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#だから僕は、ダークヒーローになった  作者: 木兎太郎
【第一部 #だから僕は】
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#021――便利屋4


 もちろん影汰と戦闘中のホースは、極少数の中の、慢心を選ばなかった側だろう。

 特別である自分をさらに磨け上げ、その特別性をより鋭利にしている。

 だからこそ厄介極まりない訳だが。


「なるほど、この距離までは影響下にないのか。闇を操ることが出来るみたいだが、距離制限がある。…ま、そんなところか。」


 ホースは、刻一刻と影汰の根源に関する分析を進めていた。

 とはいえ、それは影汰も同じだ。

 どうもホースの根源は、身体能力を飛躍的に強化することしかできないようだった。何か不思議な力を使い、遠距離攻撃をしてくる様子は、今のところない。


「よし、再開するぞ。」


 ホースは民家の屋根からいくつかの瓦をもぎ取り、それを影汰へと投擲した。

 遠距離攻撃がないというのは、影汰の浅はかな考えだったらしい。

 更にそれらの瓦は、凄まじい力で投擲されているらしく、その速度は弾丸並みだと言っても過言ではない。

 一瞬速度に面食らったが、それでも闇を固め、自分の目前に展開し、次々に飛んでくる瓦を防いでみせた。


「なるほど、本当に万能型の根源だな。」


 効果がないことが解ると、ホースは瓦を投げるのを止めた。

 それを見た影汰も、闇の防壁を消失させる。


(残念だけど、移動速度は向こうが上だ。そうなるとこちらから攻めるのは悪手、せめて向こうから攻めてきてくれたら、まだやりようもあるけど…。)


 ホースは未だに屋上にいて、こちらに接近してくる様子がない。

 おそらく地面へと広げている闇が原因だろう。

 相手も最大限警戒しているのだ。

 しかし、攻め手がない以上、ホースを影汰側に引き込む必要がある。


 以上の考えの元、影汰は自身が広げた闇を一度消失させた。

 するとそれを狙っていたのか、その瞬間ホースは影汰の元へと跳んだ。およそ十メートル以上あった距離が、一瞬で消失。


 そこまで急接近したホースは、影汰の胸ぐらをつかみ、そのまま地面へと背負い投げをしようとした。

 丁度空中まで影汰の体が持ち上がった瞬間、影汰は自ら投げられる方向へと回転し、足から着地することに成功。

 それでもよほどの力だったのか、足に凄まじい負荷がかかった。先についた右足が、地面に5センチほどめり込み、さらには周囲の土をめくりあげる。

 

 それでも影汰は止まることなく、そこから一気に姿勢を落とし、めり込んだ右足を支点に回転蹴りを放った。

 蹴りは見事にホースの足へと直撃したが、直撃した瞬間鈍痛が走ったのは、影汰の足の方だった。まるで根の張った大樹を蹴ったかのようですらある。


(くそ、流石に肉弾戦は不利か。)――それでも影汰は、何故か笑顔だ。


 そんな姿勢を引くした影汰へと、ホースは拳を突き出す。

 ただその動きは何故か――異常なほどに遅かった。

 影汰は非常にゆっくりと突き出されるその拳を、首を傾け優雅に躱した。


「なるほど、これが狙いだったのか。」

 ――いつの間にかホースは、下を見ている。


 ホースの警戒をすり抜け、影汰はとある作戦を実行していたのだ。

 彼の左足へと蹴りを直撃させた瞬間には、影汰の狙いは実行済みだった。

 被弾した足には、先ほどまではなかったはずの闇が付着している。

 ホースはこれが何らかの効果を及ぼし、自分の動きを鈍化させていることを理解した。 


「チェックメイトです。僕の闇には、付着した者を鈍化させる付与効果があります。おそらくホースさんの根源は、身体能力強化でしょう。でもそれも、動きが遅くなれば持ち味を失います。今すぐ降参することをお勧めしますよ。」

「なるほど、詰みか。」――ホースは俯き、少しだけ笑っている。


 そんな不気味な笑いを浮かべた後、もう一度口を開いた。


「俺が――既に全力を出していた場合の話だが。」


 そして、真横まで迫っていたホースの腕が、瞬間的に加速した。彼の今までの速度よりは流石に遅かったが、それでも十分に速い。あまりに突然の出来事だったため、反応が完全に遅れてしまっていた。


 ホースの握られていた拳は突然開き、影汰の耳を掴んだ。

 耳を掴まれた瞬間、影汰の脳裏に浮かんだのは、掴まれた耳が千切れる瞬間だった。


 その一瞬の思考並びに硬直の瞬間を、ホースは見逃さなかった。

 硬直した影汰へと膝蹴りを放ち、見事に顎に命中させた。

 的確に急所を狙った攻撃であり、影汰は脳震盪を起こしてしまった。

 視界がゆがみ、膝から崩れ落ちる。それでも影汰は、完全に倒れはしなかった。


 そんな状態の影汰に、ホースはさらに追撃を仕掛ける。

 足を持ち上げ、今度は鳩尾へと蹴りを一つ。失われかけていた意識が、一瞬で覚醒する。


「ガハッ!!??」


 しばらく咳を繰り返すも、ホースから、それ以上の追撃はなかった。


「さて、ギブアップか?」――逆転した立場から、ホースは悠々と発言する。

「…ギブアップしたら…どうなりますか?それによります。」


 呼吸すら困難な状況下で、影汰は何とか言葉を紡いだ。


「う~ん、命の危険はあるかもしれないな。」

 ――ホースは、自分の顎を撫でている。

「なら、ギブアップしません。」――そして影汰は、抵抗することを選んだ。

「そうか、それならまた別ルートだ。」


 影汰を見下ろすホースは、彼の側頭部へと容赦なく蹴りを放った。

 その一撃には、影汰の意識を奪うのに十分な力が込められていた。

 今度は一瞬にして視界が暗くなり、影汰は意識を手放してしまった。



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