を合法化させた。」

「…よく、わかりません。少なくとも僕の頭では、その二つを繋げられません。」

「国内にない資金を生み出すには、国外から得るしかない。――当時もっとも早く経済を回復させたのは、アメリカ合衆国だった。ただ彼らはそこで、とある問題に直面した。」


 現在アメリカは、経済を当時のおよそ7割まで回復させ、他国のサポートまで行い始めている。流石は大国である――というだけでは、どうも話は終わらないらしい。


「アメリカが直面した問題は、人員不足よ。だから日本は、アメリカに積極的に子供を売り払い、それを資本にした。」

「…?そんなの、聞いたことがないです。」

「それは仕方のないことね。あなたが生まれる前の話だから。もしもあなたがもう少し前に生まれていたら、あなたもアメリカに売り払われていたかもしれないけど。」


 次々に出てくる衝撃的な事実に、影汰は絶句した。


「でもその選択を、日本は後悔することになった。――【根源】のせいでね。」

「…?」――もはや影汰には、阿久津を見返すことしかできない。

「当時もっとも根源に関する実験を進めていた国は、どこだったと思う?」

「解りません。」――影汰は正直に答えた。


 余談だが、根源に関する情報は、世界共通のトップシークレットである。全国家が情報を秘匿しているのだ。

 その理由は、根源を最も早く解明した国が、次に世界を牽引することになると考えているからだった。次のアメリカが決まると表現しても、過言ではない。


「――日本よ。」――彼女はそのまま淡々と、事実を並べる。


 そのどれもが影汰の理解を超えるものであり、話についていくのがやっとだった。

 影汰の視線が自分に向かっていることを確認すると、阿久津は話を再開した。


「根源にはとある性質があって――子供の方が覚醒しやすいの。特に十二歳から十五歳の子供が、最も根源に目覚めやすいと言われているわ。でもね、当時の日本がアメリカに売り払っていたのは、そこまで労働力にならない子供だった。本当に幼い子供たちは日本の未来の為に残し、ある程度の年齢まで達し、ある程度の労働力になる子供たちを、日本はアメリカに引き渡したの。」

「――つまり、ある意味適齢期の子供を売り払ってしまっていた。」

「その通りよ。その結果、当時もっとも根源においては先進国だった日本は、世界各国と同じラインにつくことになった。」


 資金がなければ、研究を進めることは出来ない。それにプラスアルファ、そこまで頑丈ではない子供を実験対象にする発想がなかったのだろう。だからそもそも国外へ売り払っていた子供が適齢期であると、気づくことすら遅れてしまったのだ。


「理解できてきた気がします。」


 ここまでの情報を陳列され、影汰の脳内は疲労をため込み始めていた。

 結果、猛烈に何らかの食料を欲し、目前に置かれたワイングラスを見る。

 もしもこの茶わん蒸しが、何らかの飲み物であれば、影汰は話についていけなかっただろう。瞬間的にそれを手に取り、口にかきこんでしまった。


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